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目が覚めると懐かしい天井がそこにあった。
ああ、帰ってきたんだった、真選組に。

昨日、銀さんが私の手を振り払ったとき、ほんとは私が居て迷惑だったんじゃないかとか一瞬そんな事を考えてしまったけど、あれは銀さんなりの不器用な優しさだったんだってすぐに解った。

またお礼しとかないとな、それからもっと素直に生きていこう。

そして今は一体何時なのか、時計を確認する為に起き上がろうとしたとき、布団が不自然にこんもりと盛り上がってることに気付く。隣に誰かいる……?
夕べ自分で敷いて寝た覚えも無ければ、人と寝た覚えもない。けど、こんなことするのって真選組には一人しかいない。

そっと布団を捲ると、やっぱりなと安堵する。


「総悟」

「おう、バカ犬」


寝ぼけ眼の総悟は大きな欠伸をした。
私も大きな欠伸をする。なんで欠伸って移るんだろう、不思議。


「……てか、なんで一緒に寝てるの」

「心配しなくてもお前みたいな色気のねえ女に手なんて出さねえぜィ」

「いや、そういう意味で聞いたんじゃなくて」


総悟はじっと私の目を見た。
相変わらず顔がいい。取り柄と言えば顔だけの変態ゴミクズ野郎って新八くんが言ってたな。
その顔がいい総悟に至近距離で見つめられてドキドキしないわけがない。

何か言ってよ、どうすればいいのかわかんない。
沈黙に耐えられず目を逸らしかけたとき、


「おかえり」


え、今おかえりって言いました!?
いつも以上の柔らかい声と表情に驚きつつも、心の奥からじわじわと温かいものが溢れてくる。


「ただいま、へへ」


嬉しくてニヤニヤしていると、何笑ってんでィと鼻をつままれ、ふっと目をまた細める総悟に少しドキッとする。
ほんと顔だけはいいな顔だけは!!


「いけね、そういや渡したいものがあるんだった」

「えっ」

「目ェ閉じろ」


私は素直に目を閉じた。
総悟におかえりって言ってもらったこと、何だかわからないけどプレゼント?を用意して待っててくれていたこと、すごく嬉しかったのだ。

ガサゴソと袋から何かを出す音を聞きながら心を踊らせて待っていると、総悟が首に触れ不覚にもピクっと肩が跳ねた。


「少し我慢しろィ」


耳元で吐息混じりに囁かれ、くすぐったくてゾクゾクする。なんだこれ、えろい。
なるべく反応しないようにぎゅっと体を強ばらせて耐えていると、目を開けてもいいと言われたので固く閉じていた目をゆっくりと開けた。


「おう、似合ってるじゃねーか」

「え、なに?」


下を向いても首元は見えないので触れてみる。
ネックレスでは、ない。何か革製の……


「こ、これって……!」

「外せるもんなら外してみなァ」


悪い笑みを浮かべる総悟、嫌な予感しかしない。
その予感は当たっていてなかなか外すことが出来ず、どうにかこうにかガチャガチャしてみるが首が痛くなるだけだった。


「ちょっと!外してよこれ!」

「やなこった」

「こんなの犬みたいじゃん!やだ!!」


手鏡で確認してみると、本当に中型犬が着けるようなしっかりとした赤い首輪だった。しかも、南京錠付きの。着物には不釣り合いだ。


「またどっかでふらふらされても困るしな」

「こんなの着けて歩けるわけないでしょ!馬鹿なの!?」

「散歩は連れてってやっから心配しなくていいぜィ」

「そういう問題じゃない!!!」


南京錠の鍵をこれ見よがしに人差し指に引っ掛けては目の前でクルクルと回す。奪い取ろうとしてもひょいと避けられてしまうのであった。
ぐぬぬ。


「外したかったら寝込みを襲うなり何なりしてみなァ。無理だと思うがな」


じゃあな、と部屋をあとにする総悟の後ろ姿を私は睨みつけた。

新八くん、君の言う通りあいつは取り柄と言えば顔だけの変態ゴミクズ野郎だよ。



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