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「お世話になりました!」


病院でお世話になった先生や看護師さんや購買のおばちゃんに挨拶してまわり、病院を出ると銀さんが既に迎えに来てくれていて、さりげなく私の荷物を持ってくれて私もそれに甘える。

土方さん達、結局来なかったなあ。
本気で私のこと邪魔だったのかも、もう既に若くて可愛い女中が入ったとか有り得るかも。
……ムカついてきた!今夜は銀さんにやけ酒に付き合ってもらお。


「屯所寄るか?」


私の考えてることが見透かされたのかと思った。黙って首を振ると銀さんは私の頭をポンポンと優しく叩いた。
荷物は入院したときに誰かが持ってきてくれていたみたいで、数日分の下着や必要最低限なものは揃っている。足りない物はまた買えばいい。もう誰かが迎えに来ても遅いんだから!

暫くして万事屋に着き、戸を開けると新八くんと神楽ちゃんと定春くんが。


「退院おめでとうございます!」

「退院おめでとうアル!」

「ワンっ!」


と、笑顔で出迎えてくれて嬉しさに頬が緩む。
今日はお祝いネ!と私は神楽ちゃんに手を引かれ中に入ると、テーブルにご馳走が。


「これ私が作ったアルヨ!すごいデショ!」


チキンライスの上に少し破れた卵が乗っていて、ケチャップで私の名前が平仮名で書かれていた。他のには”天パ”と”メガネ”と”かぐら”と崩れた文字で書かれてある。


「なんでオメーらだけ名前なんだよ」

「ぎんちゃんって長いし書きにくかったネ」

「まあまあ、神楽ちゃんすごい頑張って作ってたんでそこは多めに見ましょうよ銀さん」

「しゃあねえなあ」


やっぱり万事屋はあたたかい。なんか目頭が熱くなってきたよ。思わず私は神楽ちゃんをぎゅっと抱きしめて、彼女の真っ白でスベスベな頬に自分の頬をスリスリと擦り付ける。これが十代のお肌か!気持ちいい。


「神楽ちゃんんんん」

「な、何アルか!」

「ありがとう!ありがとう!!」

「わかった!わかったアルから!離すネ!」


心惜しくも神楽ちゃんから離れるとジトーっとした目で見られ、美少女にこういう目で見られるのも悪くないな、と私の中で何かが目覚めたような気がした。


「おいおい、俺にもやってくれよ。それ」

「これは美少女限定」

「私は千年に一度の美少女アルからなあ」


なんて談笑しながら食べたオムライスには、卵の殻が入ってたりで若干ジャリジャリしていたけど、物凄く美味しかった。愛とは最強の調味料である。


「来て早々アレなんだけど、俺らこれから仕事なんだわ」

「そうなんだ、夕飯はいる?」

「おう、夕飯どきには帰ってくらぁ」


そんなまるで新婚夫婦みたいな会話をして、玄関でいってらっしゃいって見送って、部屋には一人と一匹。
定春くんのもふもふを独り占めだ!と丸まって寝ている定春くんのお腹あたりにお邪魔する。


「何コレ、いやだコレ、何か……ぬくいよ」


きっとどんな高級ソファよりもふかふかで気持ちいい。私は睡魔に勝てずそのままいつの間にか眠ってしまっていた。


『ピンポーン』


暫く眠っていた私はインターホンの音で目覚める。なんか夢を見ていた気がするが思い出せないし頭がぼーっとする。

チャイムが何度も何度も鳴り続けてうるさいので、寝惚けた頭で目を擦りながらも玄関に向かい扉を開けた。


「はぁい」

「あのー、銀時くん居ますか」

「んあー……今仕事行ってますねー」

「そうですか」


また日を改めて来ます、とその人の綺麗な長い黒髪が翻る。ぼーっとそれに見とれていた。

……いやいやいや見とれてる場合じゃない!名前くらい聞いておかないと!


「あのっ!ちょっと待ってくださいお姉さん!」

「お姉さんじゃない、桂だ!!!!」


そこでやっとちゃんと目が覚めた。屯所内に貼られていた指名手配犯のポスターで見覚えのある顔と名前だった。


「な、んでこんなところに……」


テロリストって書いてあった気がする。もしかして私また人質にされて真選組に危害を与えるつもりじゃ?
すると桂小太郎は懐から何かを取り出そうとする。私はそこから一瞬足りとも目を離さずに警戒態勢に。


「これ、銀時に返しておいて貰えるか」

「……え?」

「なかなか良かったと伝えておいてくれ」

「え、あの」


涼し気な顔して私にそれを押し付けて帰っていく桂小太郎を、呆然と見ていることしか出来なかった。
ふと渡されたものを確認すると"未亡人図鑑3"と書いたエロDVDらしきもので、暫く開いた口が塞がらなかった。





「これ、桂さんから。良かったって言ってたよ」


夕飯のときにしれっと銀さんの前にDVDを置くと、「これ俺の趣味じゃないから!違うから!」って必死に弁解しようとしてたけど割りとどうでも良い。

そんなことより桂小太郎、こんな所で会うなんて。しかも未亡人が好きだったなんて……
土方さんたちに桂小太郎のこと連絡した方がいいのかな。いや、いいか。
銀さんとエロDVD貸し借りするくらいの仲だし、
そんなに悪い人には見えなかったと私は黙っておくことにした。


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