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病室から少しだけ見える提灯の明かり。来年は皆で行けるかな、なんて考えてみたり。

結局朝から誰も来ていなくて、たまらなく孤独を感じている。銀さんも来るって言ってたくせにまだ来てないし、土方さんも来ない。

そんな事を考えていると、突然部屋中がソースの臭いに包まれる。久しく味の濃いものを食べていないので思わずお腹からぐぅーと情けない音が出たが、それと同時にカーテンが開きその音で打ち消されたのでセーフ。セーフだよね?


「色々買ってきてやったぞー」


そこには今日ひたすら待ち焦がれていた人が立っていて、さっきまでの憂鬱な気分なんて忘れて思わず笑顔になる。



テーブルの上にはたこ焼きや焼きそばやイカ焼き、じゃがバター、チョコバナナ、いちご飴……


「とりあえずこのチョコバナナをいやらしく食べてみてくれるぅ?」

「……ケツにぶち込んでやろうか?」

「やめてェ!別のチョコバナナになっちゃうからァ!!!」

「おえー食欲失せたわー」


なんて言いつつもたこ焼きを頬張ると、思ってたより熱々でハフハフしながら食べた。タコは小さいけど二つ入っててちょっとお得な気分。


「そんな急いで食わなくても逃げねーっつの」

「はふいふひひ、はふっ」

「食いながら喋んな、ほらソースついてる」


指で口元につけたソースを拭き取ってくれて、その指を舐めとる銀さん。ナチュラルにそういう事するんじゃないよ。ツッコミそびれたわ!

段々と恥ずかしくなってきて気を紛らわせようと焼きそばに手を伸ばそうとした時、話さなきゃいけないことを思い出す。


「あ、銀さん」

「んー?」

「えっと、私今日色々検査したんだけど……」

「お、どうだった?」

「…………」

「な、なんだよその間は」

「……大丈夫でした!明日退院!」

「オィイイイ!!まじそういう心臓に悪い事すんなや!」


焦る銀さんが面白くてちょっと意地悪しちゃったけど、退院おめでとうって頭を撫でてくれた。
銀さんに頭を撫でられるの、すきだな。


「明日朝一で迎えに来るから準備しとけよ」

「全裸待機してるから」

「え、まじ?」

「冗談に決まってるでしょ」


なんて馬鹿なやり取りをしてたら急な爆発音にビクッとする。窓の外はたくさんの花が咲いていて、思わず息を飲むほど綺麗だった。病室からでも見れたなんて。


「……今まで打ち上げ花火の音を聞くと何だか雷みたいで不安な気持ちになってたんだ。けど、今日は大丈夫みたい」


そう言うと銀さんは白いふわふわの頭を掻きむしりながら、「そうか」と短く返事をした。

大部屋なので他の患者さん達も窓の方に集まってきて、皆で談笑しながら花火を見た。




***




「銀さん、今日はありがとね」

「何だよ今更」

「べつにー」

「また明日な」


花火も終わり銀さんも帰り、静寂に包まれた病室。もうここで寝るのも最後なんだなとしみじみと考えて眠りについた。


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