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病院からの帰り道、さほど遠くはないはずなのに車内の灰皿は、いつもの倍と言っても過言ではないほどに吸殻が溜まっている。

あいつがビルから飛び降りた時、なんでもっと自分の命を大事にしないんだと酷く腹が立った。
誘拐なんぞされる前に俺らが気づいてやれれば、とか。
そもそも真選組に関わっていなけらばあいつは狙われることは無かっただとか、そういう思考のループから抜け出せずにいた。

もし悪化したら、もし頭に後遺症が残ってしまったら俺らのせいだ。
近藤さんも総悟も山崎も他の隊士だって責任を感じている。もうあんな事がないようにと、護れるようにと、みんな稽古に励んでいる。

そしたらあいつは病人の癖に酒を飲んで、万事屋の野郎と楽しそうに祭りだなんだってはしゃいでいた。
その姿を見て頭に血が上ってあんな事を言ってしまったのだ。誰かアホだと笑ってくれ。


「アホですねィ」

「……なんとでも言ってくれ」

「これはもう切腹しか無いですぜィ。早く切腹しろよー死ねよ土方ー」


今総悟にバズーカ向けられても避けられる自信がねえ。
さっき吸い終わったばかりの筈なのにまたタバコに火をつける。吸っていないと落ち着かない。


「……とりあえず明日の祭りの巡回、厳重にしておけ。またあいつが事件に巻き込まれても後味悪い」

「へいへい、もう素直に謝っちまえばいいのに」

「うるせえ」


それからは始末書や報告書の整理に追われ、あいつのことなんか考える暇もなかった。

あっという間に祭りの巡回の日。
巡回といいつつもただブラブラと歩いてるだけで、たまにお好み焼きやたこ焼きでマヨネーズを摂取する。

そういえば、結局謝りに行けていない。
他に行くとこねえだろうし、荷物とか部屋に置いたままだし、どうせ帰ってくるだろう。
それに祭りに来ているかもしれないし、また会った時にちゃんと謝ればいい。


「あんれ、土方くんじゃねーの」

「……万事屋」


屋台で買ったと思われる焼きそばやイカ焼きなどを両手いっぱいに持ってる万事屋。くっそ、どいつもこいつも浮かれやがって。あいつも一緒かと思い、周辺を見渡すがいない。


「名前なら来てねーよ」

「べっ、別に何も言ってねえだろーが!!」

「つーか、その辺真選組の隊士だらけじゃねーか。
お前らあいつのこと姫かなんかだと思ってんの?ただの一般市民だぞ。甘やかしすぎなんじゃね」

「お前に言われたかねェわ!!」


まあ確かに俺らも甘やかしていたかもしれない。あいつと居ると何故か気が緩む。あのふにゃふにゃした顔がそうさせる。


「まあ精々見回り頑張って、お巡りさん」


万事屋はそう言って去っていった。
ソースのにおいをプンプンさせて、あいつの居る病室に向かうんだろうか。

……退院したら、ちゃんと謝ろう。
この前は言い過ぎた、真選組に戻ってこいって今度何があっても絶対に護るから、だから戻ってこい。


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