40


すっかり日も暮れ巡回も終わり、屯所に帰ってくると庭で火遊びしているバカ共が居た。
火薬臭ぇから敵襲にでも見舞われてるのかと思っちまったぜぃ。


「あっ、総悟おかえりなさい!花火するー?」


俺の姿を見つけると駆け寄って来る。犬かオメーは。


「しねーよ。臭くならァ」

「えー、しないの」


しゅん、と表情が暗くなる。
テメーわざとやってんだろその顔、このクソ女。すればいいんだろ、すれば。


「花火貸せィ、でっけえ奴」


そう言うとパッと表情が花火みてえに明るくなる。なんでこの俺がこんなんに翻弄されてるんでィ。
腹いせに名前が持ってきた花火に火をつけ、その辺にある岩に土方死ねと落書きしておいた。


「ギャハハ!何このウンコみたいな花火!銀ちゃんの流し忘れたウンコみたいアル!」

「神楽ちゃん、これはヘビ花火って言うんだよ。ウンコじゃなくてヘビだよ。まあウンコ花火とも呼ばれているけど」


チャイナのでけー声が聞こえてきて、万事屋も来ている事に気が付く。


「万事屋のみんなが居ると更に賑やかだねー」

「あのバカチャイナがうるせーんでィ」

「でも神楽ちゃんがいると、総悟は結構子どもっぽくなるよね」

「……ガキに合わせてやってんでィ」

「ふーん、別に子どもっぽくてもいいのに。風邪引いたときの総悟、甘えてきて可愛かったなあ」

「真っ赤になってたくせによく言うぜ」

「あ、あれは違うから!熱があったんだし!」

「ふーん」


また顔を赤くして、チャイナ達の元へ走って行った。逃げたな。
しゅんとしたり、笑ったり、照れたり、忙しい奴。

一人になった俺はまた花火に火をつけ、アリの巣にぶち込んで遊ぶ。


「おーきたくん」

「……旦那、いいんですかィ?あっちで名前と花火しなくて」

「いーんだよ、今日はこうやって遠くから見てっから」


そう言って、はしゃぐ名前を見る目は、見た事も無いような優しい顔をしていた。


「ふーん。そうやって見てるだけだと、他の野郎に取られちまいやすぜィ。もう既に他の野郎のものかも知れやせんがねェ」

「え、まじ?」

「男がいるって隊士達の間で噂になってやすぜ。まあ、男避けの嘘らしいですけどね」

「なんだよ、びっくりさせんなよ」


俺達は線香花火に火をつけ、パチパチと儚げに燃えるそのザマを見つめる。


「……旦那ァ、何で俺達ァあんな色気の無ェパンツ履いた女に惚れてんでしょう。」

「えっ、見たの?」

「ばっちり」


ポトッ。旦那の方の線香花火の玉が落ちた。
動揺しすぎ、面白ェ。


「はい、旦那の負け」

「勝負してねーよ!てかどんなパンツ履いてた!?何色!?」


うるさい旦那は無視して、ふと名前を見ると土方さんと楽しそうに線香花火していた。
さっきまでチャイナ達とはしゃいでたのにチョロチョロと色んなやつに愛想振りまきやがって。

ムカつくから大量のねずみ花火に火をつけて投げてやったらビビってやんの、ざまーみやがれ。



[*prev] [next#]
top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -