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廊下を歩いていると、何やら沖田隊長の部屋の前で隊士達が人だかりを作っていた。
気になって見に行くと、皆して唇の前で人差し指を立てて、声を出してはいけない状況だということを察する。
どうやら盗み聞きをしているようで、同じように耳をすませると中から名前さんの声が聞こえてくる。
「もっと……強くしてぇ」
「こうかィ?」
「いっ!痛ぁ!でも気持ちいいっ……!」
「ここは?」
「ああーっ、いい!そこいい!」
「じゃあここはどうでィ……っ」
「そこ……っ!もっとぉ!」
な、なにやってんのォォ!?
戸の向こうから何やら如何わしいやり取りがが聞こえてくる。
まるでそういう行為をしているかの様な、妄想を掻き立てられる名前さんの艶っぽい声。
全神経を耳に集中させ、ゴクリと生唾を飲む。
「そろそろ止めるかィ?」
「やだっ……やめないで!」
一体中で何が行われているのか、ここに居る殆どの隊士が不健全な事を考えているだろう。
しかし後からやってきた隊士達にぐいぐいと押され騒がしくなり始める。
「ちょっ!押すなって!」
「聞こえねーんだよ、もっと詰めろ!」
「おい、バレるだろっ!」
オイィ!バレたら隊長に何されるか……
後が怖すぎて、絶対バレるわけにはいかないと押し返しすがそんな抵抗も敵わず、戸が隊士と共に崩れていった。
戸の向こうには俺達が勝手に想像していた光景ではなく、名前さんは着物の帯を外しうつ伏せになっていて、沖田隊長は刀の柄で名前さんの腰をグリグリと押していた。
「うわ!恥ずかしい所見られちゃった……最近腰が痛くって!もう歳だねえ」
アハハと呑気に笑う名前さんと、ニヤリと悪い笑みを浮かべる沖田隊長。
きっと隊長はこうなる事を分かっていてわざとしていたんじゃないだろうか。
じゃないとあの隊長が素直に名前さんの腰をマッサージするわけが無い。こうやって色んな隊士に盗み聞きされる事を想定していて、良からぬ妄想に陥らせ楽しんでいたのだろう。
ほんとにこの人は……
でも沖田隊長と名前さんがまだそういう関係でなくて、正直ホッとした山崎退であった。
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