25


仕事を終え、私の夜のおたのしみ。
縁側での晩酌だ。


「今日はこの瓶ビールを豪快にラッパ飲みしてやるぜ、フハハハハ!」


なんて独り言を言いながら、栓抜きで瓶ビールの蓋を開けた。
おつまみは枝豆。寝る前だからヘルシーに。


「なに一人で喋ってんだ」

「あ、土方さん」


土方さんは隣に座って煙草に火をつけた。
ヤニ臭いのも慣れてきて、咳き込まなくなった。


「お前、嫁入り前にこんなむさくるしい所で働いてていいのか」


夜の空に、土方さんの吐いた煙草の白い煙が広がった。


「残念ながらまだお嫁に行く予定はありませんよ」

「まだ先なのか。野郎に囲まれて仕事してて、相手の男は何も言わねーのか?」

「相手の男?」

「その……男がいるんだろ」

「あ、食堂での話聞こえてたんですね」

「ああ」

「あれね、嘘なんです。毎日囲まれて少し困ってたんで、彼氏いるって言っときゃみんな私に興味なくなるかなあって」

「はあ……」


土方さんはため息とともに煙を吐き出した。
性格の悪い女だと思われただろうか。


「実は、ここに来る前は彼氏いたんですが、万事屋に別れさせ屋になってもらったんです」


元彼に貢いでた事、別れ話を切り出せば暴力を振るわれ束縛され離れられなかった事、別れてから女として人として強くなろう、自分の身は自分で守れるようになろうと思った事を話した。


「なんか、大変だったんだな……」

「高い勉強代を払ったんだと思えばなんて事ないです。お陰で万事屋にも真選組にも出会えましたしね」

「ふ、オメーのそういうところは嫌いじゃねェよ」


そう言って土方さんが少し目を細めた。
こんな顔もするんだな。


「な、なんですか急に。変な人!」

「あ゙ぁ!?褒めてやってんのに変な人とはなんだァ!?変な人とは!」

「あんなにたくさんマヨネーズかける人だし、変なのは今更か」

「んだとぉおお!!??」


照れ隠しで変な人だと言ってしまい怒らせてしまった。
本気で怒ってるわけでは無いだろうけど。置いてあったビール瓶をかっさらい、結構な勢いでゴクゴクと良い音を立てる。


「それ、私が飲んでたやつですけどね」

「ブーッ!!!!な、なな、か間接キ、キキキ」

「うわ、汚い!勿体無い!」


間接キスなんぞで口に含んだビールを吹き出す土方さん、意外とウブなのかこの人。男前なのに経験少なかったりするのかな?


「そんなんで照れるなんて小学生ですか」

「うっせ…」


第一印象は男前でクールで怖そうって感じだったけど、可愛いところあるんだな。
からかうのも楽しいかもしれない。総悟の気持ちも分からんでもない。あれ、私もドS予備軍?


「明日も早いんだからもう寝っぞ」

「はぁい、おやすみなさい土方さん」

「ああ、おやすみ」


土方さんの可愛らしい一面が見られた夜だった。


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