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「この前名前ちゃんがさー」

「名前ちゃんって特別美人って訳ではないけどなんか良いよなあ」

「わかる、あと何か抜けてるのが癒される」

「名前ちゃんって彼氏いるのかな!?」


吸い終わった煙草を灰皿に押し付けて消した。
最近、あいつのいない所であいつの名前を聞くことが多い。他の隊士たちが名前がー名前がーって浮かれてやがる。


「名前ちゃん、たまに縁側で飲んでるぜ」

「まじでか、俺もご一緒してえ」

「でも沖田隊長や副長が近くにいる時は話しかけない方がいいぜ」

「めっちゃ睨まれるよな、こえーっ」


あの、聞こえてんだけど。
思っきし聞こえてんだけどォォ!!??
総悟はまだしも、俺は睨んでねえよ。元からこういう目だわ。


「あっ、名前ちゃんだ!」

「名前ちゃんおはよう!」

「おはようございますー」


あいつが食堂に出てきたと思ったら一瞬にして隊士達に囲まれる。

こいつらみんなさかりの付いた犬かよってぼーっと見てたら、隙間からあいつと目が合って、いつもよりも困ったような笑顔で手を振ってきた。


「名前ちゃん今俺に手振った!?」


とか俺の後ろにいる隊士が騒いでる。いや、今のは俺だろって自惚れてみたり。

すっかり真選組のアイドルだ。

あいつに恰好いいところを見せようと気合い入れて稽古に参加する奴らが増えた。当の本人は見てもないけどな。
多分あいつ晩酌のことしか考えてない。


「ねえねえ、名前ちゃんて彼氏いるの?」

「あーそれ俺も気になってた!」


くだらねえ事聞くんじゃねえよ。
男がいたらこんなむさくるしいところに住み込みで働かねーっつの。


「いますよ」


え?


「彼氏、います」


にっこり。
さっきの笑顔とはまた違った、作ったような笑顔でそう言った。

彼氏がいても名前ちゃんは俺達の癒しだ!って輩もいれば、彼氏がいるなんて……って落ち込んでる輩もいる。

俺はそんな光景をぼんやりと眺めながら、胸ポケットから取り出した煙草に火をつけた。
おかしいな、同じ箱から取り出したのに不味く感じる。


「ハズレ引いたか」


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