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「お、お邪魔しますー」
今日は志村家に来ている。
新八くんのお姉さんが、新八くんになかなか彼女が出来ないことを酷く心配しており、少しでも安心させてあげたいと恋人のフリを頼まれたのだ。
いくらなんでも私とじゃ歳が離れ過ぎではないかと、一度は断ったが他に頼める人が居ないらしい。
銀さんと神楽ちゃんには内緒で!と土下座されたけど……私に恋人のフリなんて務まるのだろうか。
「じゃあ名前さん、申し訳ないですが適当に演技してください……!」
「わかった、頑張る!」
小声で少し作戦会議をして大きく深呼吸。ちょっとドキドキしてきた。
「姉上、名前さん連れてきました!」
「あらいらっしゃい、あなたが名前さんね、新ちゃんからお話は聞いています。どうぞ中へ」
新八くんのお姉さんといえば眼鏡でおっとりした感じのお姉さんを想像していたけど、物凄い綺麗なお姉さんだ……新八くんの二つ上だと聞いているけど、すごく大人っぽいと感じる。
居間に通されお茶とマカデミアンナッツチョコを出される。何故マカデミアンナッツチョコ…?まあいいや、美味しいから。
「あの、新八くんとお付き合いをさせて頂いてる、名前といいます」
「志村妙といいます。新ちゃんはシスコンだから、絶対年上の女性を好きになると思ってたんですよ」
「ちょっと姉上!!シスコンじゃないですよ!!」
「私も新八くんからいつもお姉さんのお話聞いてました、姉上姉上ーってよっぽどお姉さんのこと好きなんだなあって」
「あら、新ちゃんったら。でもこんな可愛らしい人が新ちゃんの彼女なんて……私とても安心しました」
新八くんは真っ赤になって縮こまってしまったようだ。うぶな男の子って可愛いな。
「新ちゃんとは結婚も考えていて?」
「えっっっ!?ま、まだお付き合いしたばかりなのでそこまでは……」
「姉上、気が早すぎますよ!」
「そうかしら?じゃあ、あんなことやこんなことはしたの?」
「姉上ェェェ!!まだしてませんよ!僕まだ童貞ですから!」
「まあ!通りで夜中に何やら1人でシコシコしてると思ったわ」
「姉上ェエエエエ!!」
なんだか面白いお姉さんだ、仲良くなりたい。
新八くんの恋人役だからとかそういうの関係なしに、普通に仲良くなりたい。
「そうだよ新八くん!童貞は早く捨てた方がいいぞ!」
テーブルの下から聞きなれた声が聞こえてきたと思えばゴリラの顔がにゅっと出てきた……
「アンタは早く命を捨てろォォ!!」
「あらまたゴリラが出たわ、1匹見つけたら30匹いると思えって言うものね。何度潰しても湧いて出てくるわ」
「兄としては弟の彼女を見ておかなければ……ぐふっ」
新八くんのお姉さんは笑みを浮かべながらゴリラを何度も何度も殴った。つ、つよい……こわい……。
そういえば前に言ってたな、ゴリラは姉上のストーカーなんだって。
ボコボコにされたゴリラは土方さんに回収しに来てもらって、マカデミアンナッツをつまみながら3人で談笑する。
銀さんや神楽ちゃんの話、私の仕事の話など色んな話をして、あっという間に空は綺麗なオレンジ色に染まっていた。
「そうだ!名前さん、今日泊まっていきません?」
「え!?ちょっと姉上それは…!」
「いいじゃない。私、名前さんともっと仲良くなりたいのよ」
「わ、私もお姉さんと仲良くなりたいです!」
「じゃあ、お姉さんじゃなくて名前で呼んでくださる?」
「お妙……ちゃん?」
「よく出来ました!よし、今日は私が腕によりをかけて夕飯作りますね!」
「姉上!夕飯は僕が作るので名前さんと話でもしててください!」
「あら、いいのかしら?」
「私も手伝うよ!」
「いえいえ、お客様なので座っててください!」
お妙ちゃんは料理が絶望的でなんでも黒い謎の物質に変えてしまうとかなんとか聞いたことがある。危なかった……。
でも新八くんのご飯は初めてなので楽しみである。
ハラハラドキドキの夜が始まりそうだった。
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