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人ってのは、糖を摂らないでいると身体に不調を来たす。
なんてガキ共に言い訳してファミレスに逃げてきて、いちごパフェ食ってたら、突然窓をコンコンと叩かれた。
名前が窓の外から無邪気に手を振って来たので、持っていたスプーンを軽く振る。
小走りで去ってったかと思いきや、店に入ってきて向かいの席に座った。
「銀さんだー!久しぶり」
「何、今日休みなの?」
「今は買い出し中!」
両手には大量のマヨネーズや食材が入った買い物袋。
さすがにこの量を女に持たせるのは……って思ったけど平気で持ってるし、ゴリラの素質があるのかもしれない。
「サボりかよ、いつのまにそんな悪い子になっちゃったの?銀さんそんな風に育てた覚えはないよ」
「あ、店員さん、私生ビールで!」
「おい、無視すんな。てか買い出し中にビール飲んで大丈夫なわけェ?」
「一杯くらい引っ掛けてもそんな酔わないから大丈夫大丈夫!」
相変わらず呑んべぇなのは変わらないようだ。
真選組で働くって言い出した時はどうなることかと思ったが、まあ上手くやってる様で良かった。
「ひとくちもーらい!」
隙をついて、俺のパフェからアイスを丸々奪われる。
「オイ取りすぎだっつの!パフェの恨みは怖ぇーんだぞ!」
美味しそうに目を細める名前。
一口がでかすぎるんだよ。まあでも、こんな美味そうに食うならいいかと許せてしまう。
「お待たせ致しました、生ビールです」
「やっほーい!」
かんぱーい!とか言ってジョッキとパフェの器を軽く合わせて音を鳴らす。何が乾杯だよこっちはもう完食したわ。
名前は半分くらいまでぐいぐい飲んだ。唇の上についた泡に気づかずにニコニコ笑っているから、何となく拭ってやりたくなって手を伸ばした。
それを抑止するかの様にコンコン、とまた窓を叩かれる音がした。
「げっ!」
そこには沖田くんが立っていて、名前は顔を引き攣らせる。
沖田くんも店の中に入ってきて、しれっと名前の隣に座った。
「旦那ァ、こいつと知り合いだったんですかィ」
「おー色々あってな。つーかそいつ、めちゃくちゃ怯えた子犬みたいになってるけど」
「サボらずパトロールに出た甲斐がありやしたよ」
「う……沖田総悟」
「テメー、その気持ち悪ぃフルネーム呼びやめろィ」
「名前、沖田くんのことは総一郎くんって呼んであげなさい」
「旦那、総悟でさァ」
「そ、総悟……?」
イラッ
ん?なんだ今のイラッての。
無性に腹が立ってきて、名前の飲みかけのビールを平らげた。
「あーっ私のビールぅう!」
「痛い!痛い!いててててて!髪の毛だけはやめてぇ!まだハゲたくないからやめてぇ!」
アルコールの恨みは怖い。
あー絶対髪の毛何本か抜けたよ。お前だってさっき俺のパフェ食べただろうが。
「てか総悟、早くパトロール戻りなよ!」
「荷物重いだろうから屯所まで送ってやらぁ」
「えっ!な、何か企んでる!?」
「別に何も企んでねーよ、優しいご主人様が送ってやるって言ってんだ」
「いやその優しさが怖いんですけど。私、洗濯物の件忘れてないからね?」
軽く口喧嘩をしながら二人ははパトカーに乗って帰ってった。
仲の良さを見せつけられた気がした。
昨日今日とでえらい打ち解けてんだな。別に俺には関係ないけど、何となく面白くなった。
きっとパフェを食われたからだ。
つーか、ビール代出していけよあいつ……
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