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スーパーで買ってきたあんぱんを抱えて食堂に行くと、名前さんがいた。
名前さんは今日から女中として働くことになり、さっそく男だらけでむさくるしい屯所を華やかにしてくれたのだ。

他の隊士も女の子がいるってだけで鼻の下を伸ばして、話しかける勇気はないのかチラチラと彼女の様子を窺っている。


「はえー疲れたー!ビール飲みたいー」


そんな独り言を呟いていたので話しかけてみようかなと近づいた瞬間、伸びをしだしてちょうど組んだ手が顔にぶつかった。


「ごフッ…!」

「あっ、山口さん!ごめんなさい!!」

「いや、山崎です。昨日まで普通に山崎って呼んでましたよね!?……どうですか、女中の仕事は」

「まだ昼食の準備だけなのにどっと疲れましたね…ビール飲みたい……」

「意外とお酒とか好きなんだ?」

「そりゃもう!お酒を飲まないと人生やってられませんよ!」


カシオレとかで酔っちゃいそうな感じなのに、意外と呑んべぇらしい。酔っ払ったとこ見てみたいなーなんて。

まあ俺みたいな地味なやつ、相手にしてくれないだろうけど。


「山本さんはお昼あんぱんだけなんですか?」

「いや、山崎です。あんぱん別に好きではないんだけどね。なんかあんぱんキャラになっちゃってさ」

「ふーん、地味キャラも大変なんですね」

「ん?今地味って言った!?俺のこと地味キャラって言ったァ!?」

「違うんですか?」

「……ッ何も言えない」

「まあ地味って言うのも1つの個性ですよ」


バシバシと背中をを叩かれる。意外と力が強くて普通に痛かった……
色々と見かけに寄らないんだなあ。


「…名前さん、意外と力強いんだね。女中より隊士のが合うんじゃないかな」


軽い冗談のつもりで言った。そのはずなのに、

名前さんの表情はどんどん曇っていく。


「私がいたぶるのは良いんですが、敵にいたぶられるのはちょっと……暴力とか怖くて……」


そんなことを悲痛な顔で口にした。いたぶるのはいいんかい。
台詞だけ聞くとドSなのかと勘違いしてしまいそうなのに、なんでこんな悲しい顔。

過去に何かあったのかな。だとしたら俺地雷踏んだ!?

どういう言葉を返せばいいのかわからなくて、あたふたとしていたら女中のおばちゃんに呼ばれてしまった。


「じゃ、石原さんも残り時間頑張りましょうね!」


彼女は出会った時と同じ笑顔でそう言って戻って行った。表情がコロコロ変わる人だな。

でも、


「石原って誰だよォォ!山崎だっつってんだろーが!一文字も被ってねーぞ!わざとか!?わざとなのかァ!?」

突っ込まざるを得なかった。


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