一通り山崎さんに案内してもらった。
女中さんは今は主婦の方が多く住み込みの人はいないらしい。基本早朝に来て夕飯の片づけが終われば退勤する人が多く、住み込みで働いてくれるのなら大分助かると言っていた。

私も住み込みで働けるのはめちゃくちゃ助かるんだけど、あの沖田という人に腹が立つ。
けれども言われっぱなしも嫌だ。負けず嫌いな私はメラメラと燃え上がっていた。


「おー山崎ィ!その子が見学の子か?」

「ちょっと局長ォォ!!アンタ何で全裸なんですかァァァ!!!」

「ちょっと汗かいてなあガハハハ」

「ガハハハじゃないですよ!!女の子がいるんですよ!!!」


ほぼケツが毛だるまの生き物が歩いてきた。
日本語を喋られるようだ。今まで笑顔を作っていたがさすがに顔が引きつってしまった。


「あの、山崎さん。ゴリラの飼育も女中の仕事なのでしょうか」

「あの、確かにゴリラだけどこの人一応局長なんです、偉い人なんですよ……ゴリラだけども」

「1日局長的な?最近動物がやるのも多いですもんね、そんな感じですか?」

「いや、もうその辺にしてあげて……涙目だからこの人」

「泣きたいのはこっちですよ。いきなりこんな汚いの見せつけられて……公然猥褻ですよねえ!?」

「とりあえず局長、服着てください」

「うん……」


しょぼくれたゴリラはとぼとぼと部屋に消えていった。
今ので真選組のイメージがダウンしたんですけど。
あれが局長か……

やはり男所帯だと全裸で歩き回ったり、その辺イカ臭いティッシュが転がっていたり、そういう感じなのだろうか。まあ正直男の人の全裸くらい股間さえ直視しなければどうってことないけども……いや、やっぱ気持ち悪い。

その後も山崎さんはうちの人がすみませんと謝っていた。
この人も苦労しているのだろうなと少し同情した。


「おい山崎、近藤さん汚え顔で泣いてたけど何かあったのか」


タバコの少し嫌な臭いがしたと思うと、お次は顔の怖い人が現れた。
タバコを片手に、瞳孔の開いた切れ長の目で睨まれる。怖っ、怖いけどそこそこ二枚目かもしれない。


「山崎、お前女が出来たのか…」

「副長!違いますよ!この人は女中の件で見学に来た名前さんです!
局長がさっきここに全裸で現れて……」

「ど、どうもー」

「……ったくあの人は。うちの近藤さんがすまなかった。あの人はああ見えても一応俺らの大将なんだ。ちゃんと言い聞かせておく」


そう言ってまた煙を吸っては吐く。煙くてむせそうになるのを咳払いで誤魔化した。
鋭い目は迫力があるが、先程の沖田の様に毒を吐いたりはしなかった。吐くのは煙だけ。

性悪ドSだったりゴリラだったりニコチン中毒だったり。色々な人がいるけどここで働くと退屈はしなさそうだと思った。


「名前さん、見学してみてどうでした?もし考える時間が必要であれば後日でも」

「……やります!やらせてください!女中!」


半分勢いだった。
迷っている暇は私にはないし、何だかんだ楽しそうだと思ったから。外でダンボール生活するより全然マシである。
キャバクラで培われた精神で、何とか乗り切ってみせようではないか。


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