はあ、住み込みの仕事って案外見つからないもんだなあ。求人誌に載っていなくても直接聞きに行くと募集してたりするもんだ、と思って色々な店に回ってるけどどこも人手が足りてると断られる。

最悪住むところだけでも早く見つけないと……と思案に暮れていると、ある貼り紙が目に入る。


『真選組屯所で働く女中募集!
住み込み可、資格などは一切問いません。
炊事・洗濯・料理などの簡単なお仕事です!
お気軽にお問い合わせください!』


お?なかなか良いんではないのか?いやでも真選組って詳しくは知らないけどあまり良い噂を聞かないような……でも私には悩んでる暇はないし。うーんうーん。


「あのー、もしかして女中希望の方ですか?」


貼り紙の前に突っ立って色々と考えていると、バドミントンのラケットを持った男性に声をかけられる。なんでバドミントン?


「はい!いいえ!」

「いや、どっちですか」

「えっと、実は悩んでて」

「良かったら屯所の中見学してみます?見てから決めてもいいですし」

「いいんですか!?見学したいです!」


勤務先は実はすぐ近くなんです、とラケットを持った男の人は柔らかく笑った。
その人の一歩後ろをついて歩く。


「今女中さん足りてないみたいで、出来ればうちで働いて欲しいんだけどね。若い子いなくてむさくるしくって……」

「は、はあ。お兄さんは真選組の方で?」

「はい!山崎退といいます!」

「山崎さん、私は名前といいます、宜しくお願いします」


真選組の人って怖そうな人ばかりだと思ってたけど、山崎さんは優しそうというか地味というか……親しみやすい人である。
刀ではなくバドミントンのラケットを持っているのは何なんだろうか。


「男ばかりでびっくりするかもしれませんが……」


少し歩くと大きな門がある。門をくぐると、確かになんかむさ苦しいというか……ガタイのいい男の人が多かった。
敷地も広く、こんな所で女中として働くのなんて大変ではなかろうか。しかもこんな男だらけの所で住み込みだなんて。


「何でィ山崎、女なんか連れて」


山崎さんが着ている服とはまた違ったデザインの隊服を着た、可愛らしい顔の男の子。
何人かの隊士とすれ違ったが、ダントツで可愛らしい顔をしている。クリっとした大きい瞳と形の良い頭、栗色の髪。私は昔からこういう中性的な男の子に滅法弱い。


「沖田隊長。この方は女中の件で見学に来たんですよ」

「お邪魔してます」


昔キャバクラで培った、100%の営業スマイルを向けて軽く会釈する。


「ふうん、女中ねえ」


上から下まで品定めするかのようにジロジロと見られる。な、なんだよう照れるじゃねえかい。
こんな事ならもっと綺麗にしてこれば良かった。


「まあ、中の下だな。別に俺ァどんな女が来ようがどうでもいいけど」

「なっ……!」


中の下……確かにそうだけど!!顔には自信ないけれど!!
初対面でそんなこと言う!!??顔が可愛い男の子はみんな性格が悪いの!?なんなの!?


「沖田隊長!失礼ですよ!!ほんわかお天気お姉さんみたいで良いじゃないですか!」

「雰囲気だけだろ。山崎の好みは理解不能でさァ」

「すみません名前さん!!この人ドSなんです!!!すみません!すみません!!!」


真っ青な顔して何度も何度も頭を下げる山崎さん。
ドSだか何だか知らないけれど、私は別にドMではないしこいつは私の反応を見て楽しんでいるんだ。相手にしないのが一番だよね。


「山崎さん」

「はっ、はいぃ」

「別のところに案内していただけますか?」

「わ、わかりました!行きましょう!食堂を案内しますね」


沖田って人を完全無視して山崎さんに着いていく。
後ろからチッて舌打ちが聞こえた。ちょっと可愛い顔してるからって!!!むかつく!!!覚えてろよ!チッ!
心の中で舌打ち仕返した。
表では気しないフリをしているが、内心とっても腹が立っている。

昨日泣き腫らして特別コンディション悪いんだよ!普段は中の中じゃ!
怒りを抑えて、すれ違う隊士に笑顔で会釈をしながら屯所を見て回った。


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