短いドライブ
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「名前ちゃん、さぁ行こうね」

私の手を取り歩くお婆ちゃんは
急に歩くのをやめた。


不思議に思っていると

「お婆ちゃんのお家ね、薫ちゃんの
お家のすぐ近くなんだよ」

お婆ちゃんの言葉に顔を上げると

「どこだ?」

短く聞く薫ちゃんに


「薫ちゃんのお家の通りを曲がった
角のタバコ屋さんの隣」


「…じゃ送って行く」


場所が分かったのか薫ちゃんは
お婆ちゃんに言った。



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病院を出ると黒塗りの大きな
車があって男の人が下りて
後ろの扉を開けてくれた。


薫ちゃんは奥に座ると
手でこっち来い、と呼んでいた。

お婆ちゃんは男の人に挨拶をして
前の席に乗り込んでいた。


「早くしろ」

薫ちゃんの声に急かされ
私も車に乗り込むと車は動き出した。



しばらく走って一軒の家の前で
車はゆっくり止まった。

「ありがとうございます」

お婆ちゃんは男の人に礼を言うと
車から下りていたから
私も車から下りた。


扉が閉まると窓が下がって
薫ちゃんの顔が見えた。


「薫ちゃん、ありがとう!」


大きな声で言うとウンと頷き

「出せ」

薫ちゃんが口にしたら車が走り出した。



遠くなって行く車を見ていると


「名前ちゃん、ここが新しい
名前ちゃんのお家だよ」

にっこり笑ってお婆ちゃんは言った。


家の隣を見るとタバコ屋さんがあった。


「ふうっ…」


深呼吸して私は新しいお家に入った。





END
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