ランチタイム
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先に事務所を出てスタスタと歩く
丑嶋くんをあたしは必死に追いかけた。


「うーしーじーまーくーん」


なかなか追いつけない背中に
呼びかければダルそうに
顔だけ振り向いてくれた。


「…もう、走れない…」


丑嶋くんに手を伸ばせば
あたしの手首を掴み

「…置いてくぞ」

フンと鼻を鳴らしながら歩き出す。


服から伝わる丑嶋くんの体温に
顔が赤くなってしまったあたしは
バレないように俯きながら
横に並んで歩いた。




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事務所からすぐ近くの
良く行く洋食屋さんに着いて
椅子に座ると


「オムライスとエビフライ定食」

丑嶋くんは早口で店員に告げると
水をグイッと飲み干した。




「何でエビフライって分かったの?」

朝から食べたかった物を当てられて
あたしは不思議だった。


「分かンに決まってンだろ」



右の口角を少しだけ上げる丑嶋くんに

「エスパーだね!」

とくだらない話をしていたら
テーブルにエビフライ定食とオムライス
そしてケチャップが置かれた。


(流石、分かってるねー)


何度も通うあたしたちの好みを
完全に理解している
店員の気配りに感心した。




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「エビ食べる?」

目の前に向けると眉間にシワを作り
エビフライを睨む丑嶋くん。


「オムライスだけじゃ
バランスが取れないよ?」

フォークに刺さるエビを
丑嶋くんの目の前でチラつかせると
バクっと豪快に食べた。


「偉いねー次は野菜!」


丑嶋くんのオムライスに添えられている
サラダをフォークに刺して見せると


「…」


さっきより更に深くなる
眉間のシワに苦笑いして

「嘘だよ、あたしが貰う」

大口開けてサラダを
もしゃもしゃと食べていたら


クッと喉で笑う丑嶋くん。


「なに?」


急に笑われたあたしは
丑嶋くんのように眉に力をいれて
シワを作り見上げると



「野菜食う名前、うーたんみてェ」


瞳を細める顔にドキッとして


「そうだ!うーたんのおやつ
もうなかったよ?」


と慌てて会話を変えれば


「そうか。また買いに行かなきゃな」


カランっと音が鳴った。

この音は丑嶋くんが
オムライスを食べ終わった合図。



「ちょ、早いよー」


先に食べ終えた丑嶋くんは
煙草に火を付け食後の一服をしている。



食べるのが遅いあたしに


「…ゆっくり食えば?」


欠伸をしながら言ってくれる
丑嶋くんの優しさが擽ったくて
あたしは頬が緩んだ。




やっとのことで食べ終えたあたしを
確認してから丑嶋くんは席を立つ。



伝票を手に取りレジに向かう
丑嶋くんにあたしも続いた。


レジであたしの分までお金を
出そうとしていた丑嶋くんに
気付いて横から千円札を
受け皿に入れると軽く睨まれた。


「ここはキッチリしなきゃね」


あたしの言葉にフンと鼻を鳴らすと
丑嶋くんは先に店を出てしまった。


店から出て少し前を見ると
煙草を吹かしながら先を歩く丑嶋くん。


その背中に追い付けば
あたしの歩幅に合わせて歩いてくれる
優しさにまた頬が緩む。




ランチを楽しんだあたしたちは
また事務所に向かって歩き出した。





END
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