招かざる客
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本城さんとご飯を食べて
クラブに出勤して本城さんの隣で
お酒を呑んでいたらボーイに呼ばれた。



「何?」

「あの人名前さんを付けろって
聞かないんです…」

ボーイの視線を見ると

…山川が赤い顔して座っていた。


「誰か付けれない?」

「付けようとしたら断られて…」


もう行くしかなかった。

本城さんに少し席を立つと伝え
山川の席に付いた。


「お待たせしました」

「名前!遅いだろ!」

真っ赤な顔をして怒鳴る山川は
相当呑んでいるみたいだった。


普段も乱暴な人なのに
更に態度が酷くなっていた。


「名前、俺の女になれよ」

いやらしく腰を撫でる山川の手を
両手で包み

「悪い手はココですよ」

自分の膝に置いた。


本音を言えば手なんか触りたくない。

でも相手から触られるのは
もっと嫌だった。


「ちゅーしよー、ちゅー」


汚い顔を近付ける山川。

ボーイに合図して助けて貰った。


「少し失礼します」

山川の席を立ち歩き出すと
文句を言う山川となだめるボーイ。



本城さんの席に戻ったときには
物凄くクタクタで
笑顔なんか作りたくなかった。


「モテる名前もツラいなぁ」

笑いながら水の入ったコップを
本城さんは渡してくれた。


「ありがとうございます」

礼を言ってコップに口を付けた。


しばらく経って本城さんとの話に
夢中になっていると


「おい!名前!」


いきなり怒鳴り声がして
店内が一瞬静まった。


声のした方を見ると


「何でこんなじじぃといんだ!」


さっき見た姿より
更に酔っぱらっている山川がいた。


「浮気しやがって!」


山川はあたしに掴み掛かってくる。
店内がざわめく。

咄嗟に駆け付けてくれた
ボーイに山川は取り押さえられて
店から出て行った。


「名前大丈夫か?」


「うん」


心配する本城さん。



こんなこといくらでもあった。
怒鳴られ殴られることも。

こんな仕事してるんだからと
諦めてはいたけど

実際起きると怖くなった。



男はひと時の夢を買い
女はその夢を魅せる。


そんな関係でいいはずなのに
入ってはいけないゾーンまで
踏み込んでくる男もいる。



いつからあたしは
男を騙して生きてるんだっけ…
とぼぅ…とする頭で考えていた。


山川を連れ出したボーイが
戻って来た頃には
何事もなかったかのように
また店内は話し声で溢れていた。



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「今日は騒がしくてすみませんでした」

車に乗り込み本城さんに謝った。


「気にせんでえぇって!」


「また一緒に呑もなっ!」


ガハハと笑って
本城さんの車は走り出した。



「名前さん」

「ん?」

一緒にいたボーイに呼ばれた。

「あの人出禁にしましたから」

「うん。…帰るわ」


あのあと山川がどうなったか
少し想像しながら店に戻り
荷物を持って店を出ると携帯が鳴った。





END
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