最善の選択
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「…ここ、どこよ?」



「見たら分かるでしょ?」
「パチンコ屋さん」


店内に流れる爆音の音楽と
ジャラジャラ流れる玉の音とが
二日酔いのあたしの頭を刺激する。




「ここで待ってて」


不安げな表情の田畑をトイレ前で
待たせて適当に男の人に話し掛け
田畑の待つ場所に戻った。


「えー、これ?」

田畑を見たおじさんは不満そうに言う。


「お願い、ね?」


あたしが甘い声で頼めば

「…しょうがないなぁ」

と田畑をトイレに押しやり消えた。



あたしは田畑をおじさんに買わせた。


道端で借りさせる手もあったけど
おばさん相手じゃなかなか
貸してくれないから
1番手っ取り早い方法を取った。





しばらくしてトイレの中から
2人が出てきた。


「はい、これ」

スッキリした顔のおじさんは
田畑に3千円を渡して去って行く。


あたしはすぐに田畑の手の中の
お金を取った。


「まだまだ足りないよ?」

その声に放心状態の
田畑がピクッと動いた。


「こんなの、あんまりじゃない…」

肩を震わせて俯いている。


「まだ買ってもらっただけ
有難いと思えば?」

あたしが冷たく言うと顔を上げ
唇を噛み締めた田畑。


「早く、まだ次あるんだから」


ニヤニヤしながらやってくる
ハゲたおじさんに気が付いた
田畑は

「もう嫌よ!!」

叫び店内から出ようとした。


(逃げるとかないよ…)


あたしは田畑のあとを追った。



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店内から出ると田畑を掴んでいる
柄崎くんとその横に丑嶋くんの姿。


「あれ?何で居るの?」

タイミング良く現れた2人に驚いた。


「社長から聞いてもしかしてなと…」


あたしは田畑の回収に行く前に
丑嶋くんに連絡していたことを
思い出した。


そして朝の顔とは全く違う
完全に復活した柄崎くんがいた。



「さっさと払えよ!」

丑嶋くんの怒号に田畑は大人しくなって
柄崎くと一緒に田畑を引きずり
また店内に戻った。




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田畑の回収に少し時間が掛かったけど
無事に回収することが出来て
車に乗り込み事務所に向かった。


「名前今日は本当にありがとな」

運転する柄崎くんと
バックミラー越しに目が合った。


「良いの、良いの。
でも柄崎くん凄いね」

「毎日あんな怒鳴ってさ…」

「そんなことねぇよ」

あたしの言葉に照れて
頭を掻きながら笑う柄崎くん。


横を見ると少し不機嫌そうな
丑嶋くんがいて


「でもやっぱり丑嶋くんのが凄いよ」
「凄味が違うもん」


ねっ?と丑嶋くんの顔を覗けば
フンと鼻で笑っていた。






事務所に着いて柄崎くんと別れて
あたしは丑嶋くんの車に乗り込んだ。



「今日、どうすンの?」

「明日夜あるから帰るよ」


「…そうか」


チラッとあたしを見た丑嶋くん。


マンションの下で車が止まった。



「名前あンま呑み過ぎンなよ?」

「はーい」

呑気に返事をすれば眉間に小さく
シワを作る丑嶋くん。


「大丈夫だから。
送ってくれてありがとね。」

「…」

「じゃ…おやすみ」


不満そうな表情を見ながら
車から降りてマンションに入った。



部屋に着いて

いつもよりハードな1日だったな…
と思いながらシャワーを浴びに
浴室に向かった。





END
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