そのギャップに
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「本当この学校良い男居ないよねー」

机に座りながら足をブラブラさせる
友達を横目に

「そんなことないと思うけど…」

なんて言いながら
ある人を思い浮かべていた。

私の返答に友達が机を勢い良く降りて
ガッと私の肩に手を乗せて

「気になる人でも居るの?」

と食い気味に聞いてきたから

「うん。」

素直に頷くと興奮した様に

「名前は誰が好きなの?」

グラグラと肩を揺らされた。




周りに聞こえない様に
小さい声で

「えっと、は、花山くん」

と答えたら

「花山ー?あんな怖そうな奴
辞めなって!!」

全力で否定する友達。

…言われると思った。

花山くんは見た感じ
凄く背が高くて身体も大きいし
顔には大きな傷があって

更に花山組と呼ばれる
組長をしていて
学校内、いや、ここら辺一体の
不良やヤクザさん達からも
恐れられている人。



そんな人を
何故好きになったかと言うと…



数か月前の事
テストの追試で居残りさせられて
少し暗くなった校庭を歩いていると

飼育小屋の近くに人影があって
近付いてみたら最近転入してきた
花山 薫くんだった。

(何してるんだろう?)

気になった私は
更に近付いてみた。

(あっ…)


声が出そうになったのを
慌てて手で塞いで
彼の行動を眺めた。


声が出そうになった理由


それは彼が飼育小屋にいる
うさぎ達に人参をあげている姿だった。

細かく切った人参を
大きな手で持ち
カリカリと人参を食べる
うさぎを見て目を細める
彼の目が優しくて

あたしは胸が締め付けられた。

(あんな顔するんだ…
動物に優しいんだから
悪い人じゃなさそう、だよね)


1人心の中で納得しながら
その場から立ち去ろうとした時

〜♪〜♪〜


ポケットに入れていた
携帯が呑気なメロディを奏でた。


(まずいっ、)


咄嗟に身を隠そうとしたけど

「…誰だ?」

低い声が降りてきて
私は隠れるのをやめた。

「っすみません!わっ私、
花山くんと同じクラスの
苗字名前です!」

ただの自己紹介のはずなのに
挙動不審になってしまった
私を見下ろす彼は

「名前か。」

とだけ呟くとポケットから取り出した
煙草に火を付けた。

「花山くんはうさぎ好きなの?」

煙を吐く花山くんに
当たり障りない会話をかけると

「…あァ。名前は好きか?」

思っていなかった質問に

「うん、動物はほとんど好きだよ。」

と答えた。






「よくここに来るの?」



「…たまにな。」

と素っ気なく返事が返ってきて

「私よくここに来るから
また会うかもね」

笑って花山くんの顔をみた。



「…ん。」

肯定でもなく否定でもない
言葉が降りてきて


彼が煙草を吸い切ったのを
横目に

「…じゃ、そろそろ行くね。」

と彼から離れた。


別れ際彼は何も言わなかったけど
次の日の放課後
飼育小屋に立ち寄ったら
昨日と同じ影に笑みが溢れた。


「花山くん」

昨日の様に声を掛ければ

「名前か。」

と横目で見下ろす彼。


昨日の出来事を境に
私達は毎日の様に
飼育小屋でくだらない話をした。


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花山くんとの出来事を
思い出しながら友達に話したけど

「へぇー。ってか、この前駅前で
見かけた男の人かっこ良くてさー」

と話題を変えられた。


(自分から聞いてきたのにっ!)

なんてちょっと拗ねながら
窓に目を向けた。



例え周りのみんなが
彼を悪く言っても
悪い噂が立ってたとしても
私は気にしない。



私はあの日見た、花山くんの
優しい横顔に惹かれたんだ。


あの顔はあたしだけが
知っている顔。


誰に何を言われても
私はあの横顔を信じる。


評判なんて関係ないよね。





END
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