強がりな私
____________________________
「…名前別れよ…」
分かっていたよ?
ずっと前から…
「…嫌だよ…馨ちゃん…」
だけど引き止めたかった。
馨ちゃんの心も、身体も…
「…もう無理だ」
もう1度振り向いて欲しかった…
「…馨ちゃんっ、行かないでっ…」
もう1度チャンスを…ください…
____________________________
私が馨ちゃんに一目惚れして
何度も告白して
やっと付き合ってもらった。
「馨ちゃん好きだよ!」
「名前はそればっかりだな」
「だって好きなんだもん!」
「…はいはい」
「本当だってば!」
「…名前、分かったから」
付き合った頃は馨ちゃんの
彼女だってことが
物凄く嬉しくて私は浮かれてた。
始めてのデートに
始めてのキス
…そしてお泊り
「…名前本当にいいンだな…?」
「…うん」
「名前…好きだ」
「あたしも…」
馨ちゃんと重なって
たまに喧嘩してすぐに仲直りして
ずっとこんな風に
過ごせるんだと思ってた。
____________________________
だけど時間が経つにつれて
少しづつだけど変わり始めていた。
「馨ちゃん、来週会える?」
「…名前悪い。ちょっと忙しい…」
馨ちゃんが私に笑ってくれることも
馨ちゃんが私に触れてくれる回数も
どんどん減っていた。
「名前今から帰るわ」
「うん!待ってる」
初めの頃は仕事が終わったら
すぐ電話してくれたのに
いつの間にか携帯も鳴らなくなってた…
この携帯は馨ちゃんの着信を
伝えてくれない。
馨ちゃんの指定メロディだけ鳴らない。
____________________________
「馨ちゃん私のこと好き?」
「…好きじゃない」
「え?」
「…名前愛してる」
「っ!…私も馨ちゃんを愛してる!」
あの頃の私たちでいたら
きっと幸せ掴めたはずなのに…
いつもと変わらない日々を
馨ちゃんと過ごせたはずなのに
どうして馨ちゃんは去って行くの…?
教えてほしい…
私の気持ちは無視なの…?
もう1度だけ考え直して欲しい…
____________________________
久しぶりに会えたのに
馨ちゃんのちょっとした一言で
拗ねた私は家を飛び出した。
そんなことしても馨ちゃんは
追って来ないって分かってるのに…
このまま一緒にいても2人の溝は
深まるだけなのに
馨ちゃんと一緒にいたいと思う
あたしはワガママなのかな…?
大喧嘩をした夜
「馨ちゃんなんて大嫌い!」
「ふぅん…」
「出てってよ!」
「…名前には付き合いきれねェ」
遠くなっていく馨ちゃんの背中
たった一言、素直に
「ごめんね」って言えば良かったのに
言葉が喉で突っかえて出て来なかった…
最初はお互い想い合っていたのに
だんだん気持ちにズレが生じてきて
お互いが空回りしてた…
あの時少しでも馨ちゃんの気持ちに
歩み寄れたら良かったのに
強がりな私は出来なかった…
「じゃあな、名前」
馨ちゃんは簡単に別れを告げた…
馨ちゃんと恋をして恋愛がこんなにも
難しいんだと痛いほど味わった…
END