最悪な悪夢を見た日
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"絶対的な存在"の続編です。



膝に乗ったうーたんを撫でながら
丑嶋くんと話をしていたら
玄関から大きな音がして驚いた。

丑嶋くんはうーたんを抱き上げ
ゲージに戻すと玄関の方に
向かったからあとを追った。



玄関に行けば俯いて暗い顔をして
口元にバンダナを巻いた柄崎くんがいた。

「加納が鰐戸三蔵に拉致られた」

泣きそうな顔をして呟いた。



鰐戸とは3兄弟で知らない人は
いないと言うほど危ない人で有名だった。
でもその中でも3兄弟の末っ子
三蔵は1番ヤバイ人物だった。


「それがどうした」

鰐戸を知らない丑嶋くんに

「丑嶋が加納をやった日、
加納は鰐戸と約束していたんだ。
だけど丑嶋にやられて
その日行けなかった加納は…
加納が殺されちまう!」

と叫んだ。


「俺には関係ねぇ」


「丑嶋は行けなかった事情を
説明してくれるだけでいい。
そのあとのヤキは全部俺が受ける」


ガバっと頭を下げ
土下座した柄崎くんにびっくりした。


意地もプライドも捨てて
泣きじゃくる柄崎くんに


「顔を上げろ!!柄崎!!
鰐戸とケンカすンならてめェーに
付き合ってやるよ」

フンと鼻を鳴らして丑嶋くんは
あたしの手を取り奥の部屋に歩き出した。



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「名前、うーたん頼んでいいか?」

「えっ、あ、うん」


丑嶋くんの言葉に少し理解が遅れた。


丑嶋くんは紙袋にうさぎの餌の袋と
餌入れやおやつを入れて

うーたんの入ったゲージを
大事そうに両手で持ち上げた。


「持って」

丑嶋くんが顎で紙袋を取れと促した。
あたしがその紙袋を手に取ると
スタスタと玄関に戻って行ってしまった。





玄関に戻ると涙を拭っている柄崎くん。


3人で家を出たら丑嶋くんに


「名前、うーたんのことよろしく」


そう言いながらあたしに
うーたんの入ったゲージを渡すと
柄崎くんと歩き出した。




家に帰って部屋に入ったあたしは
うーたんの入ったゲージを静かに置いた。


うーたんを見つめながら

「丑嶋くん、変だったな…」


丑嶋くんに違和感を感じたあたしは
うーたんの頭を撫でて部屋を出た。




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あたしは鰐戸が良く溜まり場にしていた
廃墟の倉庫に向かった。


本当ならここには近寄りたくない。


震える足をなんとか動かし
敷地内に入ろうとしたら鰐戸三蔵と
金属バットを手に持った
丑嶋くんと柄崎くんが立っていた。


スパナを手に取った鰐戸三蔵はその手を
柄崎くんの頭に振り上げた。


柄崎くんは咄嗟に避けたけど
掠ったのか頭から血が出ていた。


目の前に映る惨劇に足が震えると
パトカーの音がして
鰐戸三蔵は一瞬怯んだ。


その隙を付いて丑嶋くんは金属バットを
鰐戸三蔵の頭目掛けて振り上げた。


倒れた鰐戸三蔵に

「柄崎、やるときは徹底的にやれ!!」

「じゃねェーと、全部奪られちまうぞ!!」

「なァ鰐戸!!」

パトカーから降りてくる警察官に気付き
一生懸命止めようとする柄崎くんに
向かって丑嶋くんは言う。


また金属バットを振り上げたとき
あたしは泣きながら丑嶋くんに
駆け寄ろうとした。


「丑嶋くんっ!」


あたしが叫ぶと丑嶋くんは
一瞬はっとした顔をして
右の口角を少し上げたあと

いつもの不機嫌そうな顔をして
視線を鰐戸に移し頭目掛けて
フルスイングした。



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そのあとのことは余り覚えてない。


倒れて動かなくなった鰐戸三蔵と
警察官に連れられパトカーに
乗り込もうとしている丑嶋くん。



あたしに近づいて来た柄崎くんは

「俺のせいで丑嶋が…」

とぐしゃぐしゃに泣き喚いていた。




後日丑嶋くんが鑑別所に入れられたと
誰かから聞いた。


あたしは目の前で起こったことが
受け入れず学校も行かず
部屋に閉じこもった。


だけど丑嶋くんに託された
うーたんのお世話は一生懸命した。


いつか丑嶋くんが帰って来て
うーたんを迎えに来る日まで…





END
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