絶対的な存在
____________________________
"暖かくて優しい日々が"の続編です。




丑嶋くんは3ヶ月入院して
近いうちに学校に来ると言ってくれた。


学校の帰り公園の前を通り過ぎようと
したとき見覚えのある後ろ姿があった。




遠くから離れて見てみたら丑嶋くんと
あの日集団リンチに加わっていた
太っちょの阿部くんが睨み合っていた。

(…何か嫌な予感…)


黙って見ていると丑嶋くんは阿部くんを
意図も簡単に殴り倒してしゃがみ込み
倒れている阿部くんの髪の毛を掴んで
何か話していた。


立ち上がった丑嶋くんは
公園から出て行った。


あたしは気付かれないように
丑嶋くんに付いていった。




____________________________




次に丑嶋くんが向かったのは
工事中で砂利が積まれた敷地だった。



追い付いたときにはクレーン車に
ぶら下がっている井上くんの姿。
井上くんもまた集団リンチに
加わっていた1人だった。


ぶら下がる井上くんは

「C組の俺らは柄崎くんと加納くんに
無理矢理リンチに加わされたんだ!
俺らだって好きでやったんじゃない!」

血だらけの顔で丑嶋くんに叫ぶ。


「嫌なら断れよ」


鼻でフンと言いながら睨む丑嶋くん。


柄崎くんと加納くんに逆らえば
痛い目に合うのは目に見えてる。
クラスの男子は無理矢理リンチに
加わされていたんだ。


あたしは柄崎くんと加納くんに
物凄く腹が立った。

「何でこんなことするんだよ…」

力なく問う井上くんに

「俺は集団で囲んで来た汚ェ奴等を
一人ずつブチのめすだけだ!!」


丑嶋くんは怒鳴り井上くんに近寄り
また何かを話して何処かに歩き出した
丑嶋くんのあとを追った。




____________________________





丑嶋くんは学校の近くの廃墟の工場で
足を止めた。


しばらくしたらその前を歩いてきた
人物を掴み投げ飛ばす丑嶋くん。

その人物は加納くんだった。


丑嶋くんの姿を見た加納くんは
慌てたように何か口走っていた。

そんな加納くんに丑嶋くんは近付き
いきなり飛び膝蹴りをした。
綺麗に飛び膝蹴りが顔に命中した
加納くんは地面に倒れ込んだ。

丑嶋くんはしゃがみ込み加納くんの
髪を掴み「上等じゃねェか」と呟いて
近くにあった細長い石で加納くんの
顔を何度も殴り始めた。


あたしは慌てて丑嶋くんに近寄り
振り上げている手を掴んだ。

「…丑嶋くん!死んじゃうよ!」

必死に叫ぶあたしを見た丑嶋くんは
石を捨てて加納くんの身体を弄り
ポケットから携帯を取り出し

「名前、メール画面柄崎で作って」

とあたしに差し出した。

「あたしが?」

「早く」

気迫に負けてあたしは慌てて
柄崎くん宛のメール画面を作ると
丑嶋くんに携帯を渡した。


丑嶋くんは携帯を弄り終えると
加納くんの顔に携帯を落とした。


「名前、行くぞ」

丑嶋くんに呼ばれて慌てて追いかけた。



____________________________




家に帰る途中駄菓子屋さんで
駄菓子を買い出ようとしたら
その前を通っていた
柄崎くんと鉢合わせした。


丑嶋くんの姿に驚いた柄崎くんは
わけの分からない言葉を口走っている。

「声でかいよ!ふつーに喋れよ。
聞こえてるし…」

「飯の時間何時?」

丑嶋くんは呑気な声で話しながら
柄崎くんに近寄るといきなり左手で
顎を殴りフラフラしたところに
ドロップキックをした。


咄嗟に柄崎くんはガードしたけどすぐ様
丑嶋くんは柄崎くんの後ろに回って
首に腕を回して締め上げた。


「おい!!柄崎!!
そろそろ泣きいれるか?」


大声で怒鳴る丑嶋くんに柄崎くんは
苦悶の表情をして足元から崩れ落ちた。

倒れている柄崎くんの口に
どこからもってきたのか分からない
電球を差し込んで右手の拳を柄崎くんの
顔に何度も振り落とす丑嶋くん。


あたしは血だらけになる丑嶋くんの
右手にしがみ付いて

「もうやめて!行こう?」

あたしの言葉にチッと舌打ちをして
口の中が電球でズタズタになった
柄崎くんを掴み近くにあった
ゴミ箱に放り投げた。


血だらけの右手にあたしが
ハンカチを巻こうと近寄ったら
丑嶋くんに腕を掴まれ家まで歩いた。



____________________________



「可愛いー!」

膝に乗せられたうさぎに顔が綻ぶ。


「うーたん」

「え?」

「名前」

「うーたんかぁ、可愛いなぁ」

一緒に帰ったあたしは丑嶋くんの家で
傷だらけになった丑嶋くんの
傷の手当てをしたあと丑嶋くんは
あたしにうさぎを抱かせてくれた。


丑嶋くんからうーたんは
お母さんの形見だと教えてもらった。

「丑嶋くんの宝物だね」

笑いながら言うと

「そうだな」

と目を細めてあたしの膝の上にいる
うーたんの背中を撫でた。




冷静に暴れる丑嶋くんは
正直怖かったけど
こうしてうさぎを撫でている
丑嶋くんはとても優しかった。

丑嶋くんにあんな結末が
待っていたなんてそのときのあたしは
少しも思いもしなかったんだ…





END
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -