そして、君を想う
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"最悪な悪夢を見た日"の続編です。







丑嶋くんが鰐戸三蔵の頭に
フルスイングして
警察に連れられ鑑別所に入れられて
長い長い時間が経ったある日。



あたしはうーたんの餌を買いに
ペットショップに来ていた。


うーたんの好きな餌を選んでいると


「おい」


1番聞きたかった声が降りてきた。


ゆっくり頭を上げると
眉間にシワを作りあたしを
見下ろしている丑嶋くん。


「探したぞ」

チッと舌打ちして頭を掻く姿に
夢じゃないかと飛び付いたら
優しく抱き締めてくれた。


「おかえり、丑嶋くん」

「あぁ」

「うーたん寂しがってたよ?」

涙を拭きながら言うと

「うーたんだけじゃねェだろ?」


フンと鼻で笑う丑嶋くんに
素直に頷き

「寂しかった…会いたかった…」


手を伸ばしてしがみ付くと
丑嶋くんは頭を撫でてくれて
ぎゅとあたしを強く抱きしめたあと
手を取り歩き出した。







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一旦あたしの家に帰り
うーたんの入ったゲージと
うーたんの餌や餌入れおやつの入った
紙袋を持って丑嶋くんの家に向かった。



久しぶりの丑嶋くんの家に
ドキドキしながら上がり
スタスタ先を歩く丑嶋くんに続いた。

丑嶋くんは部屋の奥に行って
うーたんのゲージを定位置に戻し
紙袋を置いた。


うーたんと再会した
丑嶋くんはずっとうーたんを
撫でながら上機嫌だった。


「名前」

「なに?」

「こっち」

片手でうーたんを抱っこしながら
胡座をかいている足を叩く丑嶋くん。


意味が分かり赤くなっていると
手を引かれ無理矢理
丑嶋くんの胡座をかいた膝の上に
座らせられた。


「…重いよ?」

「重くねェよ」

あたしの膝の上にうーたんを乗せて
片手であたしの腰を抱く丑嶋くんに
恥ずかしくなって顔を伏せた。



「名前、色々あンがとな」

耳元で囁かれて体温が上がる。


「…お礼しなきゃな」

思ってもいなかった言葉に
びっくりしたけど
良いことを思い付いた。


「じゃワガママ聞いて?」


「ワガママ?」

「うん。まずは、移動します!」


うーたんを優しく抱っこして
ゲージに戻してから丑嶋くんの手を取り
強引に引っ張って家から出た。



「どこ行くンだよ?」

「良いから、良いから」

不機嫌そうな丑嶋くんを連れ
あたしは学校に向かった。








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「っ!…よう」

丑嶋くんの姿に驚く柄崎くん。


あたしはあの日以来会ってなかった
柄崎くんに丑嶋くんを会わせた。


「丑嶋…悪かったな…俺のせいで…」

目を伏せて謝罪する柄崎くんに
フンと鼻で笑い

「お前のせいじゃねェよ」

右の口角を少し上げて笑う丑嶋くん。


2人の顔を見合って
あたしは満足そうに笑った。



「あのあと鰐戸とはどうなった?」

「三蔵は入院して一と二郎は
大人しくなった。…けど」

「あのあと柄崎くん、
仕返しに来た不良からあたしを
守ってくれたんだよ」

歯切れの悪そうな柄崎くんに
あたしが丑嶋くんに説明する。


「そっか」


丑嶋くんはそれ以上聞いてこなかった。







「丑嶋くん、次のワガママだよ」

「あ?まだあンのかよ」

呆れ眉間にシワを作る丑嶋くんに
2個目のワガママを言う。


「次のワガママには柄崎くんにも
協力してもらいます!」

あたしが元気に言うと

「えー!!」

と叫ぶ柄崎くん。


「またまた移動するよー
でもちょっと遠いから…ね?」

あたしはニヤリと笑った。









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「何で俺が走んなきゃなんないんだー」


汗をかきながら一生懸命走る
柄崎くんを振り向きながら

「頑張れー!」

笑いながらあたしは応援した。



ある場所に向かうために
柄崎くんに借りたバイクに
丑嶋くんが跨り
その後ろにあたしも跨った。

そしてそして、その後ろに柄崎くんが
バイクを追いかけている状況。






しばらく走って辿り着いた場所。


そこは空き地だった。


昔丑嶋くんと柄崎くんと
毎日遊びあった思い出の空き地。


「懐かしいねー」

あの頃と全く変わらない
風景に昔を思い出した。


「また昔みたいに遊ぼ?」

「いいなっ!」

少年のようにはしゃぐ柄崎くんに

「いつまでもガキだな」

言葉は冷たいけど
口元は笑っている丑嶋くん。



あたしたちは真っ暗になるまで
空き地で遊びあった。









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柄崎くんと別れ丑嶋くんと
家まで帰る途中

「名前」

「ん?」

「転入してお前が覚えてくれてたの
素直に嬉しかった」

「えー?あのとき反応薄かったじゃん」

俯く丑嶋くんに意地悪く言うと


「ばーか、恥ずかしかったンだよ」

頭を掻ながら丑嶋くんは答えた。


「最後のワガママは?」


「…これからも、側にいて?」


勇気を振り絞って丑嶋くんに言うと

「そんなンでいいの?」


キョトンとした顔で答える
丑嶋くんにちょっと腹が立って

「じゃ!駄菓子屋でお腹いっぱい
駄菓子買って!!」


もっとキョトンとする丑嶋くんの
手を強引に取り歩き出した。










あのとき言った

「…これからも、側にいて?」

は恥ずかしさの余り
本音を隠して言った言葉だった。



本当に言いたかったのは

「丑嶋くんの彼女にして?」


だった。



今のあたしには言えなかったけど
いつか、言えたらいいな。


それまであたしはいつまでも
君の隣で君を想いながら過ごすんだ。





END
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