暖かくて優しい日々が
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"傷だらけの君"の続編です。


あの日、転入早々柄崎くんと加納くんと
クラスの男子全員に
集団リンチにあった丑嶋くん。


あたしが駆け付けたときには
ボロボロになって横たわっていて
死んじゃうんじないかと泣くあたしに

丑嶋くんは

「心配なンか要らねェ」

ボロボロの身体で起き上がり
あたしにキスをした。


固まるあたしを無視して丑嶋くんは
あたしの膝に頭を乗せ
横になると眠った。



数時間後目を覚ました丑嶋くんを
支えながら一緒に帰った。




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次の日学校に行くとニヤニヤしてる
柄崎くんと目が合ったけど
目を逸らして無視した。



先生から朝のHRで丑嶋くんが
入院したと告げられて
あたしは学校終わりにすぐに
丑嶋くんの入院している病院に走った。




病院に入ると包帯を身体に
巻き付けて横たわる丑嶋くんに
やっぱり怪我は酷かったんだと
思い知らされて足が震えた。


「丑嶋くんっ」

動揺を隠すように話しかければ
視線だけあたしに移した。


「来ンなよ…」

力なく言う丑嶋くんに

「そんな身体じゃ不便でしょ」

強く言うと

「名前はお節介だな」

右側の口角を少しだけ上げた丑嶋くん。



「丑嶋さーん、夕ご飯ですよー」


カーテンが引かれ看護師さんが
トレイを持って入ってきた。


慣れた手付きでテーブルを用意して
トレイを置いてチラリとあたしを見て

「お付きの人がいるなら大丈夫ね」

と言い残しカーテンを戻して
看護師さんは去って行った。



「…ご飯の時間だね」

丑嶋くんを見ると眉間にシワが寄って
はぁと溜息を吐いている。

「…食べれる?」

「…これで?」

丑嶋くんは手を上げて見せた。


丑嶋くんの両腕は指先まで
ギプスが巻き付けられていて
動かせる状態じゃなかった。


看護師さんの言葉をやっと理解した
あたしは丑嶋くんのベットの
背もたれを少し起こして
テーブルを近付けさせた。


「…あーん」

お箸を持ちご飯を一口サイズに取って
口元に持って行った。


なかなか開かない口に
丑嶋くんの目を見ると
深い眉間のシワに手が震える。


「…やっぱり看護師さん呼んでくる」

箸を戻そうとしたとき
ガッと箸先が揺れた。

びっくりして箸先を見ると
ご飯がなくなっている。

(あっ、食べてくれた)


嬉しくてあたしはすぐにご飯を取って
丑嶋くんの口元に寄せる。


無言で、もぐもぐする丑嶋くんが
なんだか可愛くて頬が緩んだ。


サラダを取ろうとすると

「野菜は食わねェ」

と顔を逸らされる。

「ちゃんと野菜も摂らないと
大きくならないよ?」

あたしの言葉に眉間にシワを寄せて

「絶対食わねェ」

頑なに口を閉じる丑嶋くんの姿に笑うと
フンと鼻を鳴らされた。


「じゃ、これは?」

ミートボールを摘まんで見せれば
口を開ける丑嶋くん。


丑嶋くんの子供のような姿に
あたしは笑いが止まらなかった。





食事を食べ終わった丑嶋くんは
薄く目が閉じかかっていた。

「じゃ、そろそろ帰るね」

椅子から立ち上がると

「名前、あンがと」

小さい声で言われたけど
はっきり聞こえた。


「うん、ばいばい丑嶋くん」



カーテンから出て病室をあとにした。




あたしはその日から毎日丑嶋くんに
会いに行ってはくだらない話をしたり
ご飯の介助をしたりして過ごした。






昔に戻った気がしてそのときの
あたしはとても幸せだった。

だけどあたしは丑嶋くんが
しようとしていたことを
知らずに横でただ
呑気に笑っていただけだった。





END
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