気にしてなんかいない
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最近ちょっとしたことでも
気になって苛々すンだよ。

なンだ?
この感情は?











ある日、何時ものように事務所で
書類を眺めていたら事務所のドアが開き
小太りの男が入ってきた。



「あの…お金、貸してください」

小太りが目をキョロキョロさせながら
俺を見てる。


「名前」

「はい」

「手続きしてやって」


俺は最近事務所に入った
名前に仕事を任せた。





「社長、確認取れました」

書類を机に持ってきて
柄崎も目で「大丈夫」だと合図する。


「じゃ貸すけどうちは10日で5割。
最初は5万からね」

机の上に金を置く。


「ありがとうございます!」

小太りは金を握り締め
ポケットにねじ込むと
名前に近付き

「っ可愛いね…
名前名前ちゃんって言ったね?」

馴れ馴れしく名前の名を呼ぶ
小太りに苛ついたが
新規の前ではまだ、本性を出せない。


奥歯をギリっと噛み締めて
書類に意識を向けた。


「10日後に名前ちゃんに会いに
また来るからねっ」

聞こえてきた言葉に
気持ち悪い小太りだなと
舌打ちして名前に目を向けると

「お金ちゃんと持ってきてくださいね」

営業スマイル全開な顔。


「当たり前だよーでも名前ちゃん
会いたさにまた借りるかも?」

最後にウインクしながら名前の肩を
ベタベタと触りながら小太りが言う。

「おい」


限界が来た。

俺の声にはっとした名前は

「はいはい。分かりましたから、
今日はお引き取りください」

と小太りの背中を押して
事務所から追いやった。


「ふぅ…」

溜息を吐く名前の姿に
また苛々が募る。





俺と目があった名前は
ゆっくり近付き


「どうしました?凄いですよ」

自分の眉間に指を指し聞いてくる。



(表情に出てたか?)


そんな自分にも腹が立ち

「なんでもねェよ」


と言い事務所を出た。




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事務所に残された高田と摩耶は
社長の機嫌が悪くなった理由が
名前にあるな、と心の中で思った。

「社長、体調悪いのかな?」

心配そうに言う名前に

「腹が減ってたんじゃないか?」

と的外れな回答をする柄崎。

「じゃ社長はご飯に行ったんだね」

笑いながら柄崎に話す名前の姿に
苦笑いする高田だった。



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駄菓子屋に寄って事務所に戻ると
柄崎と高田は負債者の回収に出ていて
摩耶と名前しかいなくて

定時の時間がきて仕事を終わらせた
摩耶が「お先に失礼します」と
帰って行った。




名前を見ればまだ仕事の最中で
パソコンと格闘している。

「終わンねーの?」

俺の声に

「はい…リスト作りに苦戦してて」

眉毛を下げ困った顔をしてる名前に
フンと鼻で笑えば

「あっ社長、お腹はいっぱいですか?」

わけの分からないことを発した名前。


「あ?まぁ今は空いてねェけど」

名前の問いに素直に答えると

「朝の社長ずっと不機嫌だったから
柄崎さんと社長はお腹が空いてるから
怒っていたんじゃないかって
話してたんです」

その言葉に飽きれて席を立ち
名前の横に立つ。


「腹が減ったくらいで怒るかよ」

言ったあとにまたあの
腹の立つ小太りを思い出した。



「名前奴隷くん達にもうちょっと
言い方強くしてもいいンだぞ?」

「言い方ですか?」

キョトンとした名前の顔を見ながら

「隙を見せたら入り込まれる。
押されたらより押してやればいい。
お前は隙があり過ぎンだよ」


「今日来た橋崎さんのことですか?」

橋崎?あぁ小太りの名前か。

黙っている俺に

「気にしてたんですか?」

名前の言葉に最近ずっと苛々していた
理由が分かった。

名前に言われてやっと
自分のよく分からない気持ちに気付き
心の中ではっとした。



何も言わない俺に


「そうなんですか?教えてくださいよ」


催促する名前に

「そんなわけねェだろ、仕事しろ」

と頭に手を乗せた。



「そうですよね」

呑気に笑いながら見上げる名前の頭から
手を離し自分の席に戻り椅子に座った。





椅子を回転させて名前に
背中を向け目を閉じた。


この俺が奴隷くん達に絡まれている
名前のことが気になるなんて。

チッと舌打ちをした。


まぁどんなに名前がしつこく
聞いて来たとしても

"気にしてなんかない"と
言い切るつもりだけどな。





END
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