傷だらけの君
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丑嶋くんとの2回目の出会いは
思い掛けない出来事だった。






「今日から転入する丑嶋 馨くんだ」
先生が前に立って説明する。


丑嶋くんは顔色一つ変えず
何も言わずに頭を少し下げた。


「じゃ席は苗字の隣だ」


(そんなの聞いてないっ!)



スタスタと私の横に座る丑嶋くんに

「丑嶋くん、あたし苗字名前。
昔一緒に遊んだの覚えてる?」

そう、丑嶋くんとあたしは
小さい頃同じ小学校に通った幼馴染で
いつも丑嶋くんと遊んでいたけど
小学6年生のときに丑嶋くんは
転校してしまって泣く泣く別れたけど
中学2年になってまた
丑嶋くんはこの街に戻り
奇跡の再会を果たしたしたのだ。


少し興奮しながら聞くあたしに
丑嶋くんは


「…あぁ」

とだけ短く返事をしただけだった。

その中で気に食わないとでも
言いたげに柄崎くんは
チッと舌打ちをした。

柄崎くんも昔は一緒に丑嶋くんと
3人で遊んだ仲だったけど
いつの間にか不良になった
柄崎くんとは疎遠になっていた。



反応が薄くて落ち込んだけど
あたしは懲りずに毎日
丑嶋くんに話しかけた。


帰る家の方向も同じだったから
素っ気ない丑嶋くんを
追いかけて一緒に帰ったりした。



少しづつだけど話しかけたら
答えてくれる丑嶋くんに
懐かしさを覚え惹かれていった。



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その日もいつもの様に丑嶋くんと
家に帰る途中


柄崎くんと加納くんとクラスの男子達が
公園に集まっていて横を通り過ぎる時に

「丑嶋ァ、面貸せや」
と声を掛けられた。


ほっといて行こうとしたあたしに

「名前先帰れ」

って言われて丑嶋くんの顔を見たら
見たことない眉間のシワの深さに
少し怖くなった。

「…うん。また明日、学校でね?」

あたしは手を振りながら
公園を後にした。






夜になって丑嶋くんのことが
心配で堪らなくなって
あたしは公園に向かって走った。



(…いるわけないか)



公園の周りを探したけど
丑嶋くんの姿はなくて帰ろうとしたとき
遊具から微かに声が聞こえた気がした。



(ホームレスだったらどうしよう)


なんて恐る恐るドーム型の
遊具を覗くと横たわる人影があって
一気に恐怖が走った。


「…名前?」


聞き慣れた声。


「丑嶋くん?」

と聞けば

「何で来ンだよ…」
と怒られた。



「だって、心ぱ…!」

丑嶋くんの横にしゃがみ込んで
よく顔を見たら血だらけで
手足も血で汚れていた。


「!…どうしたのっ」

丑嶋くんの肩に手を置くと

「うるせェ」
面倒くさそうに呟かれた。


「丑嶋くんはそこにいて!
絶対動いちゃダメだからね!!」


あたしは丑嶋くんに言いつける様に
公園を出てコンビニに向かった。



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息を切らしながら遊具の近くに行く。

(もしかしたらいないかも…)


不安を持ちながら遊具を覗く。

(いた…良かったぁ)

あたしはすぐに丑嶋くんの横に座った。


「暗くてよく見えないけど
消毒するからね?」


薄っすらと目を開けている丑嶋くんの
唇の端にアルコールを付けた綿を
優しく当てた。

「っ…てェ…」

「我慢して!」

痛がる丑嶋くんを横目に
あたしは見える範囲の傷口を消毒した。

手の甲に絆創膏を貼り終わった時
急に怖くなって涙がでそうになった。

「名前?どうした…?」

そっと伺うように聞く
丑嶋くんの声が優しくて

「丑嶋くんが、し、死んじゃったら…
って思ったら怖くなって…」

涙を拭いながら丑嶋くんの顔を見ると

「死ぬわけねェだろ、アホか」
鼻でフンって笑われた。

(心配したのに…)

口を尖らせて俯いたら
丑嶋くんがゆっくり起き上がり
手を伸ばしてあたしの頭を引き寄せた。


「こんな泣き虫置いて死ねねェよ」

更に腕が腰に回されて

「心配なンか要らねェ」


丑嶋くんの唇が降りてきた。


軽く触れただけだったけど
丑嶋くんの熱い唇も
アルコールの匂いも
あたしには刺激が強過ぎて目眩がした。



「…あー、いてェや」

ゴロンと横になった丑嶋くんは
あたしの膝に頭を乗せて目を閉じ
スヤスヤと眠り出した。


さっきの丑嶋くんの行動に
パニックになりそうなあたしは
自分を落ち着かせるのに必死だった。





後日、丑嶋くんは"お礼参り"
と言うものを行ったのだけど
それはまた違うお話で…





END
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