『あ…あなたは…大蛇丸様!!』
「やっとみつけたわ、綱手」
巨大な蛇の上で腕組みし、長い髪をなびかせる。
色白の肌で、美人な顔立ちなのだけれど、身も凍るような笑顔で笑っていた。
…大蛇丸だ。
姫はこの笑顔が大嫌いだった。
会うたびに猫な声と、にやりと笑った顔に歓迎される。
何を考えているのかわからない。
とにかく恐ろしい人だった。
「…ずいぶんと久しぶりだね。大蛇丸」
「かなりさがしたわよ」
「いまさら私に何の用なの?」
「実は少々お願いがあってね…」
歩み寄ってくる大蛇丸。
足取りはいつもと変わらない。
近づいてくるたび、あの笑顔が張り付いた顔が恐ろしく見えて、姫は大きく深呼吸した。
しかし、ひとつ、大きなことに姫はきづいてしまった。
とても微妙な変化だが、大蛇丸は衰弱している。
『…』
((心拍がすごく荒い…。
顔色がわるいし、かなりの発熱…。
疲労状態が続いているみたい。
それにあの腕………))
「綱手様…。
あなたなら、もうお分かりのはずだ。
この傷の重さはあなたならわかるはず。
伝説の三忍、綱手姫。
あなた以外に、なおせるものはいない」
「…いったい何をしたっていうの?」
「ちょっと、3代目を殺したときにね…」
『!!!』
((…大蛇丸様が…三代目を…殺した?
自来也様がおっしゃっていたことは、本当だったの?!))
実際、3代目と会った、記憶はない。
本当は、会ったことがないかもしれない。
でもあの、やさしい笑顔が、手のひらがなくなってしまったのは、姫の目で笑っている男のせいだと、思った。
怒りがふつふつとこみあげてくる。
気づけばその怒りにまかせて体が動いていた。
右手の袖に隠していた仕込針弾を大蛇丸めがけて打つ。
姫の忍具の命中率は百発百中。
けして外れることはない。
そして針が大蛇丸の肌を突き刺して…
しかしそうはならなかった。
同時に、大蛇丸の隣にいた男も動いた。
クナイで大蛇丸にたどり着く前に、的確に針を振り落とす。
千本は細くて見つけにくい。
なのに…この人は…
((医療忍者だ))
見つけにくい仕込針弾を見破れるもの。
それは医療忍者だけだ。
しかもこの人、できる。
大蛇丸と似通ったオーラを感じる。
…いやな人。
一本のくれて、針を打つ。
もうあの針で最後だと思っていたメガネ男は、手のひらを許してしまった。
血はかすかにしか出血していないが、右手が小刻みに震えている。
『3分で効く、猛毒よ。
私が調合したの。
死にたくなければ、早く帰ることね』
「…」
((…毒…仕込みか…。
あの年齢にしては、できる))
カブトをにらむ。
まけん、とばかりにカブトもにらむ。
にらみ合ったあと、カブトはにやりと笑った。
あの大嫌いな大蛇丸様の笑みと同じだった。
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