「…ククク…。
予想どおりだね。
腱まではさすがに回復しないか」


完全にやられた。
せっかく奇跡が起きたのに。
頭を殴られて、地面に寝転がった。
当然自分では起き上がれない。
無駄な抵抗だと分かっている。
けれどカブトにけられたり、殴られたり。
…このままじゃいけない。
必死に頭を働かせる。

しかしカブトは確実に急所を突いてくる。
そのうち感覚さえ、なくなってきた。
そろそろ意識も飛んでいきそう…。
私は綱手様を守ると決めたのに…。
自分の弱さにどれだけ舌打ちしても、傷口は治らない。
…それはわかっている。
奇跡が二回もおこるはずがない。
それも、分かってる。


「君の力も、こんなもんなんだよ」

『……そんなこと、ない……』

「ふん!
もう起き上がる気力すらないくせに!」

『…それも…そうね』

「!
認めるのかい?」

『…いいえ』

「よくいうよ。
もう意識朦朧としているじゃないか!」


と、カブトの手が止まった。
…来る。
最後に痛みも感じず、死ぬんだ。
受身を取れずに守られなかったばかりに、内臓にかなりのショックを受けている。
息も絶え絶えだった。
もう完全に私の負けだ。
太陽の光を背に浴びて、カブトの顔は陰っている。
その顔は気持ちのいいものではなかった。
しかし、不思議と恐怖はない。
きっと半分死にかけているんだ。
自分らしくない考えに苦笑いする。


「…もうこれで君も終わりだ」


周りの音が何も聞こえなくなった。
周りの風景が、とたん、ゆっくりになる。
おかしいな…。
目でも悪くなっちゃったかな…

やわらかい日差しの中、鈍い音がして、背中に何かがのめり込んできた。
そこが変に熱を持っている。
…あつい。

そしてその不思議な現象は背中の何かが、消えた瞬間おわった。
さっきのことが嘘だったかのようにすべてが元に戻ってきた。


『うぁっ!』


表現しようのない痛みが全身を貫く。
さされたんだ、クナイで。
あ…
意識が飛ぶ。
だめだ、こんなところで死んじゃ
綱手様、守らなきゃ。
手のすぐそばに咲いていた小さな花をやっとのことで握った。
しかし精一杯に握っていたらしい。
その細い茎が二つに分かれてしまった。
…春風に白い花びらが散ってゆく…。

……ごめん
……お花さん……………

…たぶんそれが最後の記憶だったと思う…。
それからさきのことは…覚えていない。

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