((さて…どうしようか…))
医療忍者となると、少し厄介だ。
やみくもに攻撃したところで、傷を治される。
かといって全く傷つけない、なら私がやられる。
…でも、立場は一緒。
カブトから見ても、私は医療忍者だ。
そうだ、カブトの攻撃パターンをまねればいい。
カブトが動く。
『…』
一瞬遅れて、カブトを探す。
((上…右…左…後ろ………どこにもいない))
『下か!』
「!!」
こぶしを地面に打ち付ける。
そこから亀裂が入って、一気に広がっていった。
地面がせりあがったり、沈んだり。
大まかにきざまれた亀裂の間にカブトの顔があった。
『遅い!』
掌にチャクラをいっきに集め、逃げるカブトの体を瞬時に捉える。
「うわっと!」
少し体にかすったところで、よけられた。
カブトが高く頭上を通って、遠くに着地する。
「…危なかった。
…なかなかやるね、君。
いつから医療忍術をやってるんだい?」
『…今はおしゃべりの時間じゃないわ』
クナイを構えて、カブトめがけて放つ。
遠くにいるカブトは余裕の笑顔で、そこに立っている。
「はん!
こんなもので僕がやられるとでも思っているのかい?」
『…思ってるわ』
しかしとうとうクナイから逃げきれずに、腕に深手を負った。
心臓を狙わなかったのはわざとだ。
殺しはしたくない。
「!!
ばかな!」
カブトが腕を押さえながら倒れた。
途中、すごい形相でにらんでいたが、知らない。
…いちいちうるさかったからだ。
『やっと気付いたみたいね。
そうよ、神経を切断したの。
…ちょっと口がうるさいから黙らせてあげようと思って』
「…」
上から見下ろすと、舌打ちされた。
…わたし、この人嫌いだ。
大蛇丸様に似ている。
ただ近くに寄っただけなのに、背筋がぞくぞくする。
『…さぁ。
もうあなたは立つことすらままならない。
あきらめなさいな』
クナイを首元に押し当てた。
その瞬間、カブトの表情が変わった。
「これで僕に勝ったつもりか?」
『…まだ大口叩くの?』
「……こんなことで…」
『…?』
「僕がやられたと思わないことだよ」
『!』
カブトが一瞬で目の前から消えた。
首に食い込んでいたクナイは、血が付着している。
…確かに目の前にいたはずだ。
そして確かにダメージをくらわせたはずだ。
…どうして立ち上がれるの?
神経を切ったのに…。
後ろからクナイが風をきる音が聞こえて来る。
…後だ。
クナイを投げる。
『!』
((反応が遅かった……よけきれない!!!))
しかしなぜか目の前から千本がやってくる。
…カブトはどこにいるの!
あわててクナイを投げるが、遅すぎた。
真正面からやってきたクナイが深々と腕にのめりこむ。
生ぬるいものが腕を伝って、袖口から赤い液体が流れ出てきた。
はくも地面に赤い水たまりをつくっている。
…出血がすごい。
このままじゃ倒れる。
『うっ…』
チャクラを練ろうとするが、半端ない痛みが襲う。
足が立たなくなって、座り込む。
袖をまくると、千本が3本貫通している。
勢いよく引き抜くと、さらに血があふれ出た。
布を引き裂いて、縛る。
…応急処置だ。
「さっきのお返しさ」
『…』
視界にカブトの靴が映る。
今までどこにいたのだろうか、わからなかった。
気配さえしなかった。
…大蛇丸様みたい。
…いや、嫌い。
「…やっぱりね。
君は僕に勝てないよ。
そして、君の師匠とやらも守れない」
『そんなことないわ…』
立場が逆転した。
油断しすぎていた。
あんなに自来也様が強いとおっしゃっていたのに。
自分でもわかっていたのに。
腕がしびれ始めた。
体が重い。
…血が抜けすぎた。
「ククク…。
血が抜けたせいで意識も朦朧としているじゃないか?
もう君は戦えない、自分でわかっているだろ?」
…この人の目は的確だ。
さすが大蛇丸様の付き人。
「…もう君は用無しだ。
奇跡がおきて体が治らない限り、戦えない。
…君の負けだ」
『…奇跡…』
地面に落ちたカブトの影がクナイを振り上げた。
逃げることもできない。
対抗することもできない。
今の体がいうこと聞かないのは自分がよく知っている。
徐々にクナイとの距離が狭まる。
あぁ、死ぬんだ。
目をつむった。
「!
…なぜだ…」
目を開けると、なぜかクナイは振り下ろされていなかった。
カブトが驚いた表情で突っ立っていたからだ。
私の腕を凝視している。
『…!
腕が…治っていく…』
煙を立てながら、皮膚が異常な速さでふさがってゆく。
…チャクラも何もねっていないというのに。
自然に。
カブトが一歩下がって、クナイを構えるのがわかった。
体はすっかりと元通りになっていて、何事もなかったかのように立ち上がる。
めまいも、しない。
「どういうことだ…」
『…どういうことでしょう』
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