深い眠りから目覚めたような感覚。
なかなか脳が働かないし、いつもより瞼が重い。
意識も朦朧としている。
真っ白な視界。


『!…まぶし!』


突如無理やり入りこんできた太陽の光。
朝だ。
いつもならとっくに起きている時間なのに。
光を遮断するように目を強くつむる。
今日はずっと寝ていたい、衝動にかられる。
新しい、シーツの匂いが心地よいせいかもしれない。
けれど、このいやな胸騒ぎは何だろう。
意識が少しずつはっきりする。
それにつれて、何か大変なことを忘れてしまったかのような気分になる。


((今日は…ゴミの日じゃないよ、
ペットボトル…空き缶…
ううん、違う))


第一、ここは宿だ。
ゴミ収集車をどうして気にしなければならないのだろうか。
…そういえば、綱手様が…いない。
あれ、どこに行ったのかな
また飲みに行った?
賭け?
それとも…
体に鞭うって起き上がる。
そうすると…なぜかおなかがうずいた。
だんだん記憶がよみがえってくる。


『あぁっ!
そうだった……。
今日はあの約束の日だ!』


喉まで出てきていたものを言葉にすると、次に焦りが襲ってきた。
部屋に綱手がいないのを見ると、綱手はもう約束の場所にいるのかもしれない。


『緊急事態だ!
窓からいこう!』


窓を乱暴に開けて、冊子に足をかける。
焦ると何もかもが空回りして、うまく登れない。
あぁ…もう!
足がもつれる。


『!』


外に出ようとした瞬間。
手裏剣が目の前を横切った。
クナイを出して何とかはねかえしたものの、危なかった…。
今のは下手すれば顔をグサリ…だった。
窓から飛び出して、構える。


『誰なの!
でてきなさい』

「…よぉ…姫」

『あ…あなたは自来也様!』


そこには壁によっかかり、ぐったりとした頼りない自来也の姿があった。
自来也に駆け寄って、体を起こす。
自来也が手裏剣を私めがけて投げたのは、気づいてもらうためだったのだ。
こちらは危うく…グサリ、だったけど。


『どうなさったのですか?!』

「綱手のヤローがわしの酒に薬を盛りやがった。
うまくチャクラが練れねーうえに、体がしびれてはしもろくに持てねー」

『!!…綱手様が?!』

「あいつは腐っても医療スペシャリストだ。
無味無臭の薬を調合できんのはあいつぐらいだ」

『…』


自来也の腕をとる。
袖をまくって、脈を測った。
…遅い。


『少し、じっとしていてください』


短く印を組む。
チャクラ色に染まった片手を、自来也の胸めがけて打ち込んだ。


「うっ!」


自来也から呻きが漏れる。
今はあまり自来也様ばかりに時間を割いていられない。
手短に済ませて、自来也の顔を覗き込むと、先ほどより顔色がよくなっている。


「おぉ!
元通りとまではいかんが、十分だ!
さすがだのぉ」


手のひらを動かして、体を動かして、自来也は満足そうに笑った。
まさかお前が治してしまうとは思わなかった、という嬉しくないほめ言葉とともに。
けれどこんなところで笑ってはいられない。
これから綱手様は大蛇丸様に会いに行く。
大蛇丸様相手に私が勝てるわけがない。
ならば、自来也様に来てもらうしかないだろう。


『時間がないんです、自来也様。
走りながら説明します。
ついてきてください!』

「!!
よし、あいわかった!」

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