もしも透明になれたならの続き
赤也独白

なまえ先輩はとてもあまえんぼうな人だった。
って言っても、誰にでもと言うわけではなく、恋人の俺にだけ。
いつもは凛とした先輩なんだけれど、俺と二人きりの時はものすごく甘えてきた。
もうこれじゃあ、どっちが年上か分かんねーよな。ははは、惚気っすよ。
先輩が愛おしくて、今までの恋なんかちっぽけなものに見えた。きっと、俺はもう先輩以外の人には興味ないし、一生この人と生きていくのだろう…と考えていた矢先、俺は事故に遭った。

あー、くっそ。今でも時間を戻せたらとか考える。ゲームならいくらでもリセット出来るのにな。そういえば、あの格闘ゲーム、丸井先輩に貸したままだったな…
ってことは置いといて、俺はものすごいスピードで突っ込んできたトラックに轢かれて、呆気なく死んだ。人間って呆気なく死ぬのな。俺の人生短すぎだろとか思うんだけど、死んでしまったものは仕方がない。
俺のことはどうでもいいんだ。ただ、心配なのはなまえ先輩のこと。

なまえ先輩は5年経った今でも俺を引きずっているらしい。
テニス部の先輩らとも疎遠になったようだった。俺が死んでからなまえ先輩はどんどん孤独になっていく。
先輩、俺の事なんて忘れてくださいよ、って言えるものなら言いたい。早く先輩が幸せになってくれないと、俺は安心して眠れないんですよ。
もちろん、出来ることなら、俺が幸せにしてやりたかった。でも、それは出来ないから。



『やめてよ、そういうこと言われなくても分かってるわ。どうせ、赤也は天国で私のことを見守ってるとか言うんでしょう。でもそんなこと言われても私には何の慰めにもならない。赤也に会いたい』

…俺は、ずっとここにいますよ、先輩。
先輩の瞳に映りたい。先輩を抱きしめたい。だけど、出来ない。

「なぁ、俺じゃ赤也の代わりにはなれねぇか?」

『こんな時に、なに言ってるのよ…』

「俺、ずっとずっとお前が好きだったんだ」


丸井先輩、なまえ先輩をどうか幸せにしてやってください。悔しいけど、あんたが一番、なまえ先輩を分かってる。
小さい頃からずっとずっと好きだったんですよね。俺は知ってたんです。知ってて、知らないフリをしたんです。俺となまえ先輩が付き合ったって聞いた時、本当に嬉しそうに「おめでとう」なんて言うから、俺、ちょっと悔しかったんです。恨んでくれた方が楽だったのに。餓鬼な自分と違って、この人は自分より人の幸せを喜んでくれる人だから。
だから、絶対、なまえ先輩を幸せにしてやれると思うんです。
なまえ先輩は気づいてないかもしれませんが、俺といる時より丸井先輩時いる時の方がずっと笑顔でした。

頑なに死んだ俺に執着しているのは、先輩は自分を許せないからですよね。
泣いて泣いて、苦しんだ自分を解放してあげてください。だから、早く俺のことなんて忘れて。幸せになってください。
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