「財前くんとみょうじさんってなんか似てるよね〜」

そう、最近これを色んな人から言われる。光の家に居候するまで関わったことすらも無かったのに、何故こんなことを言われるんだろう。いや別に嫌とかはないんだけど。
でも最近なぜかよく一緒にいるし、よくペアにされる。異性で一緒にいて楽な関係はきっと光だけだ。いやむしろ、一番一緒にいて楽だ。
もうお互いの事が分かりきっているから。恋愛感情なんてものはもうそこにはない。だから、テニス部のファンからのやっかみもない。


「なまえ、帰るで」

『今日は部活ないの?』

「おん、今日は休みになった。やから、はよ帰ってテレビ観たいねん」

今日は雨だしね。でも、自主練してから帰るのかと思ってた。机の中の教科書を出して鞄に詰めて、椅子から立ち上がる。さて、帰ろうか。
光と教室から出ようとした時、一人の女の子とばっちり目が合った。あー、あの子確か光のファンだったような。もしかしたらだけど、光と話したかった、もしくは一緒に帰りたかったんじゃないかな。
私を見ると、女の子は少し肩を落としていたから、多分そうなのだろう。悪いことしたな。

光のファンは割と大人しい子が多い。本人が騒がれるのを嫌がるというところもあるからだろうか。派手な子は大抵、白石先輩や忍足先輩にいく。だから私が光の横にいるだけで、躊躇する子も多いのかもしれない。


「うっわ最悪、めっちゃ雨降ってるやん」

『…もしかして、傘忘れた?』

「ご名答、せやから入れて」


仕方がないな、と思い傘を広げて光を入れてあげようとした時に、走ってやって来たさっきの女の子。
手には折り畳み傘とジャンプ傘がある。なるほどな、光が傘を忘れることを想定して持ってきたのか。それど間違えて二つ持ってきたのか。

「あの、財前くん!良かったら一緒に帰りませんか」

「…俺、なまえと帰るから」

そうですか、と女の子は少し涙目になった。あああ、女の子が勇気を振り絞って言ったのに!…仕方がないなぁ。

『光、せっかくだから傘借りたらいいじゃない。私の傘あんまり大きくないし。それに、私ちょっと本屋に寄り道してくから』

「じゃあ俺も本屋行く」

『え、今日観たいテレビあるんでしょ』

「本屋も行きたいねん」

光は女の子の誘いに気付いているのだろうか。思わず、眉間に皺を寄せて目で訴えかけるけれど、そんなん知らんわってな感じでツーンした光。
そんな光の態度に女の子も耐えられなくなったのか、「…邪魔してごめんなさい」と消えそうな声を出して、去っていった。あーあ、もう。

『光、気付いてたよね?』

「は?なんのこと?」

『しらばっくれないでよ、あの女の子が光に好意を持ってることぐらい誰にでも分かるでしょ』

「そんなん知らんやん。別に好きになってもらおうとも思わへんし、どーでもええ」

そんなんよりさっさと傘貸せ、と強引に傘を奪われて私は渋々と光の横を歩く。

『…そういえばさ、私と光が似てるってよく言われるよ』

「似てる?兄弟でもあらへんのに?勘弁して」

なんかご機嫌斜めじゃない?なんで?雨だから?
でも光が言う通り私たちは血が繋がった兄弟でもないので、似てないと思う。じゃあなぜみんな私たちが似てると言うのだろう。見た目だけで言っているのか、それとも二人とも冷めているように見えるのか。

『もう、でも兄弟みたいじゃない?家でも学校でもずっと一緒とか』

「は?ほんまにやめて」

なんか今日は本当にあたりが強いな。なんでそんなにイライラするの。絶対雨だけのせいじゃない。
こういう時はもうしゃべらないことに限る。 せめて何にイライラしてるのか言って欲しいんだけど。
きっと、私たちを知らない人は言うんだろうな。私たちが似てるって。
だけれど、似ているようで私たちは似ていない。
それが分かるのはきっと、もっと後で。




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