2009〜2012
卒業式の三日後、改めてじっくり卒業アルバムをめくると目頭が熱くなってしまった。

卒業式では泣かなかったのに、どうして今更ジワリとくるのだろう。まじまじとクラスメートの顔写真を見ていると、もう二度と会えない人もいるのに、なんであの時勇気を出してメールアドレスや連絡手段を交換しなかったのだろう、と思うのだ。



『財前』




でも、私にはとてもじゃないが勇気なんて出なかっただろう。
財前はクラスの中心人物でも無かったけど不思議と人を惹き付ける魅力を持っていて、密かに憧れを抱く女の子は何人もいた。


私もそのなかの一人で、彼の整った横顔を盗み見るたびになんだか恥ずかしくてすぐ反らしたり、今時のませた中学生よりも数倍へたれてる私は話しかけることさえ、恥ずかしくて恥ずかしくて。
奇跡的にも財前とは、三年間同じクラスだった。


他の子より仲良くなるチャンスなんていくらでもあったはずなのに。一度だけど、前後の席になって話しかけることも出来た。前を向くたび学ランの身体のラインが綺麗でドキドキした(自分で変態かとも思ったが)


英語が得意なことも、ピアス五つも空けていながら、真面目なことも、全部ぜんぶ知っている。

だけどそんな彼に会うことは、きっと、もう二度と無い。

何故なら彼は大阪を離れて、東京の有名な私大に進学するから。

面倒くさがりな彼のことだから成人式もきっと帰ってこない。
学ランを来ていつもすました顔をした不良で真面目な彼は私の記憶の中では密かな恋心として静かに眠り続けるのだろう。

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