honeyBのつちまよさんへ!

この絵がぐっときたのでうっかり やらかしたんだぜ のお礼SSです







あ、増えた。

右にイース、左にキュアパッションをまとわりつかせた恋人はわたしを見てそんなことを言った。

「何よあんた、用がないならさっさとどっかいきなさいよ、邪魔よ」
イースは「こんな男に興味なんてこれっぽっちもない」と言いたげに隼人にそっぽをむいているけれど、べったりと背中をくっつけている。
「まあ、どうしたの、険しい顔ね。困っているなら力になるわよ」
キュアパッションは彼の左手を両手でそっと包んでいる。節度をたもった優しい愛のふりをしながら、絶対に離すつもりがないのはわたしがいちばんよく知っている。

せつな、とわたしを呼んで、こちらに歩いてこようとした隼人を、右からイースが彼のシャツをわしづかみにし、左からキュアパッションが手首を握りあげてひきとめた。
「どこ行くつもり、私から目を逸らすことは許さないわ」
「はやと、行かないで。あなたはわたしの幸福。ここにいて」
隼人は弱りきった顔でわたしに目線で助けを求めてきた。しらないわよそんなの。イースとキュアパッションは、彼をはさんでばちばちと火花を飛ばしている。
「ウエスターが欲しがったのは他ならぬわたしだぞ、人格のベースはわたしだ、お前なんかドーナツの上の粉砂糖だ、ひっこめ」
「あなたなんてわたしがいなければただのファザコンだったくせに。愛することもできないのに愛される資格があるなんてほんとに思ってるの?馬鹿?」
「ウエスター!いつまでこのおきれいごとほざきのピンク女をくっつけてるんだ、さっさと振りほどけ!」
「隼人!このひねくれたいじけ真っ黒を貼りつけてるのはあなたのためにならないわ、きっぱり拒否してあげて!」
わがことながら極端でろくでもない人格たちだ。わたしが男ならどっちもお断りだ。けれど隼人はふたりともを両腕で抱きしめた。
「あー、あんまり悪く言うな。どっちも好きなんだから俺は」
「どっちも!? これだけ違うのにそんな言い分が通ると思うのか貴様!」
「そうよ、わたしたちは考え方がまるで違うんだもの、それはもう別の人格よ。だから両方好きなんてありえないわ。順位は必ずあるわ、そうでしょう?」
順位は必ずある。知らず、喉が鳴った。イースとキュアパッションも、真剣な顔で隼人を見ている。
「まあ…そうだな、俺はお前なら全部好きだけど、確かに、順位はあるかもな」
そうして彼は、わたしを、わたしの目を真っ直ぐに射抜いた。

「俺は『今』のお前が一番好きだよ。明日もあさっても、来年も十年後もそのあとも、そのときの『今』のお前が一番好きだ」






コーヒーの香りで目が覚めた。ひとりきりの寝具のなか。
夢か、そうかそうよね。そりゃそうだわ。薄いカーテンから差し込む陽の光とスズメの声が朝を告げている。自宅だとそんなことないのに、どうも隼人の家だと寝坊しがちだ…いけない夜更かしだけが理由ではなくて。枕に残されている金色の髪を指にからめた。

いったいわたしの深層心理はどうなっているのかしら。なんて、ほんとはわかってる。自分でも過去の自分が混ざりきれていないと感じてること、そしてこれからも新しい私は現れるだろうこと。だけど隼人はどのわたしも全部すきでいてくれて、この先も、変わった私のことも一番にしてくれる。伸びた髪とか、手足とか、…胸とか、そういうのをいちいち喜んでくれるのだ。不安に思うことなんてひとつもない、過去の自分たちと今の自分を比べる必要なんてどこにもないし、変わっていくことだって怖くない。それをわたしはわたしに知らせたかったのだ。

顔を洗ってキッチンに出ると、朝食のセッティングを終えた隼人に出迎えられた。光をまいたような部屋と、笑顔の恋人。
「はよ、せつな。メシできてるぞ」
「ありがとう」
両腕を伸ばせば、心得たようにかがんでくる。その首を引き寄せて、いつも今度こそは朝ごはんつくってあげようって思ってるのよ本当よ、でもおいしいごはん用意してくれてありがとう、おはよう、すきよ、そういう気持ちをこめてキスをした。
「ねえ隼人、わたしとイースとキュアパッション、誰がいちばんすき?」
「は?」
「ねえってば」
「んー? うーん…」
朝はすばらしい、きらきらしてるし、パンはいい匂いだし、これから日が落ちるまでずっとわたしたちはいっしょだ…
「キュアパッションかな! あのピンクの髪もふもふしたい!」
「…ん?」

「特にエンジェルのほうな。ガーターと赤いひらひらいいよなー。一回えろいことしたいんだよなー、なあなあせつな、ちょっと変身してみろよ」
「……」
「せつな?」





後日、隼人に借りていた動物DVDを返却するためにたまたまその日訪れた南瞬は語った。ノーザより恐ろしい女性なんてあらゆる世界を探しても存在しないと思っていた、あの日までは、と。


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つちまよさん東ハーレムありがとうございました
西東のように末永く つまり永遠ですねわかります


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