天使の翼

※メビウス戦後の西と東
※ドーナツカフェにて。






「ラビリンスを裏切ったやつなんかいらねー。お前は死ぬまで四ツ葉町で暮らせ」
「残念ね、わたしもう決めたの。ラビリンスを幸せでいっぱいにするのよ」
「できるわけないだろうが、やることどんだけあると思ってんだよ」
「あなたよりは把握してるつもりよ」
「プリキュアの力ももう無いくせに」
「わたしに心をくれたラブの力は、プリキュアとは無関係だったわ」

「とにかくだめだ。お前はラビリンスに来るな」
「あなたってほんとに要領悪いのね。あなたがそんなふうに言えば言うほど、わたし、ぜったい四ツ葉町には残らない、って気持ちが強くなるのに」
「…………」
「いまさら黙っても無駄よ」
「…… あの国を建て直すなんて、楽しいばっかのことじゃないぞ。終わりだって見えない、俺の孫とか曾孫とかの代になっても、ほとんど進んでないかもしれない」
「わかってる」
「そういうの全部見なかったことにして、この街で暮らしても、俺もあいつも責めない…ラビリンスが、先にお前を捨てたんだから」
「ラビリンスじゃないわ」
「同じだ。 あいつらとも、生きてるうちにまた会えるかどうかわからないぞ」
「それは、大丈夫。わたしたち、会えるかどうかとか、お互いの距離とか、そういうの、関係ないから」
「ならラビリンスと俺らのこともそう思えばいい」
「無理よ。だってあなたたちとわたしの間には、なんの絆も無いんだもの」
「だったら」
「…ウエスター。わたしの目を見て。まっすぐによ。それでもう一度、わたしのことをいらないって言ってみて」
「……おお。言えるぞ。余裕で言えるぞ。よし、そのままじっとしてろよ。
俺は、お前なんか」



(頬杖をついてなりゆきを見守っていたカオルちゃんが、グハッ、と笑う)



「イースお前…… 俺だってこんなやりかたで「口止め」したことはなかったぞ、いったいどこで覚えてきたんだ」
「覚えてきてなんかいないわよ、今覚えたのよ。だってあなたがわたしのことじっと見てるんだもの、だからいけないのよ」
「…とにかく。四ツ葉町に残れ。責任感の強さはお前のいいところだとは思う、でもそれで人生棒にふることはない」
「まだそんなこと言うわけ? 言っとくけどね、責任感じゃないからね。
いまラビリンスを捨てたら、捨てるしかないような故郷で生まれたっていう事実しか残らないのよ。だからわたし、ラビリンスを、パラレルワールドでいちばん幸せな国にするわ。あんたも似合わない茶番なんかやる程度にはわたしのこと思ってるなら、もっと精一杯がんばるべきよ」

「…わかったよ。俺の負けだ。まあ、うん、あー… お前は四ツ葉町にいたほうが幸せになれると思うんだがなあ…」
「四ツ葉町にいたって、あなたがそう思うかぎりわたしは不幸だわ」
「不幸?」
「ええ。 知らないみたいだけど、わたしを不幸にできるひとは、あらゆる世界でただひとりだけなのよ」





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開き直る東


2010/02/26


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