ホワイトデー

※メビウス戦後、四ツ葉町逗留中の西東南





◇3月13日、東と南

「で、これを手にいれてきたってわけよ」
「……ドラゴンも眠らせる麻酔薬、ねえ」
「ええ。これを朝食のカフェオレに混入して、あしたは30時間以上たっぷり眠ってもらうわ」
「そんなことしなくても隼人に言えばいいじゃないか、バレンタインデーのお返し配り歩かないでいっしょにいてくれって」
「言えるわけないじゃない…彼女でもないのに。お返し用のクッキー、がんばってすっごくたくさん焼いてたのも知ってるんだもの、100枚焼くって言ってたわ…それ廃棄してなんて、かわいそうで言えないわ」
「丸一日以上昏睡させるほうがかわいそうじゃないのかい。…ならホワイトデーにあらためて告白すれば? バレンタインには隼人からのチョコだって受け取ったんだから君がクッキーなりキャンディなり渡したっていいじゃないか」
「…またあんなこと言われたら…」
「ああ、あれは確かに… 『おお、チョコくれるのかせつな!これで100個目の大台だ!』って」
「でも、隼人はわたしのチョコ、完全に義理だって思い込んでたわけだし」
「怒りのあまりハピネスハリケーンで居間を半分ふっとばしておきながらも擁護するんだね」
「とにかく、明日はわたし、隼人を一日眠らせておくわ。99人よ? そしてそのなかのだれひとり悲しませることなんて、あいつにはできない。だけどわたし、カフェのお客さんに笑顔でクッキー渡してあげるところも、他のバイト先の女の子に配るのも、配達先の人に届けにいくのも、見たくないし考えたくもないの。たとえ彼女になれてたとしたってそんなこと絶対にさせない、…なれないんだろうけど」
「で、僕にどうしてほしいわけ」
「どうもしなくていいの。邪魔しないで、転がってる隼人のことも気にしないで、うちに押しかけてくるかもしれない女の子とわたしのやりとりに目をつぶっててくれればね。
ただでとはいわないわ、これ、美希が行きたがってたファッションショーのチケットよ。
観に行ってくるといいわ」
「……まあ、いいけど。もらえるなら」



◇3月13日、西と南

「そういうわけだ、瞬。俺は明日にかけてるんだ」
「ハートのクッキー100枚か。よく焼いたね」
「ドーナツに比べりゃ簡単だったけどな。ああいや、でも、手は抜いてないぞ」
「うん」
「バレンタインデーはチョコ渡して告白するつもりだったのに、とっさに我ながら酷いことを言ったからな。これで100個目だ、なんて」
「まあ、せつなも悪かったと思うよ。『あんたのことなんか同僚以下としか思ってないけど、こちらではそういうしきたりだから、しかたないからチョコをあげることにするわ』って、あんな言い方されちゃ、ああ返すしかなかったのもわかるよ」
「イースだからしょうがない。実際、義理以外のなんでもなかったんだろうし」
「ああまで言われて居間の半分ごとふっとばされてもかばうのかい」
「そりゃ、惚れてるからな。 で、明日は言おうとおもってな。
ハートのクッキー100枚。もらったチョコは1個だから100倍返しだな。
これをひとつ残らず、全部、せつなに渡す。99人を悲しませることになっても、いいんだ。俺は。
それで、あんななりゆきまかせじゃなくて、ちゃんと伝えるつもりだ」
「…で、僕にどうしてほしいわけ」
「どうもしなくていい。邪魔しないで、よけいなくびをつっこんだり、ひっかきまわしたり、気をきかせたつもりのおかしなことをしないでくれれば。
ただでとは言わんぞ、うまいうえに夜景が見事なレストランのベスト席を予約してきた。なかなかとれない席だぞ。バイトのつてでな。明日デートの終わりに行ってこい」
「……まあ、いいけど。とってくれたなら」



◇3月14日朝、西と東と南

「おはよう隼人。朝食できてるわ」
「おお、珍しいなせつな。 …なんか今日は幸先いいな」
「ふふ。なにか今日はいいことがあるのかしら?」
「まだわかんねーけどな。でも、いいことになるといいな」
「そう。 カフェオレいれてあげたわ、どうぞ」
「すげえ!なにそれ、サービス良すぎ! 毒とか入ってんの!?」
「毒は入ってないわよ!」
「……毒『は』?」

「…………(渋い表情で、新聞を読む姿勢で止まっている南)
……………………あのさあ…」

「なにかしら?(いったわよねなにもしないでっていったわよね邪魔したらただじゃおかないわよ!というオーラ)」
「なんだ?(頼む今日だけでいいからおとなしくしててくれ邪魔しないでくれなにもしないでくれ!というオーラ)」


「…………(本気でどうすべきか悩んでいる)」







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黒幕スキルが試される南


2010/03/14


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