やまい(西東)

※ようやくみきぶきと打ち解けたあたりのせつなさん、桃園家リビングにて



「…っと、ごめんメールきたわラブ」
「ん」
「……(無言で携帯スクロール)」
「?」
「……っっ」
「せ、せつな!?」
「……おのれサウラー、卑怯な…!(強くにぎりしめられた携帯、かすかにミシッと言う)」
「せつなイースになってるよ!なに、どうしたの、みきたんとブッキーも呼ぶ!?」
「あ、ああいえ、たいしたことではないの、ないのよ…」
「…せつな、ひとりで抱え込まないで」
「ほんとにたいしたことじゃ…」
「せつな」
「……(無言で携帯の画面を見せる)」

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title:無題
from:サウラー
本文:いま館に来ればおもしろいものが見られるぞイース
(添付ファイル:毛布が重ねられたベッドの上で顔を赤くしつつぐったりしたウエスターが冷えピタを貼られている。フレームはしには土鍋に入ったおかゆが見える)
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「…ラビリンスの人も風邪ひくんだね」
「ラビリンスは無菌だし栄養も行動も管理されているから、風邪なんてないわ。なにかのきっかけで発熱があってもこんなふうになるまえにワクチンが処方されるし…それよりあいつが風邪をひけるような複雑さを持っていたほうが驚愕よ」
「えー、じゃあはじめて風邪ひいたの!?心細いんじゃないかな、大丈夫かな」
「ラブ、あなたって人は…
心配してやることないわよ、死にはしないし、こうしてサウラーも…サウラーも…(いろいろ思い出して心配になってきた)」
「死ななくても。風邪のときってほんとにしんどいよ?(添付写真をせつなにかざす)
「………」






「よくきたねイース」
「元同僚のぶざまな姿を笑いに来ただけよ」
「ずいぶんな大荷物だね」
「ほとんど食料よ。わかってると思うけど、今日はウエスターを見物にきただけだから勧誘とかしたら帰るわよ」
「ああ。一時休戦だな、僕もそのつもりだ」



「…う」
「ほんとに弱ってるわね…(椅子がないのでベッドに座る)」
「は…あ」
「(それにしても…こうおとなしいとこいつの見た目のよさをいやでも思い知らされるわ…シャツのはだけてるのとか、汗とか…こう…)」
「……う、ん…
…イース?(弱々しく片手をせつなにのばす)」
「…ええ。イースよ(その手を両手で握りしめる)」
「戻って…きたんだな。
よかった…
また、いっしょに…」
「…ええ、いっしょよ(やばいわ、声が掠れてる、なにがかわからないけどやばいわ)」
「大丈夫だ、俺が…いるから」
「…ウエスター」
「あー…あたまいてー…」
「ウエスター…
ねえ…ウエスター…どうしてあたしを…そんなふうに、おもってくれるの」
「どうしてって…そんなの、」
「…(ベッドに倒れ込み、頭をウエスターの肩に乗せる)」
「理由なんかあるか…だから、なくなったりなんかしない…(せつなの頭をなでる)


あれ?
ほんとにイース?」
「やっと起きたわね。おはよう(ウエスターの前髪をなでる)」



「ウエスターは?」
「だるそうね。とりあえず着替えてもらってるわ、だいぶパジャマが汗吸ってたから…ポカリスエット買ってきたけど冷蔵庫に入ってたわね。おかゆや冷えピタまであったし…あなた意外と面倒見いいのね」
「あれはウエスターが買ってきた」
「…病人に自分で買いに行かせたの!?ひきこもりもたいがいにしなさいよ!」
「違う。買い物に行ったときは、僕が病人だった」
「どういう…」
「僕の看病をしててうつったんだ、あいつ」
「…」
「ばかだよな。一人にしろっていってるのに、あいつずっとそばにいたんだ」



「ほら、りんごならたべられるでしょ?食べなさい」
「イースがあーんってしてくれないと食わん」
「すっかり元気になったみたいね。帰るわ」
「ああっ、食べる、食べるから」
「…はいっ。あーん」
「…イース」
「は、はやくして」



「イースは変わったな」
「急にどうしたの」
「でもメビウス様は、変わっちまったお前でも受け入れてくださるはずだ」
「…メビウスなんて」
「お前が戻ってこないと、(ベッドに座っていたせつなを抱きしめる)」
「!」
「俺がお前と一緒にいられない」
「………あたし」
「ドーナツのない世界に戻りたくない気持ちはわかるぞ。
なら俺が覚えてやるし、まあ、ほかのことも、なんとかする」
「…あなたがいる」
「ああ、俺がいる」
「…」
「離したくないな…」
「…(鎖骨に額を擦り寄せる。そのあと、ベッドから離れる。ウエスターの腕は抵抗せずそのまま離れる)
シチューつくっておいたわ。おなかすいたら食べてね」
「イース」
「なにかをあきらめて幸福になるなんて、あたしにはもうできない…」
「…(部屋を出ていくせつなを見送る)」



「あいつもだいぶよくなったみたいだし、帰るわ。桃園に」
「ああ」
「…卑劣な罠のひとつも仕掛けてくるかとおもっていたけどほんとに帰してくれるのね」
「借りをつくったから今日は帰してあげるよ」
「あなたもあいつのこと心配してたのね」
「心配?ばかばかしい。仕事の効率が悪くなるのがのぞましくないだけだ」
「そういうことにしておくわ」




「せつなおかえりー」
「ただいま、ラブ」
「あの、あのね、今日はハンバーグにしてもらったんだよ、せつなのすきな!あとね、えっと、そうそう、ケーキ買ってこよっか!ねっ」
「あのねラブ」
「う、うん」
「行かせてくれてありがとう」
「…だって、せつなの友達なんでしょっ?あったりまえだよ」
「ともだち…かどうかは微妙だけど…そうね。
ねえラブ、前に、ダンスかプリキュアのどっちか諦めろっていったこと、あったでしょわたし」
「ん」
「わたしもね、決めた。どっちかを捨てるなんてしない。どっちも大事なんだもの、両方ゲットするわ」
「…うん!
うん、いいよせつな!
あ、でもこの場合の両方ってどうかな…どっちか一人にするってのも考えてみていいんじゃないかな、ウエスターもサウラーもイケメンだし決められない気持ちもわかるけど、彼氏二人ってのは」
「そ、そういう両方じゃないわ!」





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なげえ。
風邪ひきウエスターさんがかきたかっただけなのになぜこんなことに。
汗も拭いてあげてます。そのうちそのシーンも追加したい


2010/01/11


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