ネックレスを返しに。
目的が決まった四人はそれぞれ準備を始めた。必要な道具の確認、武器の手入れ、更なる情報収集。仕事だ仕事だと彼等が張り切るのを見つめながら、一人置いてけぼりを食らった小雪。返しに行くと言っても、自分はどうしたらいいのか。小雪は何か言いたげに何度か口を開いて、止めた。何かを聞こうにも、皆忙しそうだ。俯いて自分の膝を見つめ…ようとしたが、豊満な胸が邪魔して膝は見えなかった。今まではなかったはずのその谷間は、現在の状況を小雪にひしひしと実感させた。
マグナムを手入れしていた次元は、ふと小雪を見る。居心地の悪そうに俯く姿は、外見は小雪ではなく不二子。いつも傲慢な不二子が、こりゃあ愉快だ。抑え切れずにク、と笑いが漏れた。すると刺さる様な視線を感じ、慌てて表情を固くする。怪訝そうに自分を見る小雪から顔を逸らしつつ、何か話題をとルパンを見た。…そうだ。

「おいルパン、小雪はどうするんだ。連れて行くのか?」
「置いていくのも可哀相だろお?」
「しかし、危険ではないのか」
「私の体が傷付かないようにしてよ、ルパン」

何気なく発した次元の発言は、四人の口を動かした。見事に食い違う意見にルパンは苦笑いを零し、ちらりと小雪を見た。困り果てた表情の彼女と目が合い、取り敢えず笑んでおく。また俯いてしまった。あちゃあ。年頃の女の子は扱い辛い。

小雪は悩んだ。確かに一人で置いて行かれるのは、嫌だ。自分で言うのも何だが、知らない場所に一人ぼっちなんて、可哀想だ。連れて行ってくれてもいいのに。そんなに危険でもあるまいに、返すだけだし。連れて行って欲しい。連れてけ。しかしそんなお願いができる程、まだ小雪は四人と打ち解けてはいない。どうしよう。膝の上で拳を握り締める小雪を見て、今度は五ェ門が思考を巡らせた。どうするべきか…否、自分が悩むより聞いた方が早い。案ずるより生むが易し。そっと膝を折り、五ェ門は小雪の前に片膝をついた。俯く顔を覗き込む。突然眼前に顔が現れて小雪はびくりと肩を震わせた。あり?ん?あら?自分勝手に言い合っていた三人がその様子に気付いて振り向く。五ェ門はなるべく優しく、怖がらせない様にと、小雪に問い掛けた。

「お主は、どうしたい」
「…え、え」
「ルパンは鬼では無い。無論次元もだ。お主が一人で残るのが嫌だと言えば、同行を許すだろう…お主の意志を、言えばいい」
「わ…私は」
「ちょっと五ェ門、私は鬼だって言いたいのぉ!?」

地団駄を踏む不二子を宥めるのはルパンの役目。どうどうと両手をあげるルパンの横で、次元は静かに咥えていたマルボロを灰皿に押し付けた。一番女の扱いがなってねえと思ってたが、こりゃあ、なかなか。五ェ門の様子を見て感心する次元。一方顔を引っかかれたルパン。

じっと自分の返答を待つ五ェ門を見て、小雪は気持ちが落ち着いていくのを感じた。ちらと三人の方を見ると、黒い帽子の男と目が合った。薄く笑んで、頷かれる。好きにしろ、と言いたいのだろう。不二子たちは取り込み中の様なので窺うのは止めた。
もう一度五ェ門を見つめた。真っ直ぐに。

「私は…一緒に、行きたいです」

力強く頷いてくれた五ェ門を見て、小雪は気が抜けて思わずぽろり、涙を零した。勿論、目の前の五ェ門はギョッと目を剥く。女子を泣かせてしまった。数秒固まった後、助けを求めて振り向けど、次元は我関せずとそっとボルサリーノで顔を隠した。そして親指で背後のルパンを指す。こいつに助けてもらえ。次元はそう伝えたかったのだが、五ェ門は別の意味で捉えてしまった。こうやって宥めろ。薄く汗をかきながらも再び頷いた五ェ門は、ルパンの様に両手をあげた。どうどう…引っかかれこそしないが、此方を見てもくれない。俯いてすんすんと鼻を啜る小雪。無念。がくりと肩を落とした。

「よおし、それじゃあこうしようぜ」
「ハ!なんつう顔してやがる」

引っ掻き傷で埋まったルパンの顔。ボルサリーノを被り直した次元はそれを見て吹き出して笑った。
ぷりぷりと腹を立てたままの不二子を背にして、ルパンは五ェ門と小雪に歩み寄る。二人と視線を合わせようとしゃがみ込み、交互に目を見た。何だ何だと眉間に皺を寄せる五ェ門と、顔をあげて赤い目を見せた小雪。ニッと笑うルパン。

「小雪ちゃんのボディーガードは五ェ門にお願いしちゃいまあす」
「何!?」

ばっと立ち上がる五ェ門の顔は赤い。おいおいお前何意識してやがる、心の中で次元はそっと突っ込んだ。







20110207



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