2何だか違う?
「何事!」
次元同様悲鳴を聞き付けたのか、五ェ門も刀に手をやりながら走ってやってきた。ドアの開いた不二子の部屋を見つけ、踏み込んだ。
「朝から痴話喧嘩だろう、他所でやってくれ」
がしがしと頭を掻きながら、次元がぼやく。全裸の不二子と、ルパン。状況を理解したのか五ェ門も警戒を緩めた。「下らん」くるりと踵を返し戻ろうとするものの、ルパンの慌てた声に引き止められた。
「ちょちょ、ちょ〜っと待った!何かおかしいって!」
「何がだ」
「見てみろい」
五ェ門同様既にルパンに背を向けていた次元も、制止の声に渋々振り返る。二人の視線が自分に向いたのを確認した後、ルパンは再び不二子に向き合った。
潤んだ瞳で怯えるその姿に何とか理性を保ちながら、ルパンはじりじりと不二子を追い詰める。体に巻き付けたシーツを押さえ、不二子は後ずさる。
何時もの様子だ。二人の思考が一致した。目を合わせて呆れた様に溜め息を吐く。部屋を出ようとしたものの、聞こえた声に足を止めた。
「不ー二ー子?」
「いやっ、助けて!誰か!誰かぁ!」
流石の五ェ門も眉間に皺を寄せ、次元は振り返って目元を隠す帽子を上げた。な?と言わんばかりに眉を下げたルパンがこちらを見ている。
普段の不二子なら、だ。ルパンの股間でも蹴り上げて颯爽と去っていくくらいはするだろう。しかし今日の不二子は、ルパンに怯えきっていた。タオル一枚でも平気でいる彼女が、真っ赤になって必死にシーツを握っている。
「…こりゃ、確かに」
「不可思議なこともあるものだ」
「変だろ〜?まるで不二子じゃなーいみたい」
三人が首を傾げた。瞬間、アジトのドアが勢い良く開く音がした。バァン!
「ルパ〜ン!」
声こそ違うものの、独特のイントネーションと甘える様な口調。不二子?ひょいと部屋から顔を出したルパンの目に写ったのは、廊下をずんずん歩いてくる黒髪の少女だった。
20100830