1いつもの朝ですか






とある街の路地の奥、その古い廃墟のような事務所は、言わずと知れた大泥棒ルパン三世とそのファミリーのアジトである。
朝日の差し込む爽やかな朝、赤いジャケットの男…ルパンは、隣の部屋に眠っている筈の不二子を起こすべく(あわよくば寝込みを襲うべく)、鼻歌混じりに足取り軽く廊下へと出た。



「な…何、これ…」

一方、不二子はとっくに目覚めていた様子で、部屋に備え付けられている全身鏡の前に立っていた。
鏡に映る自分を指先でなぞる。その顔は蒼白で、信じられないとでも言いたげな表情だった。

コンコン。響くノックの後、不二子が返事をする前にドアが開いた。

「不〜二子ちゅわ〜ん、朝…おおっと」

部屋に踏み込んだルパンは、不二子を見て軽く目を見開いた。ハッとこちらを見る彼女は全裸で、美しい肢体が惜しみなく晒されている。数秒、時間が止まった。
…据え膳食わぬは男の恥。どこかで聞いたそんな諺が我に返った頭に浮かぶ。口元を楽しげに歪ませ、両手をわきわきさせながら、ルパンは不二子ににじり寄った。

「…だぁ〜めじゃないの、朝から俺を誘惑するなんて!」
「…い…」
「ん?い?」
「イヤアアアアアアア!」
「え、えええ!?」

いつも通り軽くあしらわれると思っていた矢先だ。いつになく弱々しく、目に涙を浮かべ身体を隠そうとする彼女にそそられるやら困惑するやら。とりあえず先程の諺を胸に一歩踏み出すが、悲鳴に駆け付けた相棒に目一杯頭を殴られ、その隙に据え膳はシーツを身体に纏ったのだった。




20100830



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -