電波通信






「ごめんなさい、ルパン、私のせいよ」

あの不二子が、崩れ落ちて泣いていた。
ほろ酔い状態で意気揚々とアジトに戻ったルパンと次元は、テーブルの傍らにうずくまっている不二子を見て目を丸くした。次元は煙草を口から落とし、ルパンのジャケットは片側にずれた。青ざめた表情でぼろぼろと泣き続ける不二子を落ち着かせ、三人は向き合った。
不二子が二人に見せたのは、一枚の紙切れと写真。それに写っていたのは、今回の仕事のために潜入していた小雪の、ぼろぼろになった姿。猿轡を噛まされ両手を吊るす様に縛られ、まさに拷問と言ってもおかしくない様な。紙切れには「残念だったな」と無機質な文字が一言。それはルパンたちの企みが全て明かされてしまっていることを示していた。

「私が欲しいって言ったから」

今回の仕事を持ってきたのは不二子。責任を感じている故の涙なのだろう。顔を覆って泣く不二子の背中を軽く叩いてやった後、ルパンは次元に目配せする。それに無言で頷き、次元は静かに部屋を出た。
優しい手付きでルパンは不二子の頭を撫でる。「大丈夫」力強い声に不二子は顔を上げ、ルパンを見た。

「必ず助け出してくるからね」

何時にないルパンの真剣な表情、そのバックでエンジン音がした。




次元の荒い運転で、目的地にはすぐについた。あの後直ぐに呼び出した五ェ門が一番に飛び降り、二人も続いて車から出た。眼前には見上げるほど高い門、その奥には城と言ってもいいような豪邸。

「先生、お願いしまーす」
「承知」

ルパンの声に、五ェ門は一歩前に出る。てやっ、いつもの掛け声と共に門は綺麗に崩れ落ちた。ヒュウ、次元の口笛に満足気に鞘に刀身を鞘に戻した、その瞬間に無数の銃口が五ェ門に向いた。
囲まれていた。黒いスーツのSPは、音もなく三人を包囲し、マシンガンを構えている。
あれまあ。気の抜けた声と共に両手を上げるルパンに溜め息を漏らしながら、次元も右に倣う。今にも斬りかかりそうだった五ェ門も、ルパンの視線に宥められ同じ体勢をとった。
それと同時に、カツカツと響く足音。SPが左右に割れ、三人の目の前に男が現れた。見覚えのあるその顔は、まさしくこの豪邸の当主。口元を歪ませ厭らしい笑みを浮かべる男は、降参の意を示す三人を見て高笑いを上げた。貴様の手先は使えなかったな、残念だったろう。代わりに始末してやろうか。下品な声で小雪を罵倒する男。
何も言わずそれを聞いていたルパンが、口角を上げた。上げていた手をゆっくりと下ろす。ワルサー、マグナム、斬鉄剣。それぞれがそれぞれの相棒を、ゆっくりと構えた。
雰囲気の変わった三人に、男が怯む。マシンガンは相変わらず三人に向いている。

ルパンが笑った。

「うちのだーいじな女、二人も泣かせてくれちゃってえ」
「礼をしなくちゃなあ」
「容赦はせん」

倍返し、ってヤツだ、成金野郎。ルパンのその台詞を合図に、三人が三方へ飛び出した。焦った男の声が叫ぶ。打て、殺せ。放たれる銃弾の音。大乱闘が始まった。



電波通信



「小雪!」

ルパンに横抱きにされて帰ってきた小雪を、不二子が奪い取るようにして抱き締める。泣き腫らした目は赤い。ぎゅうぎゅうと抱き締めあう二人を見て、ルパンはだらしない笑みを浮かべた。そんなルパンの背中を蹴り飛ばしながら部屋に入った次元も、その様子を見て小さく笑った。五ェ門もまた然り。「俺たちってば、本当甘いんだから」呟くルパンの言葉に誰も言い返せない。ちゃっかり持ち帰った本来の目的である宝を次元がテーブルの上に置くと、不二子が目を輝かせた。輝く宝石を摘まんでは小雪に渡していく。楽しそうに笑いながらダイヤを眺める二人に、三人が三人顔を緩めたのだった。







(女の子に甘い三人)
20100910




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