* 「あ、っあぁ、…や、あ、あ」 千歳の指が後孔を犯す。 何度体験してもこの感覚は好きにはなれない。 そしてこのぐちゅぐちゅとかいう粘っこい音も、自分の甘ったるい声も慣れなくて耳を塞ぎたくなる。 けれど俺の手は体が崩れるのを防ぐために千歳の肩を掴むのが精一杯でそんな余裕など無い。 せめてもと思って唇を噛み締めるけれど、すぐに千歳の手によって阻まれる。 「唇切れっとよ」 そう思うなら止めてくれればいいのに。 でもそれを言わないあたり俺もやはり千歳とこうすることが嫌いではないのだと思い知らされる。 唇を大きな指でほぐされ開かれて、またあのいやらしい声が漏れる。ああいやだ。 まともな学生なら授業を受けているはずの時間に、千歳の膝に跨ってこんなはしたない声を上げているなんて、千歳と出会う前の俺は考えすらしなかった。 「はあ…もう良さそうやね」 後ろの圧迫感がずるりとなくなって、ああ指が引き抜かれたのだと気づく。 はあと息を吐けたのもほんの一時だけで、すぐに腰を掴まれて千歳の足の付け根へと座らせられる。 千歳の固くなったものが俺の後ろに当てられて息が詰まった。 そのまま先っぽをぬるりと押し込まれて、指よりもきつい感覚に眉をひそめる。 と、すぐにそこに唇が落ちてくる。 対面座位は千歳の顔がいつもより近く感じてしまうから嫌いだ。 痛みとか快感に醜く歪む自分の顔が全部見られてしまう。 「う、んん…っ、あっ」 腰を掴む手は大きくて強くて俺が抗うことを許さない。 少しずつじわりじわりと千歳の大きなものが俺の中に埋められていくのが分かる。 「蔵…、力、抜いて」 耳元を舐めるように囁かれて体が震える。 片手は俺の腰を掴んだままで、もう片方の手は俺の胸の辺りを這う。 女のそこを擦るみたいに親指で潰したり爪で引っかいたりと弄ぶ。 そんなことされたら力が抜けるわけがない、そう言ってやりたいのに口から出てくるのは喘ぐ声ばかり。 後ろのほうだけでも頭がおかしくなりそうなのに、胸のほうにまで刺激を与えられて、快感で頭ががんがんしてくる。 「あ、ああっ、ち、とせぇ…っ」 縋るように名前を呼ぶと頭を撫でられた。 どうしてこう情事の際にこうやって撫でる手はこんなにも優しく感じるんだろう。 不覚にもああ本当に愛しいと感じてしまう。力が抜ける。無意識に抗っていた体が千歳を受け入れ始める。 力が抜けた隙にずるりと千歳のものが中へと入りきった。 「う、あ…っ、あ、ああ…」 「っ…は、あっ」 千歳の低い喘ぎが漏れて鼓膜を揺らし、背筋をぞくぞくと電撃が走る。 下半身が急激に熱くなってきて、やばいと思う。 入れられただけでイきそうになっているなんて悟られたくなくて、必死に目を瞑って快感を逃がそうとしてみるけれど、千歳は何故かこういうことには鋭い。すぐに気づかれてしまう。 俺の勃ちあがったものに熱い手が触れる。千歳の手。 「ぁ、ああっ、ふ、あっ」 ぐ、と強く擦られて体が大きく反った。 頭が一瞬真っ白になって、下半身の熱が解放されたのが分かる。 目を開けると千歳のにやにやとした笑顔。 「っ、…早かねえ」 ああだから悟られたくなかったのに。羞恥で頬が熱くなる。 顔を逸らそうとすると、未だ俺のものを握ったままの手とは逆の手で顎を掴まれた。 そのまま唇に舌をねじ込まれる。 「んんっ、ふ、っ」 ねっとりとしたキスに、脳みそが蕩けそうになる。 舌を吸われたり表面をなぞられたりするたびに体が悔しいくらいに反応して、快感が全身を貫くように走る。 息が上手く出来なくて自然に呼気が荒くなる。 「あ、はあっ、は、あっ」 「は…もう動いてよか…?」 俺の唇を食むように口付けながら千歳が言った。 どうせ嫌だと言ったって勝手に動き始めるくせに。 素直に頷いてやると、千歳はもう一度荒い息を吐く俺の唇へと千歳の唇を重ねた。 そしてまた反応し始めた自身を柔く揉みながら、千歳は腰を動かし始めた。 「ひ、ぁあっ、あっ」 中をずんと衝撃が走って、思わず甲高い女みたいな声が上がる。 けれどもうそれを気にしている余裕なんてない。次々に快感は襲ってくる。 内壁をずずずと擦られたり奥を強く突かれたり、痛くてでも気持ちよくて眩暈がしそうなほどだ。 体の快感を司る部分が千歳に支配されているようだと思う。 もう何か考えているのも面倒になってしまって、ただ千歳の首筋に顔を埋めた。 「はあっ、あっああっ」 「くら…、っは、あ」 千歳の余裕の無くなった瞳が見える。 その顔にまた体の奥がじんとしてしまう俺は相当千歳のことが好きみたいだ。ああ。 千歳の大きな手が俺の腰を掴む。ぐいと引き寄せ更に強く穿つ。 上下に強く揺さぶられるたびに、脳みそまでかき混ぜられる。快楽に溶かされる。 ああもう限界が近い。 「あっ、あ、や、っやぁ、いく」 「ん、…よかよ、ほら」 ぐらぐらと揺れる視界の中で、千歳が満足そうに笑う。 最後まで余裕ぶっている千歳が気に食わなくて、達する瞬間に目いっぱい後ろを締め付けてやった。 千歳の顔が歪む。小さく呻いて俺の中で千歳の熱が弾けたのが分かった。 腸の内壁がじわりと濡れる。千歳の熱がどろりどろりと流れる感覚が気持ちよくて目を閉じる。 「う、ん…」 千歳の萎えたものがゆっくりと体から抜かれていく。 あやすように背中を撫でる手にあわせながら息を整えた。 そして気づく。その手に込められた熱に。 目を開いて千歳の顔を見上げると、予想通りまだ色の残った顔。まだ満足ではないという顔。 「蔵」 この調子だとまだ離してもらえないのだろうな。 力の入らない体を布団へと倒されながら思う。 今熱を吐き出したというのに、千歳の目はまだ足りないという風にねっとりと俺の肢体を這い回る。 もう今日の授業は諦めざるをえなかった。 部活には行けるだろうか、いやきっと無理だろう。 千歳のせいだ。千歳が行かせてくれないから。でも自分も。 起き上がる気などとうになくなっている自分に気づく。 千歳のせいでどんどん駄目になる。 でもそれを心地よいと思ってしまっている自分がいる。 堕落していることが分かっているのに、それなのに千歳から離れようとしない自分がいる。 じんわりと湿った掌が頬を撫でる。 そして首筋へ。胸へ。先ほど千歳の視線が這ったところを、今度は手が撫で回していく。 染みるような穏やかな快楽。俺から気力を奪いつくしていく。 この手が俺に触れるたび、麻酔の毒を流し込むのだ。 離れようとしないのではない。離れられないのだ。この手が離れることを許さない。 千歳の大きな体が迫ってくる。俺はもはや逃げる気すらない。 毒の回ったこの体。囚われた獲物。 どうぞ好きにしてくれればいい。 こうして大人しく千歳に食われてしまうのを待つ俺は、もうどうしようもないんだろうなあと人事のように思った。 ------ どんどん千歳に感化されてだめになっていく白石とか最高ですよね。ロマンですよね。 |