祭囃子のそのあとで


亡国ドラマCDボーナストラックのちょっとあと的な感じで
(氷炎イベ前に書いたので時系列の矛盾は無視してください)



宴の後は決まって静かなものだ。
一時の夢が終わり静まり返った街。しかしそれは穏やかな平和の証。
人々が安心して眠れることがどれだけ幸福なことかをパーシヴァルは知っている。魔物や紛争に怯えて満足に眠ることすらできない国などいくつも見てきた。
だからこそこの静寂をパーシヴァルは尊いと思う。その尊さを噛み締めながら街の灯りを眺める。少し冷たい風が酔い覚ましにはちょうどよかった。

「パーシヴァル、まだこんなところにいたのか」
「…ジークフリート」

聞き慣れた声。静寂に溶けいる優しい声。
こつこつと響く足音は確実に自分の方へと向かってきたので、あえて振り向かずに傍に寄ってくるのを待つ。
期待通り彼はパーシヴァルの隣に並び寄ってきたので、そこでやっとパーシヴァルはジークフリートの方へ視線を向けた。
自分と同じように夜風に当たりに来たのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。
先程まで散々酒を煽っていたとは思えないほど涼しい顔をしていて、相変わらずの酒豪っぷりにいっそ尊敬の念すら覚えた。

「ランスロットと駄犬はどうした」
「ヴェインなら酔いつぶれたランスロットを連れて団の宿舎に戻ったよ。相変わらずランスロットは酒に弱いな」
「お前がザルすぎるんだ」

ランスロットのことだ。パーシヴァルのように途中で抜け出すということもせずに、律儀にジークフリートの酒の手ほどきとやらに付き合っていたのだろう。それで潰れるまで飲まされたというわけか。学習しない奴だ。
しかしランスロットの性格を知っていて酒に付き合わせるこいつも本当に性格が悪いな、なんて思いつつため息を吐けば、「次からは手加減してやるか」などという実にのほほんとした言葉が返ってきて(反省の色など見えやしない)、とりあえずランスロットに同情しておいた。

「今夜はもうお開きか?」
「そうだな、そろそろ俺も宿に戻るか」

などと言いつつ、ジークフリートは静かに眠る城下を眺めたまま動こうとしない。
きっと先程のパーシヴァルと同じようにこの静寂の街を慈しんでいるのだろう。ジークフリートにとっては先王から託された大切な国。感情の重さを測るのは好きではないが、多分パーシヴァルよりも重く深く思うところがあるのだろう。
その追憶に水を差すつもりはない。けれど傍にいることを厭わしく思っている様子も無さそうなので、パーシヴァルも黙ったまま街を眺める。同じ景色を見ているはずなのに、視ているものは違うであろうことが少しだけ歯痒い。
数分の沈黙。沈黙を破ったのはジークフリートの方で、満足気にゆっくりと息を吐いた後「帰るか」と一言。街の灯りに背を向けゆっくりと歩きだす。
パーシヴァルは頷いてその背中を追うが、一寸考えて問いかけた。

「お前今夜はどこに泊まるつもりだ?」
「城下の…あの昔からある古い民宿に荷を置いてある」

ジークフリートは騎士団には戻らず一人で旅を続けていると聞いている。
いつ発つつもりなのかは知らないが、こちらとて騎空団に身を置き旅をしている身だ。あまり長くフェードラッヘに滞在することもできないだろう。
次にこうしてゆっくり会うことができるのはいつになるのかすら分からない。
別にそれを寂しいだとか思うわけではない。ただ再びの別離の前に後悔の種だけは無くしておきたいだけだ。
パーシヴァルはジークフリートの背中に追いつくと、軽く腕を引いて有無を言わさぬ声で告げる。

「…なら今夜は俺もそこに泊まる。家臣共に話をつけてくるからお前は宿で待っていろ」

突然の提案(という名の強要だが)に、しかしジークフリートは驚くこともなく「構わないぞ」と返して先に一人宿へと向かう。
対してパーシヴァルは自ら申し出たにも関わらず、ジークフリートの瞳に一瞬映った情欲の瞳に体の奥がじわじわと燻るような感じがして、しばしその場から動けなかった。





「…まだ飲んでいるのか、お前は」

今夜は街に泊まると騎空挺の団長たちに告げて戻ってきた城下。
ジークフリートの言っていた宿を見つけ、自分も同じように部屋を取った。同じ部屋に押しかけても別にジークフリートが拒むとは思えなかったが、なんとなくそれは嫌だった。
必要なものは殆ど騎空挺に置いてあるから荷は少ない。少しばかりの荷物と装備の類を部屋に下ろし、寝間着の準備をして湯で体を清める。
あいつがああいう目をしていたということはつまりそういうことなのだろう。が、別に今更怖気づくようなことでもない。
パーシヴァルは準備を済ませると、さっさとジークフリートの部屋へと向かう。軽くノックをすれば気の抜けた返事が返ってきたから、遠慮なしに部屋へ入ると、そこにはソファにゆったりと腰掛けてまた酒を煽っているジークフリートの姿があった。思わず呆れた声が出る。

「いや、いい酒を土産に貰ったんでな。飲まないともったいないだろう」

言って軽くソファを叩いてパーシヴァルを呼ぶ。隣に来いということなのだろう。ここまで来て拒む気もないので素直に従ってやる。
古い民宿にしては質の良い柔らかなソファに腰を下ろすと、ジークフリートが新しいグラスに酒を注ぐ。まだ飲ませる気か、と再び呆れたがとりあえず受け取って小さく乾杯をしたあと、勧められるまま仕方なくパーシヴァルも酒を煽った。
確かに旨い酒だ。が、少々度が強いらしく、酔いがすぐに回ってしまいそうになる。せっかく覚めてきたばかりだというのに。
パーシヴァルは潰れてしまわぬようちまちまと酒を口に運びながらジークフリートのたわいない昔話に耳を傾けていたが、ふと、思い出したかのように口を開いた。

「…酒の席ならちょうどいい。聞き忘れたことがある」
「ん、なんだ」

ジークフリートは相変わらずおかしいペースで酒を煽っているが、やはり特に酔っているような様子はない。空になったグラスに更に酒を注ぎつつ、パーシヴァルの話に耳を傾ける。
少しくらい酔いが回ってくれた方が話しやすいこともあるのだが、なんて思いつつも、パーシヴァルは言葉を続けた。

「お前は先程、副団長の件で俺の運命が変わっていたかと聞いたな」

パーシヴァルの言葉にジークフリートは曖昧な笑みを浮かべて「気にしているのか」と悔いるような口調で返す。きっと今を歩むパーシヴァルを迷わせてしまうだけの余計な戯言だったとでも思っているのだろう。
しかしまあ、当のパーシヴァルにとってはそんなことはどうでもいいことだった。
確かにそれで今の自分の歩む道が変わっていたかもしれないことは否めないだろう。それ故に少しだけ動揺もした。
けれど最終的に自分が目指すものは何も変わらない。多少道が左右されても行き着く場所は同じ。それだけは分かっている。だからもうそんなもしもの話などどうでもいいことなのだ。
知りたいことはそんなことではない。そんな、少しばかり道が逸れるだけのことではなくて、

「逆に問いたい、…もしあの時俺がお前を信じられていたら、お前の運命は変わっていたか?」

それこそ、歩む道が真っ二つに別れてしまうようなこと。行き着く先がまるで変わってしまうような選択のこと。
パーシヴァルの真剣な眼差しに一瞬ジークフリートは目を丸くする。
しかし驚いたような表情を見せたのは一瞬、すぐに目元を緩めてなんでもないことのように笑った。

「はは、まだそんなことを言っているのか」

ジークフリートはどこか懐かしむような瞳で酒の入ったグラスを揺らす。
その懐古の瞳に映るのは何の色か。昏い影を落としてはいないだろうか。

「何も変わらないさ。ただ俺が一線を退く時期が早いか遅いかだっただけのこと、それだけだ。お前が責任を感じることなど何もない」

ジークフリートはいたって穏やかに言葉を紡ぐ。
その言葉に嘘はない。微塵の後悔も遺恨も感じられない。
それが逆にパーシヴァルにとっては苦しくてならなかった。そんな風に笑わないでほしかった。
そうやってお前は誰も責めずに全て許してしまうつもりなのか。何もかも。誰を恨むことも憎むこともせず。
でもパーシヴァルは許されたくなんてなかった。許せるはずがなかった。
誰よりも正しさを求めていたくせに偽りを信じて国を捨てた自分を。敬愛していた上官の真実さえ見抜けなかった愚かな自分を。
だから苦しい。許そうとするジークフリートの言葉とそれを戒める自分の心がいびつに触れ合い不快な音を立てて軋む。
ああいっそ恨んでくれたほうがきっと楽なのに。パーシヴァルは唇を噛み締めて暗い顔で俯いた。

「…俺はかつての自分の未熟さが許せないだけだ」
「あの頃はお前も若かったんだ、そう自分を責めるな」

若かったから、か。そんな言葉で片付けて納得できるのならば酷く簡単なのだけれど。
素直に頷くことはできなくて、しかし返す言葉もなくて俯く顔を上げられない。どんな顔をすればいいのかが分からない。
ジークフリートはそんなパーシヴァルを宥めるように頭を撫でて、後ろに軽くなでつけていた前髪を乱してしまう。さらりとこぼれ落ちてきた前髪が更にパーシヴァルの顔に影を落とした。
こんな情けない姿を見せたいわけじゃなかったのに。今の自分は答えが見つからなくて拗ねる子どものようだ。
しかしそんな姿さえ愛おしいというように、ジークフリートは柔らかな前髪にそっとキスを落とすと、ふ、と口元を緩ませた。

「普段のお前は凛々しいが、こうして髪を下ろすと急に幼くなって可愛らしいな」

幼いという単語も可愛らしいという到底聞き慣れない形容もなんだか慣れなくてパーシヴァルは顔を顰める。
けれど慣れないだけで不快なわけではない。だからこうやって髪を梳いてくる手も、そっと腰に回ってくる腕も振り払う気になどならない。
俯いていた顔を上げれば、穏やかな瞳をしたジークフリートと目が合う。その瞳はパーシヴァルの後悔も自責の念もすべて溶かしてしまいそうなほど優しい色をしていて、心がほどけそうになる。だめだ、許されてはいけないのに。

「パーシヴァル」

耳元で甘く名前を呼ばれれば、条件反射のように体の奥がじんと疼く。
未だ昏いままの瞳を向けるともう余計なことは考えるなとばかりに唇を塞がれた。仕方がないから目を閉じてそれを受け入れる。
アルコールの匂いだ。と思った時にはぬるい舌が口の中に入り込んでいてねっとりと腔内を撫で回していた。ゆっくりとしたキス、けれど執拗なほど舌を絡まされて、吸われる。粘膜の触れ合う感触にぞわ、と体が熱を持ち始める。
離れたと思ってもまたすぐに角度を変えて舌が侵入してくる。ぴちゃ、と唾液の絡まる音が口腔から脳に直接響いて、脳がとろとろに溶かされていくような感覚に陥る。いや、もしかしたら本当に溶かされているのかも。
酸欠になるのではないかというくらい長いキス。時折首筋やら耳やらを撫でられて体が期待にふるりと震える。浅ましい体だ、と思ってもこればかりは理性でどうこうできるものではない。仕方がないのだ。

「…酒臭いな」
「お互い様だろう」
「お前ほどじゃない」

ようやく唇が離されて、浅く呼吸を繰り返していればそのままソファに押し倒された。
寝間着の帯が解かれるのを拒みもせずにぼんやりと見つめていれば「そんなに急かすような目で見るな」と笑われた。そんなに期待したような瞳をしていたのだろうか。
そうしているうちに上衣は簡単に剥ぎ取られてしまって、あらわになった上半身にジークフリートはゆっくりと手を這わせていく。小さな傷の痕を撫でて、首から腹までを確かめるようになぞって。
最初はただそっと触れるばかりであったその手は段々といやらしい手つきに変わってきて、ついに胸の先をくるくるとくすぐり始めた。パーシヴァルの体がぴくんと跳ねる。

「、んっ」
「ここ、触られるの好きだろう?」
「別に、そんなことは…、っあ、ぅ」

肯定しようと否定しようとどうせ弄る手は止めてくれないのだろうが、精一杯の強がりで首を横に振る。
しかしやはりそんなのは無意味だったようで、今度は反対側の乳首を舌でぬるりと舐めあげて、舌先で軽く弾いた。

「っ、は…、やめ、っく…」

ぴり、と全身が痺れるような快楽。指が、手が、そこを愛撫する度にずんと下半身に熱が重く溜まっていく。
優しく指で捏ねられたかと思えばきゅうと押しつぶされて、舌でちろちろとくすぐられたかと思えばじゅると音を立てて吸われて。
柔らかかったそこは徐々に固く尖りはじめて、更に敏感に快楽を拾っていく。
反射的にジークフリートの体を押し返そうとする手には既に力が入らない。震える腕はただジークフリートの肩を掴むだけにとどまった。全身がひくひくと悶え震える。

「よしよし」

ジークフリートは散々パーシヴァルの乳首を弄り回したあと、満足そうにぽんぽんとパーシヴァルの頭を撫でる。
その、幼子にするような仕草がなんとなく気に食わなくてパーシヴァルは突き放すようにジークフリートから離れてソファから降りると、ふらふらと彼の足の間に体を収めた。
そのまま許可も取らずにさっさと前を寛げてしまってジークフリートの性器を露わにさせる。
別段拒みもせずにされるがままだったということはこのまま好きにしても構わないということなのだろう。パーシヴァルは僅かに熱を持ち始めた性器に舌を這わせた。

「おや珍しいな。奉仕するのは嫌いではなかったのか?」
「…ただの気紛れだ」

そうだ、ただの気紛れ。なんとなく子ども扱いされているような態度に苛立って、それに反抗してやりたかっただけ。それだけだ。
パーシヴァルは唾液を絡ませながらジークフリートの性器をじっくりと舐めあげていく。側面を上から下までぞろりと舐めて、吸って、それから自らの腔内に咥え込む。
口の中全てを使って扱くように愛撫してやれば、ジークフリートは時折「ん」とかいう甘い息を漏らした。

「いい子だな…パーシヴァル」

うっとりした声が耳に心地良い。また子ども扱いされているような気もしたがなんだかもうどうでもよくなってきた。
もっとその声が聞きたくてパーシヴァルはすっかり熱を溜め込んで固くなった性器に必死でしゃぶりつく。先端を舌でくちゅりと割ると先走りが滲んできてしょっぱかった。構わず飲み込んでぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら激しく上下に扱く。

「は…、そろそろ…」

ジークフリートの手に制されてパーシヴァルはゆっくりと唇を離す。先走りの混じった唾液が舌と性器の先端とを糸で繋いでいて、なんだかやたらいやらしく感じた。
ふらふらと立ち上がると、そのままジークフリートに手を引かれて今度はベッドへと押し倒される。
かろうじて身につけていた下衣も下着もあっという間に剥ぎ取られてしまって、多少荒々しく足を割り広げられた。
別にその性急さは嫌いではない。その余裕の無さそうな仕草は好きだ。そして欲望にぎらぎらと光っているその目も。

「竜殺しの英雄もベッドの上ではただの獣か」

揶揄するように笑ったけれど、ジークフリートは否定せずに「そうだな」と笑うだけだった。
足の間をゆるりと撫でて入り口を辿ってくるジークフリートの指を、しかしパーシヴァルは言葉で制す。

「…いい、慣らしてきてある」
「ほう、なかなかに準備がいいな」

ジークフリートはパーシヴァルの言葉を確かめるように少しだけそこを指で押し開いて、欲に濡れた笑みを浮かべる。
きっとジークフリートのために一人準備をしている自分の姿でも思い浮かべたのだろう。そういう事実を自分の口から暗に伝えたのだと思うと羞恥で脳が焼けそうになるが、今更だ。これだけ痴態をさらけ出して置いて、そんなの。
ジークフリートはパーシヴァルの足裏を掴み抱え上げると、勃起した性器をひくひくと震える後孔にあてがう。
唾液と先走りで滑った性器が入り口を押し広げながら潜り込んでくる感触に、パーシヴァルは思わず目を瞑った。

「っ、く…、あ、ぁ、」

前にジークフリートとこうして体を重ねたのはいつのことだったか。もう覚えていない。
久しぶりの感触に視界が明滅する。けれど体だけはしっかりその感覚を覚えていたようで、パーシヴァルのそこは容易くジークフリートの性器を飲み込んでしまった。きつくて苦しいのに、どこか満たされるような懐かしい充足感。
ジークフリートがゆるく腰を動かすだけで、この浅ましい体はきゅうきゅうと中を締め付けてそれ以上の快楽を欲する。自分で分かってしまうくらいなのだからきっとジークフリートにも気づかれてしまっているのだろう。
ならば別に隠す必要もない。パーシヴァルは今の欲望をそのまま言葉にする。

「ジーク、フリート…っはやく」

掠れた声で懇願すれば「仕方ない子だな」とまた子ども扱い。けれどそんな言葉とは裏腹にパーシヴァルを見つめる瞳は子どもに向けるそれなどではなく。
ジークフリートは一旦ゆっくり腰を引くと、またじわじわと奥まで自分の性器を押し込んでパーシヴァルの最奥をゆるりと突き上げた。奥の奥まで満たされる感触に足が勝手にがくがくと震える。
そのままもっと激しく突いてほしい。もっと中を擦って、抉って、ぐちゃぐちゃにして。
これから与えられるであろう快楽への期待に体は勝手に熱を上げていく。脳まで沸騰してしまう前に、はやく。

「っあ、!あ、っく、ん、んくっ」

再びずるりと引き抜かれたかと思うと、今度はひといきに奥までずんと突き上げられる。待ちかねた衝撃。びくんと体を跳ねさせたパーシヴァルをかき抱いて、ジークフリートはそのまま激しい律動を開始した。
容赦なんて欠片もない抽送で何度も何度も激しく奥を穿たれる。パーシヴァルは震える腕でジークフリートの首にしがみついて必死に声のボリュームを絞る。
「声、聞かせてくれないのか」律動を緩めないままジークフリートが問うけれど、無視してその肩に噛み付いた。お前、ここをどこだと思ってるんだ(他の客に聞こえてしまう)。
それでもやっぱり弱いところを擦り上げられると「ひっ」とか情けない声が漏れる。もっと聞かせろとばかりにジークフリートはそこばかりをぐりぐりと突き上げてくるものだから、必死にかぶりを振って鬱血するくらい歯をたててやる。

「は…、食いちぎる気か?」

それは上と下、どちらのことを言っているのか。まあどうでもいい。
ジークフリートはなおも律動を緩めずにパーシヴァルの体を絶頂へ押し上げていく。額や頬に甘やかすようなキスを何度も落として、その都度勃起したパーシヴァルの性器の先端をくるくると指先でいじめた。
敏感になった体はそれだけでもう達してしまいそうなほどの快楽を拾って、パーシヴァルの体が小刻みに痙攣する。

「はっ、はぁ、それ、だめ、だ、も…っ」
「いいぞ、イって」

射精を促すようにジークフリートはパーシヴァルの性器を扱きながら、ぐりぐりと何度も奥を突き上げる。
押し寄せる絶頂の波に抗うこともできず、パーシヴァルはひく、と背を反らして足先を震わせた。

「あ、あぁ、っう、あ…、っ!」

燻った熱が解放される悦楽に体が打ち震える。パーシヴァルは一瞬息を詰まらせたあと、浅い呼吸を何度も繰り返しながらしばし絶頂の余韻に浸った。
耳元でジークフリートの低く呻く声が聞こえて中がどろりと熱くなるのをどこか他人事のように感じながら、パーシヴァルはゆっくりと体を弛緩させていく。
しがみついていた腕をほどいてベッドに力なく横たわっていれば、先程の仕返しとばかりに首に噛みつかれた。そのままきつく吸われて痕を残される(こんなもの残したって所有する気などないくせに)。
ジークフリートは付けた痕を満足そうに撫でて、パーシヴァルの唇やら鎖骨やらにそっとキスを落としていく。
恋人同士でもないのにこんな風に甘やかされるのは好きではない。けれど、ジークフリートがやたら優しい瞳で愛おしそうに触れてくるものだから、好きなようにしてくれ、と言わんばかりに全身をジークフリートに委ねた。





「…部屋に戻る」

甘い熱も冷めた頃、パーシヴァルはゆっくりと起き上がってジークフリートに背を向けた。
下半身はまだ微妙に鈍く重い感じがするけれど、まあ気にするほどではない。パーシヴァルはそこらに脱ぎ捨ててある自分の寝間着を拾い集めて袖を通す。

「なんだ、ここに泊まっていかないのか?」

ジークフリートは名残惜しげに誘うけれど、パーシヴァルは首を横に振った。
別にそういう甘い時間を過ごしたくてここに来たわけじゃない。
自分はただ後悔を残したくなかっただけ。聞きたいことも聞かずに離れることを良しとしなかっただけ。
…結局それは何の解決にもならず、ただ自分の愚かさをさらけ出すだけになってしまったけれど。
情けなさに軽くため息を吐きつつ帯を結んでいれば、何もかも見透かしたかのようにジークフリートは酷く優しく、それでいてひとりごとのようにぽつりとひとこと零した。

「…そのうち、きっと許せる日がくる」

やたらと実感のこもった言葉だった。
驚いてジークフリートの方を振り向けば、また何か懐かしむような優しい目をしていた。(ああ、もしかして)先王のことを思い出しているのだろうと思った。
ジークフリートも先王を守れなかった自分を悔いたのだろうか。そんな自分を許すことができたのだろうか。
思ったけれど、口にはせずに曖昧に頷いておいた(本当に?いつか自分にもそんな節目が来るのだろうか?)。

「じゃあな、ジークフリート」
「ああ、おやすみ」

しばしの別れのつもりでそう告げたのに(明日の朝はもう会わないで発つつもりだったから)、返ってきたのは実にのんびりとした就寝前の挨拶で。
きっとすぐにまた会うことになる、そんな風に暗に言われているような気がしたから、

「…おやすみ」

それを信じてやることにして、パーシヴァルも素直にその言葉を返すのだった。











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