ハッピーエンドのそのあとに



あらすじ。
紆余曲折あって殆どの近界と玄界は友好的な関係になり諸々の問題も解決し、
出水くんはハイレインの元に仕えることになりました。
あらすじおわり。
という適当ゆるふわ設定で和やかなハイ出を目指しました。
捏造いっぱいなので細かいことは考えずに読んでください。
いちゃついてます。




アフトクラトルの朝日は地球のそれよりだいぶ紅いんだな、と、目を覚ます度にいつも思う。こっちの生活にはだいぶ慣れたけれどまだあの紅い太陽にはちょっと慣れない。
けれどこの朝日のおかげで目覚ましが要らないのはちょっと便利かな、なんて思いながら出水は体を起こした。時刻は七時を少し回ったくらい。
顔を洗って寝癖を直して、アフトクラトルの文官用の衣服に身を通す。部屋に備え付けられている全身鏡で身なりをチェック。特に変なところは無し。
本日のスケジュールを確かめながら、必要な書類をてきぱきと纏める。ハイレインは今日は終日出かける予定は無かったはずだ。
朝食はどうしようか、まだハイレインが食べていないなら一緒に食べたいな、なんて思いつつ、出水は書類を抱えて自室を出た。
すっかり慣れた長い廊下を通って、目指すのはこの屋敷で一番大きな部屋。ハイレインの執務室。
扉の前に立ってコンコンと軽くノック。短い返事が聞こえたから、出水は遠慮なく扉を開けて執務室へと足を踏み入れた。

「おはよーございまーす、ハイレインさん」
「…出水か、おはよう」

執務室の奥、大きなデスクに積んである書類に囲まれているハイレインに向かって爽やかに朝の挨拶をすると、ハイレインも難しい表情を少し崩して緩やかに微笑んだ。
長きに続いた抗争が終わり穏やかになったアフトクラトル、出水はそこで政務官としてハイレインに仕えていた。
玄界の人間が近界に身を置くことは何も珍しいことではなくなっていた。特にボーダー隊員。異文化を知るため、未だ紛争中の近界を治めるため、などの目的で玄界から離れて活動するボーダー時代の仲間を幾人も知っている。
出水はというと、特に異文化交流やら紛争解決などに興味があったわけではなかったけれど、かつて戦ったことのあるハイレインから声をかけられて、なんとなく面白そうだからという理由で付いて行って今に至る。
まさか自分が国を治める補助をするなんて考えもしなかったけれど、これはこれで新鮮なことの連続で楽しいからまあいいか、なんて思っている。
出水は抱えていた書類を自分用のデスクに積むと、先日ハイレインにサインを貰う予定だったものを数枚引き抜く(昨日はハイレインが会議だとかで貰いそびれたのだ)。
これお願いします、と声をかけようとしたところで気がついた。眉間の皺、そして目の下のクマ。ありゃこれはすごくお疲れモードだ、と出水は持っていた書類をハイレインのデスクの端に置いてハイレインの顔にそっと手を伸ばした。

「もしかしてハイレインさん徹夜?」
「そうだな…いつの間にか朝になっていたという方が正しいか」
「それを徹夜って言うんです」

全く、普段から無理はしないようにと散々言っているのにちょっと油断するとこれだ。出水はハイレインの目の下をそっと撫でながらため息を吐いた。
マザートリガーだの他の国への侵略だのを考えずに済むようになって、ハイレインの暮らしはかねてから望んでいた穏やかなものになった。
しかし平和になったとはいえ、領主としての仕事が無くなるわけはなく。むしろ平和になった分やるべきことも増えた。
元々武官よりも文官寄りの性格をしていたハイレインは国を治める事業にのめりこんだ。戦場に立つことからは完全に引退したものの、忙しい日々は終わることはないらしい。人の上に立つ者の宿命というやつだ。
「あーもー仕事熱心なのはいいけどちょっと休憩しましょ?」
「む…」
「ベッドの準備…よりも先に風呂入った方がいいかもですね」

出水はハイレインの髪に顔を寄せて、不躾にくんくんとにおいを嗅ぐ。多分この場に侍女がいたら無礼だのなんだの怒られるんだろうなあとは思いつつ、しかし今は二人っきりなのだから遠慮することもない。
ハイレインも出水の行動に不快な様子を見せることもなく、そういえば先日は風呂に入る暇が無かったな、なんて思いながら出水の持ってきた書類に目を通し始めた。
が、しかし出水はその書類をハイレインの手から奪い取って眉間の皺をつんとつついた。

「よっし!おれ風呂の準備してくるから、ハイレインさんそれまでに一区切りつけといてね!」
「湯浴みの準備など侍女に頼めば…」
「いいから!準備できたら呼びに来ますからね!」

言うだけ言うと、出水はハイレインの執務室を後にした。
今日中にサインを貰わないといけない書類はあるけれどとりあえず後回し、放っといたらいつまでも仕事にのめり込むハイレインを適度に休ませるのも自分の仕事だ。
そんな出水の後ろ姿を見守りながら、部下というより口うるさい妻を持った気分だな、なんてハイレインは苦笑して出水の言葉通りさっさと済ませられそうな書類に手を付けた。



「もー…いつも言ってるでしょ、忙しくても風呂と睡眠と食事の時間くらいは取ってって」

別に世話好きな方でもないし、ハイレインの身の回りのことなど出水が放っておいても侍女がやってくれる。
けれどなんとなく、そうなんとなくだ。なんとなく自分が放っといたら過労死するんじゃないかなこの人、という使命感みたいなものが出水にはあって、結局あれやこれやとハイレインの世話を焼くことになってしまっている。政務官の仕事には含まれない雑務。別にそれが嫌なのかというと全然そうではないのだけれど。むしろ好んでやっている方だ。

「ハイレインさんこないだも徹夜で仕事してたでしょ、ご飯も食べないで」
「ああ…あの時は時間が無くてな…」

今も、そうだ。
出水は風呂の準備を済ませると、もう少しだけ、とデスクから離れようとしないハイレインを半ば無理やり引っ張ってきて、浴室に押し込んだ。
そして当然のように出水も服を脱いでその後に続く。ハイレインがこういうお疲れモードの時は、頭やら背中を流してやるのが出水の習慣となっているのだ。
別に誰に命令されているわけでもない。これも全部出水が望んでやっていること。

「おれが目を離すとすぐ無茶するんだから…」

出水は小さく嘆息しながら、泡だった髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。ハイレインの髪は意外と柔らかでふわふわと泡が立つのはちょっと楽しい。
しかしこうやって髪を洗うのにもだいぶ慣れたけれど相変わらずこの角は邪魔だなあなんて思いつつ、一応角もごしごしと磨いてみる。意味があるのかは分からない。
もう戦場からは身を引いたのだしこの角引っこ抜いてもいいんじゃないかな、なんて呟いてみたら、さすがにやめてくれ、とちょっと怯えたような声が返ってきて出水はくすくすと笑った。

「次は背中〜、って、わ、ちょっ」

髪をかき混ぜながら何度かお湯をかけて流してやって、次は体。ボディ用のスポンジを泡立てていれば、背後から伸びてきた手に脇腹を撫でられ掴まれそのままぐいと抱き寄せられた。
ちょっとだけ驚いたけれど別に完全に予想外だったというわけではない。こうやって風呂に叩き込んだ折、二回に一回くらいはこういうやらしい手が伸びてくる。つまりはよくあることなのだ。出水はその手に逆らうことも暴れることもなく、抱き寄せられるままハイレインの膝に腰を下ろす。
ただの上司と部下の関係だったならば、こんな場所でこんな風に触られることに不快感を覚えたり拒んだりもしたのだろうけど(そもそもただの上司部下ならそんな状況を作ったりなどしない)、生憎そんな安い関係なんてとっくの昔に越えてしまっていて。拒む理由など微塵もない。
むしろ出水の方から濡れた体に背中をすり寄せると、乾いたうなじに熱い唇が触れてきて出水はひくんと体を震わせた。

「イズミ」

欲を孕んだ掠れた声に、出水の腹の奥あたりがずくりと疼く。
こうなったからにはもう手の中でふわふわと泡立てているスポンジはきっとお役御免だろう。出水は持っていたそれを足元にそっと放り投げる。
それを了承のサインと取ったのかは知らないが、ハイレインは出水の腰のタオルを剥ぎとって、露わになった太ももにゆっくりと手を這わせた。先ほど零れた泡がぬるぬると滑ってくすぐったい。ハイレインは泡を絡めながらゆるりと膝裏までを撫でると、そのまま出水の足を広げさせていく。出水はその不埒な手に自分の手を重ねて、はあ、と熱い息を吐いた。

「ん…、ハイレインさ、ん…」
「なんだ、嫌か?」

嫌なわけがない。出水はふるふると首を横に振る。
そういう関係、になっているとはいえ、ハイレインは忙しい。恋人らしい行為なんて滅多に…とまではいかないが、むしろ忙しいにしてはそれなりにしている方だとは思うが、若い出水にはやっぱり足りないと思うことも多々あったりするわけで。
けれど前述の通りハイレインは忙しいのだ。例え足りないと思っても触れたいという欲が沸いても、出水の方から求めるなんてなかなか出来ることではない。恋人である前に部下だから。
だからこうやってハイレインに求められることを嫌だと思うことなんてあるわけないのだ。
ハイレインだってそんなの分かっているくせにいちいちこうやって出水に否定させたがるのだから、ほんといい性格してるよなあ、なんて思ったりする。

「や、じゃなくて、その、…後ろからよりは前からの方がいいかなー…って」
「…随分と可愛らしいことを言うものだな」

顔が見たいから、と。
出水がそう囁くと、ハイレインが背後で小さく笑う気配がして腰を抱いていた手が緩められる。出水はのろのろと(緩慢な動作はちょっとした照れからだ)(自分で誘っておいてそういう仕草を見せる出水をハイレインは愛おしいと思う)体を反転させると、ハイレインに向き合って太ももを跨いで座った。
視線を絡めると待ちわびたように唇が重ねられて、出水はんん、と甘く喉を鳴らしてそれを受け入れる。膝の上に乗っているからいつもとはちょっと勝手の違う掬われるようなキス。
下唇を淡く食まれて、唇の合わせをゆっくりと舌でなぞられて、くすぐるような淡い刺激にいい加減出水が焦れてきたところでやっとハイレインの舌が出水の咥内に侵入してくる。待ちわびたと言わんばかりに出水の方からも舌をくっつけると、唾液の絡まるぐじゅ、という音が咥内から直接脳に響いて腰が疼いた。
舌を舌で愛撫されて、さっき散々焦らしてきたのが嘘みたいに上顎やら歯列やらをしつこいくらいに撫でられて出水の息が徐々に上がっていく。上手く息継ぎができなくてふは、と唇を離したところを追いかけられてまた塞がれる。酸素が足りなくて頭がばかになりそうだ(いやもう手遅れかも)。
キスの合間に、疼く腰をゆっくりと撫で擦られればそれだけでもう脳も瞳もとろとろになってしまって、ねえ早く、なんて思いながらハイレインの顔を見つめれば、ハイレインは小さく笑って出水の頬を撫でた。

「はぁ、は…」
「ふ…そんなに物欲しそうな顔をするな」

そんなこと言われても、と思う。
だって実際物欲しくてたまらないのだから仕方ないだろう。熱を溜め込んで固くなり始めた性器を恥ずかしげもなくハイレインの腹に擦り付ければ、それだけで気持ちよくて肩が跳ねた。
もうこんなんなっちゃってるんだから責任取ってよ。今度は半ば責めるように再びハイレインを見つめれば、ハイレインは煽られたようにごくりと喉を慣らした。
ハイレインは出水の腰をなぞってそれからまるい尻にたどり着くと、かたちを確かめるようにゆっくりと撫でる。けして肉付きがいいとは言えないそこをハイレインにやわやわと揉まれて、出水はその度に体を震わせた。でも触って欲しいのはもっと奥の方。

「う、ねえ、はやく…」
「分かっている、そんなに煽るな」

煽るに決まってるでしょ、ばか。文句を言うかわりに目の前の首筋に噛み付いてやる。
もうずっとさっきから、抱き寄せられてキスされた時から早く溶かされたくて仕方ないっていうのに。
それにハイレインの方だって。出水はちゅう、と首筋を吸って紅い痕を残してやりながらそっとハイレインの股間に手を滑らせる。ゆる、と握りこんだ性器は既にすっかり勃起していて、これ以上焦らす意味なんてお互いにないでしょ、と挑発的な笑みを浮かべてみせた。

「全く…いつからおまえはそんなに…」

そんなに、の後に続くのは、淫乱になったんだ、とか情熱的になったんだ、とかまあそんなとこだろう。正直どう思われていようが、今の自分をハイレインが気に入っているのならば評価なんてどうでもいい。
ハイレインの首に腕を回して体をぴたりとくっつければ、ハイレインは出水の尻のあたりにどろりとローションを垂らす。(こういう関係になってからすっかり風呂場に置きっぱなしになっているものだ)。
指でとろりとかき混ぜつつ体温になじませると、ひくひくと物欲しげに震える(先程ハイレインを見つめていた瞳より、もっと) 後孔に指を這わせた。
くち、と粘膜を擦られる待ちわびた感触に、出水の腰がいやらしくゆらめく。もうさっきからずっと、本能だけが先走っている。

「そういえばおまえを抱くのも随分久しぶりな気がするな」
「ん…まあ、そ、だけど…」
「構ってやれなくてすまなかった」
「別に、忙しいのは仕方ない、し…、んっ、ぁ」

ハイレインが忙しいのなんて傍で仕えている自分が一番知っている。だからそんな風に謝らないでほしい。
そりゃ構ってもらえるのなら嬉しいに決まっている。けれど別にそうしてもらえないからといって拗ねるほどもう自分は子どもではないつもりだ。
たまにこうやって、とても大切なたからもののように扱ってもらえるのならそれで、それだけで十分だとハイレインの指を中で感じながら思う。慈しむような愛撫。
久しぶりに触れるそこを傷つけぬように、ハイレインはゆっくりとかき混ぜ拡げながら指を増やしていく。しかし久しぶりとはいえ、ハイレインのかたちをすっかり覚えてしまっている体だ。触れられれば簡単にひらいていく。

「ね、もう入る、から…」
「堪え性が無いな、イズミは」
「あ、ん、だって…、んっ、んあ、あっ」

ぐじゅ、ともう一本指を増やされて、内壁を優しく撫でながら性器に見立てて緩く抽挿される。時折関節が腹の内側のしこりに触れていくのが気持ちよくて、同時に焦れったくて仕方ない。
指で優しくされるのは嫌いじゃない、たっぷり甘やかされるのも嫌じゃない。でももっと好きなのは、指よりもっと大きくて熱いもので思い切り貫かれて揺さぶられること。
だから出水は恥じらいもなく(まあ今さらそんなものが必要だとも思わないが)、一番今自分が欲しいものを言葉にする。

「は、あぁ、これほしい、挿れて…」
「…ふ、分かった。イズミ、自分でできるか?」
「ん…できる…」

後孔を満たしていた指がずるりと引きぬかれて空っぽになる感触に一抹の寂しさを感じつつ、しかしすぐにこの膨らんだ性器で満たされるのだという期待に腰の奥がじくじくと疼く。
出水はハイレインの肩に手を置いてのろのろと膝立ちになると、ハイレインの性器に手を添えてゆっくりと腰を落としていく。
傘の部分がくぷんと中に入って、後孔が押し広げられる感触に背筋にびりりと電流が走る。でもその一番太い部分が入ってしまえばあとはもう重力に身を任せるだけだ。逸る気持ちを抑えられずに、出水はそのまま一気にハイレインの性器を奥まで埋め込んだ。
全身を串刺しにされるような衝撃、けれどそれは間違いなく待ち望んでいた快楽で。出水は性器の先端からとろとろと勢いなく精液を溢れさせながら、震える体でハイレインに抱きついた。

「ぁ…ん、んん…!っは、ぁ、あ」
「…軽くイったか。大丈夫か?」
「へいき…」

宥めるように労るようにハイレインの手にぽんぽんと背中を叩かれる。なんとなくそれが小さい子どもにするみたいでちょっとだけ気に食わなかったので、きゅうと後孔を締め付けてやれば、ハイレインは低い喘ぎを漏らした。その反応が気に入ったのでまた同じことをしてみれば、今度は仕返しとばかりにハイレインに突き上げられて、今度は出水が喘ぐことになった。
久しぶりに感じるハイレインの体温、呼吸、そして中で感じる性器の脈動。もっとゆっくり堪能したいところだけれど、体は激しく貫かれる快感を待っている。
それにほぼ忘れかけていたけれどそもそも今はそんな暇など無いのだった。日はまだ昇ったばかり。仕事は山程残っている。
ハイレインもゆっくりじっくり出水の体を味わうのが好きな方だと出水は思っているのだけれど(実際時間のある時なんかは酷くねちっこい責めをされて訳が分からなくなる時が多々ある)、さすがに今はハイレインもそうはできないらしい。出水の腰を掴むと、性急に律動を開始した。

「うぁ、あっ、あ、ひあっ、や、あ、あ、ぅ」

もうこうなったらあとはハイレインにされるがままだ。出水は再びハイレインの首に抱き縋って、突き上げられる快楽に酔う。
さっきみたいにちょっと挑発的なことをしてみたり、いつもみたいに自分から腰を揺らしてハイレインの性器に奉仕めいたことをしてみたり、そんな余裕一切なくなってしまう。
一方的に貪られるだけのセックス。いつもみたいなお互いにお互いを絶頂に押し上げるようなセックスも好きだけれど、でもこうやって何も考えられないくらい滅茶苦茶にされるのも同じくらい好きだ。

「は…、イズミ、すまない」
「んぁ、っう、なに、が」
「こう急いた情事は色気が無いだろうと思ってな」

不満を零しながらもハイレインはなおも腰を打ち付けて、出水の体を絶頂へ押し上げていく。
出水的にはどっちでもいいやと思っているのだけれど、ハイレインとしてはこういうセックスは不服らしい。まあこの人基本がねちっこいからなあと快楽にとろけた頭でぼんやり思う。
これはこれで、滅多に見れないハイレインさんの必死な顔が見れて好きなのになあ。色気が無いなんて微塵も思わない。だからこうやって顔が見られる体位をねだったのに。

「はいれい、ん、さ、んんっ、ん、ふ、ぁ」

抱きつく腕を少し緩めてハイレインと視線を絡める。ああやっぱり余裕の無さそうな顔。もっと見つめていたかったのに唇を塞がれたから仕方なく目を閉じる。
上と下、両方の粘膜が同時にハイレインに犯される感触。口づけの合間に必死に呼吸をしているのに、酸素の供給が到底追いつかない。思考はどんどんぼやけていく。
とろけた脳に残るのは純粋な快楽だけ。

「今度、時間のあるときは…ゆっくり、可愛がってやる」
「んあっ!あ、あ、あ、あー…っ、!」

鼓膜を犯すようにトーンを落とした艶っぽい声と、そしてより奥まで突き上げられた衝動。出水はあっけなく絶頂を迎える。
性器からは勢いよく精液が溢れだしてハイレインの腹を汚していく。出水はそれをぼんやりと眺めながら、ハイレインの体にぎゅうと縋り付いた。まだハイレインは達していないから、きっともうひと波。
出水の予想通り、ハイレインは自分も絶頂を迎えるために、余韻に震える出水の体を再び突き上げる。敏感になっている体には目眩がしそうなほどの刺激。でもハイレインにも達してほしいから受け入れる。自分だけいきつくのは嫌だ。
そうしているうちにハイレインも低い声を漏らして、中がじんわりと熱くなって、ああこの人もいきついたのか、と出水は安堵に力を抜いてハイレインにもたれかかった。

「イズミ…」

無防備に体を預けてくる出水を酷く愛おしいとハイレインは思う。
腕の中でくたりと脱力した出水の体をそっと抱きしめて、ハイレインはあやすようにその髪を撫でた。





「…じゃあ、昼ごろになったら起こしに来ますから」

行為のあとそのまま風呂場で寝入りそうになったハイレインを叩き起こして連れてきたハイレインの私室。
さすがに徹夜のあとのセックスはハイレインからすっかりと体力を奪い去ってしまったみたいで、ハイレインは大人しくベッドに潜り込んだ。
出水はハイレインの部屋のカーテンを全て閉めきると、既にうとうとし始めているハイレインの髪をよしよしと撫でた。執務中の真面目な顔もセックス中の獣みたいな顔も好きだけれど、こういう眠たげで無防備な顔も好きだ。
なんて思いながらそっと手を離そうとすれば、毛布から這い出てきたハイレインの手に手首を掴まれた。

「イズミはこれからどうする気だ?」
「おれは朝ごはん食べて仕事に戻りますけど」
「…そうか」

そうだそもそも今は執務中なのだ。断じてセックスをするような暇などなかったはずだ。ついつい求められると応じてしまうけれど、触れられると忘れてしまうけれど。
ハイレインの手が出水の手首を解放してそっと戻っていくのがなんだか残念そうに見えて、出水はもしや、と思いついたことを言葉にしてみる。

「…もしかして添い寝してほしかったり?」
「………、そんなことは」

どうやら図星だったらしい。うわあこの人こんな可愛いこと考えたりするんだ、なんて思わずにやけてしまう。
その、なんだか酷く幼気で可愛らしい要望に応えてやりたいとは思うのだけれど、生憎仕事は待ってくれない。むしろハイレインが休む分自分が頑張らねばならないのだ。
甘やかしたい気持ちをぐっと堪えて頭を仕事モードに切り替える。そうだ仕事なんてさっさと終わらせてしまえばゆっくりいちゃつけるのだ。だからここは我慢、我慢の時だ。
だけどちょっと、ちょっとくらいなら。お疲れハイレインさんを甘やかしてもいいかな、なんて思って、

「今のとこはこれで我慢してください」

ハイレインの髪にちゅ、と軽い口づけをひとつ落とした。そして照れ隠しの代わりにわしゃわしゃと髪をかき混ぜる。
我慢、と決めた瞬間に崩れ去る決意のなんと脆いことか。しかしあのハイレインが、誰にも甘えるような言動なんて見せないあのハイレインが!そんな素振りを見せたのだから、出水の中にある母性(父性というよりは母性だと思う、女じゃないけど)みたいなものが刺激されてしまったって仕方のないことだろう。
うつ伏せになっているハイレインの表情は伺えない。でもそれでよかった(だって顔を見たらもっと甘やかしたくなってしまいそう)。

「じゃ、おやすみなさい」

名残惜しさは消せないものの、部屋の灯りを落として出水はハイレインの私室を後にした。
さっさと自分の仕事を片付けてしまおう。できればハイレインが起きてくる前に、彼の分まで出来る分は手を付けよう。お疲れモードのハイレインが今日の夜くらいはゆっくり過ごせるように。自然と歩みを早めながら出水は執務室へと向かう。
そのご褒美に今度はおれをどろどろになるまで甘やかしてね(もちろんベッドの上で)、なんて思いながら。









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