駄目な大人と振り回される子どもの見せ合いっこセックス的な感じです。
ギャグなのであまり深く考えないで下さい。
ギャグなのであまり深く考えないで下さい。
ことの始まりは一枚の写真からだった。
三輪隊の同期三人と出水の四人で遊ぶのは特に珍しいことでもなく、その日もなんとなく米屋の家に集まって宿題をしたり雑談をしたりで暇を潰していた。
ただ、その日はちょっとだけいつもと違った。飲み物を取ってくると言って台所に向かった米屋が持ってきたのはビールや酎ハイの缶で。
三輪や奈良坂は始めは遠慮していたものの、出水と米屋が二人で酔っ払っていくのを見てなんだかどうでもよくなったらしく、結局四人で酒盛りをすることになった。
だから、単純に、本当にただの酒の勢いだった。
つまみ代わりに食べていた奈良坂のチョコ菓子があっという間に無くなって、ちょうど出水の隣で三輪が最後のひとつを咥えていて。
だから、半分ちょーだい、と。特に他意もなく三輪の唇に自分の唇を近づけて、ぱき、とその半分をもらっただけ。
多分酒のせいで色々境界線があやふやになっていたんだろうか。ここまで接近するのは初めてだった、けれど三輪も特に動揺していなかったし、出水の方もやましい気持ちなんてなかった。
だから、いいショット撮れたぞ、とにやにやしながらその場面の写真を見せてくる米屋にも、馬鹿じゃねーの、といつものノリで笑って返して。そのまま四人揃って寝てしまって、次の朝には忘れてしまうくらいの些細な出来事だった。ここまでは何も問題はなかった。
「いーずみくーん」
問題は太刀川がその写真を手にしてしまった、ということから始まった。
いつものように米屋や緑川と喋りつつ興じていたランク戦。
そこににゅ、と顔を出したのは誰でもない、A級一位隊、もとい自分の所属する隊の隊長太刀川だった。
普段あまり見られぬその姿に、その場にいたC級の面々は俄にざわつく。それもそうだろうC級からしたらA級一位の隊長なんて遥か雲の上のような存在だ。
しかし出水にとっては同じ隊の隊長で、別に自分を迎えに来ることくらい珍しいことではない。だから驚くことなど何もない、ないはずなのだが。
出水は太刀川の登場に驚き、というよりも得体のしれない恐怖を感じた。
まず声色、こんな声で自分を呼ぶことのない太刀川が不自然に優しい声を発している。そもそも自分をくん付けで呼ぶこと自体がおかしい。怖い。
そして表情。笑顔を貼り付けてはいるが、その裏にある怒気が全く隠せていない。いや、出水以外は気づいていないみたいだから、隠せていることは隠せているのだろうけど。普通に怒っている時よりよっぽど怖い。
自分は何か失態をしただろうか、しかも太刀川があんな不自然な態度を取るようなこと。
「よー米屋に緑川」
「ちわーす太刀川さん、ランク戦すか?」
「や、ちょっとこいつに用があって来ただけ」
がし、と首根っこを掴まれて出水はひ、と震え上がる。
こういう怒り方をしてる時、どうするのが正解なのか分からない(だってこんな太刀川今まで見たこともない)。逃げることも一瞬考えたが、だめだ、本気の太刀川から逃げられるわけもない。
「えー太刀川さんたまにはオレとも勝負しよーよー」
「はっはっは、また今度なー」
緑川の誘いをさらりと躱すと、太刀川は出水の首をがっちりホールドして出水を引きずりながら歩き出す。
抜けだそうともがいてみたが、無駄だった。どうあっても逃す気はないらしい、出水はますます恐怖に震える。
「あ、そうそう、米屋」
抵抗する出水を難なく引きずりながら、太刀川は一度米屋たちの方へ振り向く。
そして意味深な笑みを浮かべつつ一言。
「写真、ありがとな」
ああ、なるほど。太刀川の怒りの理由が今なんとなく分かった気がした。
混乱と恐怖が少し治まったかわりにじわじわと湧いてきたのは怒りと諦め。
とりあえず米屋はランク戦で殺そう。後で絶対ぼこぼこにしよう。
そして今はもう無駄な抵抗は止めて、とりあえず太刀川の好きなようにさせておこうと出水は全て諦めた表情で引きずられるままよろよろと歩いた。
「で、だ。出水」
「…はい」
引きずられるようにして連れて来られた隊室。
着くなり乱暴にソファに突き飛ばされて、起き上がったところをまた押し倒されて、何をされるのかと思えばズボンのベルトを抜かれて手首を縛られた。
ああこのまま乱暴に犯されるのかなあ、それでいくらか太刀川の気が済むなら別にいいか、と出水は早々に諦めて力を抜く。けれど意外にも太刀川はそこから何もせずに体を起こして出水を見下ろした。
太刀川が尻ポケットから取り出したのは自分の携帯。それをのろのろといじって(最近スマホに変えたらしいがまだ慣れてないらしい)、その画面を突きつけた。
何が画面に写っているかは見なくても分かる。分かるけれど目の前に突き付けられたから仕方なしに見てやる。
太刀川の携帯の画面に大きく表示されていたのはやっぱり、先日のあの写真。例の、三輪と距離の近いツーショット。
「これの説明」
先ほどまで貼り付けていた笑顔はどこへやら、酷く不機嫌そうな顔で太刀川は尋ねた。
ここは下手に弁解するよりも、正直に話してしまったほうが得策だろう。そもそもその一場面だけ写真で見るからやましく見えるだけなのであって、自分にやましい気持ちなんてさっぱり無かったのだから。
「や、こないだ米屋んちでちょっと飲んでて…」
「それは米屋から聞いた」
「三輪のお菓子がおいしそーに見えて、つい、ちょっと、食べたくなって」
「普段からこういうことしてんのか」
「それは違くて、えっと、その時は酒で気が大きくなったっていうか…」
何なんだろうこの会話は。まるで浮気がバレて詰問される夫のような気分だ。いや実際は浮気も何もしていない、ただの戯れの写真なのだから濡れ衣もいいとこだ。
それにしても今日の太刀川には余裕が無い。こんな写真くらい適当に流してしまいそうなイメージがあったのに。なんとなくそれが気になって、思ったことを出水は単刀直入に聞いてみる。
「ていうか、太刀川さんやきもち…?」
「悪いか」
照れもせずはっきりとそう答えるのが太刀川らしいと思った。
聞いた出水の方がなんだか照れてしまう。
「わー太刀川さんでも妬くんだー、わー…」
「当たり前だろ、おまえ俺をなんだと思ってるんだ」
嫉妬する太刀川というのがなんだか新鮮な気がして、出水は今の自分の立場も忘れて感嘆の声を上げる。
それと同時に、なんだかんだ言って自分は太刀川に愛されているのだというのが分かって、なんだかくすぐったいような気持ちになった。
太刀川の顔は先ほどと同じ、不機嫌なまま変わらない。でもそれを受け取る側の出水の気持ちが和らいでしまったから、その顔もなんだか拗ねたようで可愛らしく見えてくる。
先程よりは心に余裕が生まれて、出水はゆっくり諭すように太刀川の誤解に答えていく。
「安心してよ太刀川さん、おれやましいことなんて何にもしてないってば」
「ふーん?この写真は?」
「だからちょっと酒の勢いでいつもより距離が近くなっちゃっただけで、それ以外何にもしてないです」
「邪な気持ちは」
「ないです。おれが好きなのは太刀川さんだけです」
言ってじっと太刀川の目を見つめる。
何も嘘は言っていないし、それが自分の正直な気持ちだ。だからそれが伝わるように視線を逸らさず見つめ続ける。
見つめ合うこと数秒、観念したように太刀川は溜め息を吐いて目を閉じた。
「…ま、おまえがそんなあちこち手を出せるほど器用な奴とも思えないしな」
「当たり前でしょ」
やっと理解ってもらえた、出水は自分の全身からふっと力が抜けるのを感じる。
太刀川が不機嫌なのも嫌だが、それよりも変な風に誤解されたままの方がもっと嫌だった。出水が好きなのは太刀川だけなのに、そういうことを許すのは太刀川だけなのに。
だから、それをちゃんと太刀川に理解してほしかったのだ。言わなきゃ分からないのなら何度でも言うから。
「太刀川さん」
「なに」
「好きです」
「ん」
出水の告白の言葉ごと飲み込むように、太刀川は出水の唇を奪った。
ちゅ、と音を立てて唇が離れた後に、出水がふにゃ、と小さく笑うと、太刀川もようやく柔らかい笑みを見せた。
さてこれで誤解も解けてめでたしめでたし、といきたいところだったがどうやら物事は出水に優しく進んでくれはしないようで。
「けどまあ、それとこれとは別にして、だ」
出水が安心したのもつかの間、太刀川はにい、と今度は悪い笑みを浮かべる。
ああその顔は知ってる。ろくなことを考えていない時の顔。
いったい何を言い出すのかと半ば諦めた気持ちで太刀川の二の句を待っていれば、
「やっぱり何かお仕置き的なものは必要だよな」
などと典型的なセリフを発してきて、出水は深く溜め息を吐きたくなった。
嘘だ、お仕置きと題して変なことをしたいだけだこの人は。だってもうさっきのことは忘れたとばかりににこにこ、いや、にやにやした顔をしているし。
太刀川は開いていた画像を閉じると、そのまま誰かに電話をかけて話しだした。
「もしもし、迅か。ああ、今本部か、ならちょうどいい。今すぐ三輪連れて俺の隊室まで来い、さっき見かけたしまだどっかその辺にいるだろ。できるだけ早く来いよ、じゃ」
言うだけ言って、太刀川はさっさと電話を切った。
どうやら電話の相手は迅らしい。会話の内容的に三輪も連れてこられるようだ。
なんだか非常に嫌な予感がする。写真の件は先ほど解決したはずなのに、三輪を呼びつけるというところに嫌な臭いを感じる。
「…迅さんと三輪呼んでいったい何する気なんですか」
「さーてなんだろなー」
言いながら太刀川は鼻歌交じりで携帯をしまった。
ああだめだ、何考えてるかは分からないけれど絶対ろくなことじゃないのだけは分かる。
手首の拘束も解かれないままだし、今の出水にできるのはただ力なくソファに横たわって待つことだけだった。
「やほー来たよ太刀川さん」
「…何の用ですか」
数分もしないうちに呼ばれた二人はやってきた。
いつものようにへらりと笑みを浮かべた迅、と、その後ろで警戒心剥き出しの三輪の姿。
三輪は太刀川のことをあまり好いてはいないから(まあ気持ちはわかる)、にこにこと視線を向けてくる太刀川からふいと顔を逸らす。
と、逸らした視線の先には、ソファの上に横たわっている人物、即ち出水がいて。
そこに出水がいることもそうだが、その状態、手首を縛られて横たわっているその現状が把握できずに三輪はきょとんとして首を傾げた。
「…出水?」
「あーあはは…あんま見ないで…」
この情けない格好を見られるのが恥ずかしくて、出水は腕で顔を覆った。
三輪は状況がさっぱり理解できないという顔をしているが無理もない、出水だって理解できていない。
三輪と同じく呼び出された迅は…と思ったが、そういえばあの人にはサイドエフェクトがあるんだった。太刀川が何を企んでるのかとかやっぱり見えているんだろうか。
「太刀川さん、秀次が困ってるから用件教えてあげてよ」
「あーそうだな」
迅の語り口はやはり何か知ってるようで、ああそれ便利だなーなんて出水は羨ましく思う。
自分にも迅のようなサイドエフェクトがあれば太刀川の無茶苦茶な要求やら何やらから逃げやすくなるんだろうか、と一瞬考えたけれど、無理だ。例え未来が見えていてもあの太刀川の行動を変えられる自信なんて無い。結局出水が太刀川を好きである限り、太刀川が出水に執着する限り、太刀川から逃れることなんてできないのだ。
考えが一周して余計に疲れた出水を見下ろしながら、太刀川はまたにやりと笑う。どう考えても悪いことしか考えていない顔。ああ、その企みを聞きたいような聞きたくないような。
しかし、その言葉は出水の意志とは無関係に発せられて。
「今から出水を犯すからここでおまえらに見ててもらう」
「っはあ!?」
誰より驚いて声を上げたのは出水だった。三輪も多少目を丸くして驚いていたが、この場で誰よりも驚いていたのは間違いなく出水だった。
聞いてない、そんなの全然聞いてない。ろくなことにならないのは多少予想出来ていたが、さすがに意味が分からなくてふざけんなだの何だの騒いでいたら、うるさい、と太刀川の手で口を塞がれてしまった。どんなに文句を言ってももごもごと言葉にならない声になるばかり。
「わー太刀川さんてそんな性癖あったの」
「うるせー、おまえどうせ知ってて来たんだろ」
「まあ電話で聞いた時点で何が起こるかは見えてたけどね」
じゃあその時点で断っとけよ、とも思ったが迅のことだ、きっと何か考えがあってここに来たのだろう。
もしかしたらこの悪魔の無茶苦茶な言動を止めてくれる救世主かもしれない。僅かな希望を持ちながら、太刀川と迅の会話の行く末を見守る。
「つーかおまえは見てないのかこの写真」
太刀川が携帯を取り出して、例の写真を迅に見せつける。
出水は一瞬ぎくりとしたが、迅の返答は至ってのんびりとしたものだった。
「いや、見たし知ってるけど」
「三輪に対して怒ったりしてないのか」
「別にこんなの可愛いもんでしょ」
「ふーん?俺はてっきりおまえも三輪にお仕置きするつもりで話に乗ったのかと思ったんだが」
言って太刀川は三輪に視線を向ける。太刀川の言葉と視線に、迅の後ろにいた三輪がびくりと小さく体を震わせた。
けれど迅は軽く笑って首を横に振る。どうやら迅にはそんな気はさらさらないらしい。
それならこの人の暴挙も止めてくれるだろうか。出水は期待に満ちた目で迅を見上げる、が。
「いや?おれはただ秀次に他の人のセックス見せて色々お勉強させようかなーって思っただけだよ」
出水の僅かな希望はあっさりと断たれた。救世主どころか悪魔がもう一人増えただけだった。
もはやもがもがと文句を言う気力も無くなってがっくりと項垂れる。それを観念したと見たのか太刀川はそっと手をどけてまた悪い笑みを浮かべた。
そんな理由で太刀川の誘いに乗ったのかこの人は。太刀川も相当意地が悪いと思ったが迅も大概だと思った。
このままどうしようもない大人二人の遊び道具にされるなんて冗談ではない。冗談ではないのだが手首をがっちりと縛られた状態では何も出来ない。出水の顔からどんどん血の気が引いていく。
「さーて覚悟は決まったか出水ー?」
「あはは、出水も災難だねえ」
ぎらぎらと目を輝かせて今にも襲いかかろうとする太刀川と、すっかり傍観モードの迅。
「み、三輪…」
だめだ、ここには馬鹿しかいない。
せめてもの救いを求めて、馬鹿な大人二人の会話を聞いているのかいないのかよく分からない三輪に助けを求めてみる。
が、しかし三輪は至極真面目な顔をして出水の期待をバッサリと切る答えを返した。
「迅の思惑に乗るのは癪だが…確かに自分たち以外の男同士の性行為には少し興味がある」
だめだ、三輪も馬鹿だった。真面目な分余計に質の悪い馬鹿だった。
誰一人として味方のいないこの状況。出水はなんだか涙が出そうになった。
「じゃあ秀次はおれと一緒にこっちで座って見てよっか」
「うるさい寄るな」
三輪に寄り添って座ろうとする迅をぐいと押しやって、三輪は壁際に腰を下ろした。
ああ本気で見物する気だこいつ、出水は涙目で三輪を睨みながら思う。いつもと変わらぬ仏頂面に見えて、出水を見つめる瞳は興味の色に輝いている。
普段米屋とかと盛り上がる猥談にはちっとも乗ってこないくせに。三輪のえろいものに関する線引きが本気で分からないと出水は思った。
「迅、鍵は閉めたか?」
「閉めたよ」
「誰か来そうな感じはあるか?」
「んーあと二時間くらいは誰も来ないっておれのサイドエフェクトが」
「よし、なら邪魔は入らないな」
そんなことにサイドエフェクト使ってんじゃねえと突っ込みたくなったが、もはやそんな余裕すらあるわけがなく。
「じゃ、覚悟しろ」
今の出水に出来るのは、ただ為す術無く太刀川の企みの餌食となることだけだった。
「ん、う、はあっ、ん、ん」
閉めきった部屋に、甘い嬌声とぐちゅぐちゅという水音が響く。
部屋を埋め尽くすそのいやらしい声、音。それら全部が自分の体から発せられているのかと思うと出水は耳を塞ぎたくなった。
もちろん縛られているからそんな真似できないし、出来たとしてもそれらを遮断できるのは自分だけ。結局ここにいる他の人間には聞こえてしまうから意味などないのだけれど。
「出水、声我慢すんなって」
そんなの我慢するに決まっている。必死で我慢して、それでも漏れる声すら嫌なのに太刀川は無茶なことを言う。
ぎゅうと唇を噛み締めていれば、それを嘲笑うかのように太刀川の指は出水の弱いところを執拗に擦り上げてきて。噤んでいたはずの唇はすぐにだらしなく開かれる。
「ほら、ここ弱いだろ」
「っひ、あ、あっ、そこ、や、あ」
一際高い声が室内に響いて、出水はかああと頬を朱に染めた。
理性は快感に抗おうと必死なのに、体は簡単にそれを受け入れてその悦楽に喉が鳴る。いくら我慢したってどうしようもないじゃないかこんなの。
出水が甘い声を上げる度に太刀川は楽しげに笑みを浮かべる。こっちは全然楽しくないのに。今もこんなどうしようもない声を三輪たちに聞かれているかと思うと気が気じゃない。
「はー…、挿れるぞ」
ぐずぐずになったそこから指が引きぬかれて太刀川の勃起したものが押し当てられる。
挿れるならさっさと挿れてほしい。もう早くこんなの終わらせたい。
もう半ば諦めたように覚悟を決めてソファに顔を押し付ける、と、頬を掴まれて無理やり三輪たちの方を向かされた。
「隠すな、挿れられる時の顔しっかり見ててもらえよー」
「えっ、ひ、や、やだっ、やだぁ、」
そんなの見せられるわけがない、こんな姿や声を晒していることすら頭がどうにかなりそうなほど恥ずかしいのに。
必死で顔を逸らそうとするが、太刀川の力には勝てない。
それどころか、太刀川のものが後孔をこじ開けて入ってくる感触に、抵抗する力はどんどん抜けていくばかりで。
「っあ、ああ、や、やだ、あ」
口では嫌だと言ってみても、体は快感に正直なように既に作り変えられてしまっていて。
太刀川の性器が内壁を擦って奥へ入ってくる感触に、じわじわと溶けるような快楽を覚える。
きっと隠しきれていない。きっと自分の顔は快感に溶けた酷いものになってしまっている。
顔を三輪の方に向けさせられているせいでどうしても三輪の表情も目に入る。紅潮した顔。仏頂面は既に崩れてしまっていて、熱に蕩けたような顔で出水をじっと見つめている。
なんで友人にこんな痴態を見られなくちゃいけないんだ最悪だこんなの。
羞恥と苛立ちと快感が全部ごっちゃになって、もう理性に限界が来てしまって、出水はぼろぼろと涙をこぼし始めた。
「っひ、う、うっ、ば、かぁ、」
「おいおい泣くなよ、強姦してるみたいだろ」
「いやー似たようなことはしてると思うけどねおれは」
「えっ、そう?」
「さすがにさっきのはちょっとかわいそうだよ」
迅の言葉に太刀川はきょとんと意外そうな顔をする。自覚が無かったのかこの馬鹿は。
一度溢れた涙は留まることを知らず、次から次へと零れて流れていく。羞恥が限界を超えてもう泣きじゃくることしかできない。
やらしい姿だけじゃなく、こんな子どもみたいな泣き顔まで晒すことになるなんて本当に酷すぎる。どれだけ自分を辱めれば気が済むんだこの人は。
出水はぐすぐすとしゃくりあげながら、間の抜けた太刀川の顔を睨みつける。
「あーちょっとやりすぎた…?」
やっと事の重大さに気づいたらしい太刀川が、突き上げるのを止めて涙でぐしゃぐしゃの出水の頬を撫でようとする。
が、今はそんな優しい手を受け入れたくなくて、出水は思い切り顔を背けた。
それが割とショックだったのか、思わず太刀川は出水の手首を縛り上げているベルトへ手を伸ばす。
カチャカチャと頭上で音がして、手首を拘束していた感触がようやくなくなって、出水はぎゅ、と拳を握った。
「っんの…ばか!」
その拳を、そのまま太刀川の頭に振り下ろす。
腕は痺れているし後孔には太刀川のものを受け入れているしで手にはさっぱり力が入らない。でも殴らずにはいられなかった。
散々辱めてくれやがって。こんなものじゃ全然足りやしない。
けれどその怒りをぶつける体力すら今は殆ど残っていなくて。数発殴ったところでくたりと出水の腕は崩れ落ちる。
「も、太刀川さんなんか、きらい…」
言ってまた、ぐす、と鼻を鳴らす。
先ほど好きと言ったばかりの唇で今度は嫌いと言うのもどうかと思うが、今はもうそれ以外の言葉が出てこない。
嫌い、嫌いだ、こんな意地の悪いことばかりする太刀川なんて大嫌いだ。
「出水、ごめんって」
「きらい」
「嫌いはちょっと傷つくな」
「っあ、う、やだ、やだって…」
未だぼろぼろと涙を流す出水をあやすように、太刀川の唇が顔中に降ってくる。
それと同時に、太刀川は緩やかに律動を開始した。攻め立てるような激しいものではなく、出水をゆるゆると快楽に導くような動き。
「出水が可愛いからついいじめたくなった、ごめんな」
「っう、ひどい、たちかわ、さん」
「もういじめないって」
「んあ、あ、ばか、ばか…」
キスをされながら揺さぶられると、気持ちよさと愛しさでどうしようもなくなる。
ずるいと思った。まだ許していないのに、体は簡単に太刀川を受け入れてぐんぐん熱を上げていく。
絡まる舌も抱きしめてくる腕も全部熱くて、思考がどろどろに溶かされていくようだ。ああ自分が何に怒っていたのかも分からなくなってきてしまう。本当にずるい。
「出水かわいい」
「あ、ふあ、あっ、あ」
「な、嫌いじゃなくて好きって言って」
「そん、なの、っひ、あ」
散々あんなことしておいて好きと言えだなんて勝手だ。
でももう熱くて、熱くて何も分からない。怒りも羞恥も全部快楽に飲まれてしまったみたいで、体が太刀川を求めて勝手に動く。早く最後まで行き着きたくて。
震える腕で無意識に太刀川の体に抱きつけば、太刀川の手が出水の勃起した性器を包んでゆるゆると扱く。ああもう絶頂が近い。
「あ、あぁ、たちかわ、さ、」
「出水…」
「す、き…、っあ、あ…」
膨大な快感の前では理性なんて脆いものだ。結局出水は自分が何を口走ったかも分からぬまま太刀川の手の中で果てた。
ぼやけた視界に満足気な太刀川の顔が映る。くそ、だからまだ許していないっていうのに。
でも今はもうそんなこと考える余力なんて残っていなくて。もうどうでもいい、難しいことは後で考えればいいや、と早々に考えることを放棄してくったりと力を抜いた。
それはどうしようもなく非現実的な光景に見えた。
普段見ることのない、友人のあられもない姿、表情、声。立ち込める性のにおい。
興味本位で、見ると言ってしまったのは三輪だが、途中から逃げ出したい気持ちでいっぱいになっていた。
でも体は動かない。目の前で繰り広げられる淫らな光景に釘付けになって、立ち上がることすらできない。
そうこうしているうちに出水が果てたのか、二人の動きが緩やかに終了した。いま、今のうちに、立って、逃げてしまおう、そう思ったのに。
「しゅーじ」
いつの間にか横にぴたりと体を寄せてきていた迅が、三輪の耳元で囁く。
びく、と体を震わせて思わず離れようとしたが、ぎゅ、と手首を掴まれてしまってそれは叶わなかった。
「な、なんだ」
「勃ってる」
目の前の光景に夢中で気付かなかった。言われて初めて気づいて三輪はかっと頬を赤らめる。
ますますここから逃げたくなって、迅の手を振り払おうとしたけれど逆にそのまま抱き寄せられて、壁に押し付けられるかたちになった。
三輪の耳に何度も口付けるようにしながら、迅は三輪の羞恥を煽るように囁く。
「友達のえっちなところ見て興奮しちゃった?やらしーね秀次」
「ち、ちがっ、これは、別に」
「刺激強すぎた?秀次はえっちなビデオとかも全然見ないもんな」
言いながら迅は三輪の下肢をズボンの上からゆるゆると撫でる。
既に限界まで勃起しているそこは、そんな柔い刺激にも敏感に反応してしまって三輪の体からどんどん力が抜けていく。
逃れようと必死にもがくけれど、ただでさえ迅の力には勝てないのに今の状態ではどうすることもできない。
そうこうしているうちに迅は片手でさっさと三輪のベルトを外して、三輪の性器に直接触れた。
熱を溜め込んで固く勃ち上がった性器はそれだけでも暴発してしまいそうで。三輪はがくがくと体を震わせる。
「っあ、迅、なに、する気、」
「何って、このままじゃきついだろうから気持よくしてあげるだけだよ」
「い、いらない、やめろっ、ばか、っんん」
未だ抵抗の言葉を発する口をキスで塞いでしまって、その隙に三輪のズボンを下着ごと取り去ってしまう。
このまま三輪だけを絶頂に導くのは至極簡単なのだろうけれど、それだけでは物足りない。
だって迅の方も既に自分の性器が熱くてたまらないのだ。正直、迅としては太刀川と出水の性行為はそこまで興味が無くて真面目に見ていなかったけれど、それを凝視する三輪の様子を見ているのは面白くて、そして非常に迅の興奮を煽るものだったから。
出水の一挙一動に頬を赤らめたり切なそうに両足を擦らせたりする三輪の様子をずっと隣で見ていて、このまま何もせずにいられようか。
「太刀川さんローション貸して」
「おー、やるから買って返せよ」
「はいはい」
太刀川の放ったローションを片手でキャッチして、そのまま三輪の下肢にたっぷりと垂らす。
三輪は迅を引き剥がそうともがくけれど、もうその手に力なんて残っていないし瞳は既に熱に蕩けてしまっていて。三輪は認めないだろうが迅からすればもう手遅れだ。
迅は三輪の太ももを押し開いて後孔へ指を滑らせる。ローションを絡めた指で軽くその入口をつつけば、そこは簡単に迅の指を受け入れた。
「秀次いつもよりここ柔らかいな、やっぱり見てて興奮した?」
「ちが、あ、あっ、う」
「だってほら、もうぐずぐず」
二本三本と指を増やしても、三輪の後孔は貪欲に迅の指を飲み込んでいく。
いくら違うと言ったって、もう三輪の体は快楽を受け入れる準備ができてしまっているのだ。
ほんの少しの理性がそれを否定するけれど、迅の指が内壁を擦る度に体はもっと強い快感を欲しがって、思考はどんどん溶けていって。
「ふ、あ、あ…、じ、ん…」
最終的には自分からだらしなく足を開いて、三輪の方から迅を求めた。
荒く乱れた呼吸も、熱に蕩けた瞳も、その全てが自分を求めているのかと思うと迅はごくりと喉を鳴らした。
「ほら秀次、こっち」
迅は上着を脱ぎ捨て自らの前を寛げると、三輪を壁から引き剥がし抱き寄せ、代わりに自分が壁に背を付ける。
そのまま三輪の体を自分の太ももの上に跨がらせると、迅の勃起したものがひたりと三輪の後孔に触れて、三輪はびくんと肩を震わせた。
「自分で挿れられる?無理?」
「む、り…」
「じゃあおれが手伝ってあげるから、おいで」
熱に溶かされた今の思考では、もう逃げるなんて選択肢は見えていない。
ただ、目の前に提示された快楽に手を伸ばすだけ。
三輪は迅の首に抱きつき身を寄せる。迅の手が三輪の腰に触れてゆっくりとそのまま下ろされていく。
迅のものが、物欲しげに震えるそこにじわじわと埋め込まれていく感覚、三輪はぎゅっと目を閉じた。
「出水、おいこら出水」
「ん、あ…?」
「いつまでぼーっとしてんだ見てみろ」
むにむにと頬を摘まれる感触に、出水は浅い眠りから引き上げられた。快楽の余韻で未だまともに働かない頭と体を動かして太刀川を見上げると、あっち、と目線で壁際を示される。
ぼーっとしてたのは誰のせいだよ、と突っ込もうと思ったが、とりあえず太刀川に示されるまま視線をそちらに向ける。と、
「…ぅえ!?」
向けた先には三輪の背中、はいいのだが問題はその下部。いつの間にか三輪の下半身の衣服は既に剥ぎ取られていて、迅と思しき人物(顔は見えないがここにそれ以外の人物なんていないだろう)の上に跨っていて。
全身をびくびく震わせながら迅の性器を飲み込んでいく三輪の姿がそこにはあった。
「い、ずみ…!?」
出水の声に驚き、三輪は思わず我に返って後ろを振り向く。が、時既に遅し。三輪の後孔は迅のものを奥まで受け入れてしまっていた後で。
それに今更一瞬理性を取り戻したところでどうにもならない。迅が軽く突き上げるだけで、思考は一気に快楽一色に染め上げられる。
「あはは、秀次の中ぎゅうってなった、見られても興奮するんだな秀次」
「ち、が、あ、っう」
快楽に蕩けた顔を出水に見られるのが嫌で、三輪は再び迅の首に縋りついた。声を聞かれるのも嫌で、がぶ、と迅の肩に噛み付いて声を押し殺す。
それでもなお聞こえてくる結合部からの水音と、苦しげででも色を帯びた吐息が出水の心をくすぐるように煽った。
けれどやはり視覚的には物足りない。見えるのは震える三輪の背中とやらしく微笑む迅の顔だけ。それは太刀川も同様に感じていたようで、迅に向かって野次を飛ばす。
「おい迅、それじゃ全然見えねーだろ」
「だって太刀川さんに秀次のやらしい姿見せるの嫌だし」
「俺は出水のえろいところ全部見せたぞ」
「それ太刀川さんが勝手にしたことでしょ」
全くもってそのとおりだ。呆けた頭がようやく回復してきて出水はうんうんと頷く。
迅や三輪は見せろなんて強要していないし、出水だってもちろんそんなこと望むはずもなく。全部太刀川が勝手にしたことだ。そんな風に威張って言われるとなんだか腹が立つ。
しかし、だ。出水の視線は再び三輪の背中へ向けられる。あれだけ情熱的な瞳で人の行為を見つめておいて、自分だけ隠すというのはずるい、というか許せない。
太刀川に組み敷かれたまま、掠れた喉で出水は恨みのこもった声を上げる。
「三輪ぁ…、てめー人のえろい姿散々見物しといて、自分は見せませんってのはずりーよな…?」
別に三輪の痴態が見たいとかそういうわけではないが、これじゃ不公平だと思うし。
言ってしまえば道連れだ。自分が味わった羞恥を三輪にも味わわせてやりたい。
出水の言葉に三輪の肩がびくりと震える。迅は意味深な笑みを浮かべる。
「だってさ、秀次。仕方ないからちょっとサービスしようか」
「え、あっ、な、なに」
迅は先ほど脱ぎ捨てた上着を床に敷くと、その上に三輪の体を押し倒して横たわらせた。
掴むものを失った三輪の腕は一瞬宙を彷徨ったが、見つめる二人の視線に気づくと、ばっと顔を覆い隠す。
しかしその一瞬の間に出水の目に映ったのは快楽に蕩けた三輪の顔。普段の三輪からは想像もできないようなその表情に、出水は思わず息を飲んだ。
「じーんー、三輪の奴顔隠してるぞ」
「えーこのくらいで勘弁してよ。秀次も嫌がってるし、なあ?」
「っこ、ろす…!」
太刀川の煽りと迅の投げかけた言葉に、三輪は精一杯の罵倒を返す。
しかし迅はそんなもの意にも介さず、三輪の足を担ぎあげて震える体を更に追い詰めるように三輪の体を突き上げる。
その度に噛み殺せない喘ぎ声が漏れて、口の端からは涎が垂れて、勃起した三輪の性器がいやらしく揺れて。あの三輪秀次のこんな姿を見ることになるなんて、と出水は今更ながらその非現実感にくらくらした。
「秀次さっきからイくの我慢してる?別に我慢しなくていいよ」
先ほどから三輪の中は切なげに何度も収縮を繰り返すのに、なかなか絶頂を迎えようとしない三輪に疑問を感じて、迅は優しく問いかける。
けれど三輪は顔を覆ったまま強く首を横に振った。
「あ、あっ、だって、いや、だ、っ」
「何がいや?見られてるのが恥ずかしい?」
「っ、う、うう」
迅が再度あやすように問いかけると、三輪は今度はこくこくと首を縦に振る。
まあ確かに、このまま三輪の達する顔を二人に晒すのは迅としても望むものではない。
迅は三輪の頬にそっと手を伸ばすと、太刀川たちの方を向いてふ、と小さく笑った。
「というわけで悪いねお二人さん、秀次の一番いい顔はおれだけのだから」
言って三輪をゆっくりと抱き起こすと、先ほどと同じように再び自分の上に跨がらせる。
力の入らない腕で迅の首に抱きついてきたのを確認すると、緩やかに律動を開始した。
でもその緩慢な動きはすぐに、三輪を絶頂に至らせるための激しいものに変わる。
「しゅーじ、ほらイっていいよ」
「っあ、う、じ、ん…、っ」
耳を柔く食みながら、三輪の性器をゆるゆると扱く。
もうそれだけで、既に限界だった体は絶頂を迎えてしまって。三輪は迅の体にぎゅうと抱きついて、何度か大きく体を震わせた。
そんな三輪を労るように迅は優しくキスをして、それから自分も三輪の中に精を吐き出した。
「よしよし、いつもより疲れた?」
「…うるさい、ばか」
「うん、ごめん」
不貞腐れたようにそう呟く三輪を宥めるように、迅は何度もキスをする。
その、優しいキスを、迅の行為を、素直に受け入れる三輪がなんだか意外で。素直に甘やかされる三輪というのが非常に貴重な気がして、なんだかんだ言って三輪もどうしようもなく迅が好きなんだろうな、と出水はぼんやり思った。
「ちっ、迅は甘いな」
「や、太刀川さんがクズなだけです」
不満そうに舌を鳴らす太刀川を、出水は溜め息混じりでたしなめる。あっちが甘いのではなく、こっちがおかしいだけだ。後半反省したとはいえ、恋人をあんな風に扱う太刀川がどうしようもないのは明白なので、出水はオブラートに包まずそのまま言葉にした。
それにしてもなんだか酷く甘ったるい恋人のやり取りを見せつけられた気がする。言うなれば洋画のラブシーンのような。
その役者が一人は自分の同級生で一人は先輩で、というのも酷く妙な感じだ。しかもその同級生は普段は笑顔すら見せない仏頂面。
その三輪があんな顔をするのだから、愛の力というのはすごいんだなあとか出水はしみじみ思った。そう、あんな顔を…、一瞬先ほどの三輪の顔が脳裏に浮かんで、出水の体が微かに疼く。
それはほんの一瞬のことだったけれど、太刀川がそれを見逃すはずもなく。
「なんだ出水、中きゅうってしたぞ。三輪のやらしい姿見て興奮したか?」
「ち、ちがっ、そんなんじゃ」
「よーしじゃあもっかいだな」
「っふ、ざけんな、っあ、あ」
抜かずの何発とはまさにこのことか。先ほど出水の中に吐精したばかりのくせに、太刀川のものは既に硬度を取り戻していて。
先ほどの反省などもう忘れてしまったのか、再び自分勝手に出水の体を突き上げ始めた。
しかしそれにすら快楽を感じてしまう出水に抵抗手段などもはや無く。
ふざけるなとぽかぽか太刀川を殴りつつも、結局太刀川の為すがまま蹂躙されるだけだった。
「あーたまにはいいかもなーこういうのも」
「こういうの?」
静けさを取り戻した部屋にごうごうという空調の音と、二人分の声だけが響く。
すっかり満足した顔でぐったりした様子の出水を抱きしめる太刀川、と、未だ起き上がれないでいる三輪に膝を貸してその頭を撫でている迅の声。
「乱交じゃないけど、なんていうんだこれ。見せ合いセックス的な」
「まーそうだね。いつもより可愛い秀次が見れたし」
「つーかおまえ今度は三輪にもちょっとはサービス心てものを学んでこさせろよ」
「え、それはやだよ。そっちこそ今度はもっと普通にしたら?強姦みたいなのじゃなくてさ」
などと、物騒な会話をのほほんと繰り広げる大人二人。
その、馬鹿な大人たちのどうしようもない会話を聞きながら、
「二度と…ごめんだ…」
「もうぜってーやらねー…死んでもやだ…」
振り回された子ども二人はぐったりと怨嗟の声を漏らすのであった。