その答えを教えて




自分の思う太刀川さんのイメージで好きなように書いたら酷い男になりました。
トリオンックスしてます。



ああ今日は酷い風にされるんだろうな、っていうのは一目で分かった。
防衛任務も何もない久々のオフの日。学校から帰宅したタイミングを見計らったように、出水の携帯はメールの着信を知らせた。
ベッドに転がりながら携帯を取り出すと、画面上には見慣れた名前。太刀川慶。思わず出水は飛び起きて、もう一度画面を確認する。間違いなく携帯の画面には自分の隊の隊長の名前が表示されている。
ああもしかして、なんてちょっと嫌な予感を感じつつ本文を開いてみれば、「トリガー持って俺の家来て」と、たった一言。
予感的中(迅さん風に言うならサイドエフェクトがそう言ってた、かななんて思ったりする)。家に来いということはつまりそういうこと。太刀川のメールが適当なのはいつものことだが、そういう誘いまでこんな適当だと悲しくなるより逆になんだかどうでもよくなってくる。まあ今ではそれももう慣れたことだ。
はあ、と溜め息を吐く。放り出したばかりの鞄を拾い上げて、とりあえず財布だけポケットに突っ込む。
トリガーは…ああちゃんと持っている、とりあえずそれだけ確認すると、出水は学ランのままさっさと家を出た(遅れるときっとまた面倒だ)。今日はボーダーの任務があるから遅くなる、と家族に嘘を吐いて。



太刀川の住むアパートまではそんなに遠くない。
自転車を飛ばせば十数分くらいで着く。無論トリオン体で飛ばしたほうが早いんだろうけど、警戒区域外で無意味に換装するほど出水は馬鹿ではない。
しかしマフラーも手袋もせずに飛び出してきたのは間違いだと今更思った。吹き付ける風のせいですっかり冷えてしまっている。
かじかむ指を擦りながら階段を上がって、太刀川の部屋へと向かう。
チャイムを鳴らそうとしてふと気づく。そういえば返信を忘れていた。まあいいか、太刀川はどうせ出水が断るなんて微塵も思っていないから気にせず待っているんだろう。
そんなことを思いつつ、はあ、と一息吐いてチャイムを押した。すぐにどたどたと忙しない足音が聞こえてガチャリと目の前の扉が開かれる。

「おー出水、早かったなー」
「まあ急いで来たんで」
「うん偉い偉い」

玄関に入るとわしわしと頭を撫でられる。と、同時に太刀川がもう片方の手でドアの鍵を閉めているのを出水は見逃さなかった。
いや、そんなもの見なくても今から何をされるかくらい知って来ているのだけれど。
だからそのままぐっと腕を引かれて部屋の奥に連れ込まれても、そのままベッドに押し倒されても、特に驚きなどは無かった。
太刀川はベッドに投げ出された出水の体に跨って、さっさと上半身の服を脱ぎ捨てる。見下ろしてくる太刀川の視線が明らかな色欲を孕んでいて、それだけで出水の奥の熱がじりじりと燻った。

「じゃ、とりあえずトリガー起動してトリオン体になって」
「…いきなりですか」
「俺今すごいむらむらしてるからさっさと挿れたくて。出水も痛いの嫌だろ?」

当然のように太刀川は言う。相変わらず歯に衣着せるということを知らない人だと出水は思う。
トリガーを持ってこいと言ったのはやっぱりそのためか。なんとなく分かってはいたけどなんだか酷く虚しくなってくる(この人はおれのことを何だと思ってるのか、もう慣れたけれど)。

「…はあ」

起動の声を発する気にもならず、代わりに溜め息を吐きながらトリガーに触れた。
数秒もせずに先ほどまで着ていた学ランの肉体は収納されて、代わりに着慣れた黒いロングコートのトリオン体に換装される。
それを確認すると太刀川はそのコートに手をかけて、そのまま躊躇もせずにボタンごと引き千切ってしまった。

「千切ることないでしょ太刀川さん」
「一個一個外すのは面倒だし。あとでまた作り直せばいいだろ」
「…トリオンもったいねー」

ぼやく出水を無視してコートを脱がすと、今度はズボンに手をかける。
さすがにズボンを引き裂くほど剛力ではないだろうけど、もたついて苛立たせるのも嫌なので出水は自ら腰を上げてやる。と、太刀川は満足そうに小さく笑みを浮かべて下着ごとさっさと剥ぎ取ってしまった。
太ももの裏に太刀川の手が這う。そのままゆるゆると撫でさすりながら持ち上げて、出水の膝裏を肩に乗せる。

「お、出水のもちょっと固くなってるな、期待してた?」
「そりゃ、あんなメール貰ったら、少しは」

期待、というのとは少し違うかもしれないけれど、他にどう言えばいいかも分からなかったからとりあえず頷いておく。
そんな出水の心境などいざ知らず、太刀川は喉の奥で小さく笑って自らの性器を露出させる。
出水の視界の端に映ったそれは既に凶悪なほど勃起していて(いったい自分が来るまでに何をしてたんだろうAVでも見てたんだろうか)、今からこれが自分の中に入ってくるかと思うと背筋が冷える感じがして、それと同時に胸の奥あたりがじんわりと熱くなる感じもした。
太刀川は何の遠慮もなしに、その固く勃ち上がった性器を出水の後孔にねじ込もうとする。けれどほぐされてもいないそこがそんな凶悪なものを受け入れてくれるはずもなく。
先端をぐいと押し挿れて無理やり腰を進めようとするけれど、内壁に押し返されて出水の奥まで入っていかない。
出水の方はというと、トリオン体のおかげで無理な挿入にも殆ど痛みは感じなかったけれど、なんだかむず痒くて仕方なかった。

「あーさすがに何にもしないと入らないか」
「っ、せめてローションとか」
「はいはい」

一旦腰を引くと、面倒くさそうに太刀川は枕のあたりをごそごそと漁る。
そういうものをそこら辺に放り出してるのはどうなんだろう、と思うけれど、太刀川は出水と違って一人暮らしだ。太刀川が気にしなければ、別にどうということもないんだろう。
そんなことをぼんやり考えていれば、下腹部にぬるりと冷たい感触。それを太刀川の手が絡めとってゆるゆると出水の後孔に塗りこんでいく。
二本の指をぐちゅりと埋め込んでかき混ぜて、またその液体を掬っては繰り返し、出水の中をどろどろにしていく。
急いた動き、割と無理やり拡げられているにも関わらず、やはり痛みは殆ど感じない。あーほんと便利だなーと思うのと同時にこんな使い方しちゃっていいものかと真面目なことを考えてみたりもする。
けれどそんな思考もすぐ断ち切られる。最後にゆっくり円を描くように内壁をなぞると、太刀川は指を引き抜いて再び自らの怒張を出水のそこにひたりと押し当てた。

「もーいいだろ」
「ん、たぶん」

痛みがないから自分のことなのに自分の具合なんてちっとも分からない。けれど太刀川はいい加減挿れたくて仕方ないというような顔をしているから、どっちにしろ出水に選択権など無い。
太刀川が出水の足を抱えなおして、自分の先端を出水の後孔に埋め込む。痛みは感じないけれどいつもの癖で出水は息を詰めないように体の力を抜く。
相当に焦れていたらしい、太刀川は一気に腰を進めると自分の勃起した性器を根本まで出水の中に押し込んだ。ぐちゅり、とかいやらしい水音が響く。

「はー…やっぱきついな」
「、っ当たり前でしょ」

よく慣らしてもいない中を無理やりこじ開けて侵入しているのだ。そりゃあきついに決まっている。
ましてやこれはいつも抱かれている生身の体じゃない。あっちの方ならまだ太刀川の形に多少拡がっているんだろうが…とか出水は考えてなんとなく気恥ずかしくなる(だってなんだか太刀川専用に調教されているみたいで)。

「まーいいや、動くぞ」
「んっ、どーぞ、っ」

言うと太刀川は躊躇いもなく、激しく腰を打ち付け始めた。ほぐすようでもなく、じわじわと上り詰めていくようでもなく、最初からただひたすらに快楽を貪るためだけの激しい抽挿。
しかしまあ、快楽とは痛みを薄めたものである、とはよく言ったものだと思う。
残していた僅かな痛覚に伝わるのは明確な快楽だけ。痛みが無い分快感だけが体を貫くように響いて、この無茶苦茶な律動がどうしようもなく気持ちよかった。

「ふ、あっ、あ、ああ、っん」

奥をがつがつと穿たれる衝動、その度に出水の頭は快感でびりびりと痺れる。
何も考えられなくなるのに時間は然程かからなかった。獣みたいに突き上げてくる太刀川に合わせて、同じように出水も獣みたいに喘ぐだけ。

「出水、やらしー声、そんなにいいのか?」
「はあ、あっ、だって、あ、う」
「よしよし」

言葉にならない声で反応すれば、満足気に頭を撫でられる。
その手は律動とは正反対にやたら優しくて、なんだか泣きそうになった(この体じゃ涙なんて出ないけれど)。

「っはぁ、な、どうせもうこれ破棄だろうし、中、出していいよな」
「あ、あっ、たちかわ、さ、」

太刀川がなんて言ったかよく聞き取れなくて、でもとりあえず頷きながら太刀川の体にしがみつく。
もう限界が近い。出水は震える足を太刀川の体にぎゅ、と絡めると内壁がうねって太刀川の性器を刺激した。
その、絶頂を煽るかのような動きに太刀川が低く呻いて、出水の最奥を突き上げる。

「っう、あっ、あぁ、あ…」

どろりと最奥に吐き出される奔流。その熱さをじんわりと感じながら出水も絶頂に達した。
トリオン体だから射精はできない。けれど、いやだからこそだろうか、絶頂の感覚がじんじんと長引いて治まらない。
その蕩けるような快感に酔いながら、はあはあと荒い呼吸を繰り返す。やっと、半分飛びかけてた意識が戻ってくる。
と、そういえばまだ太刀川が自分の中から出ていっていないことにふと気づく。お腹の中にどろりとしたものは感じるし、先程よりも圧迫感は感じないから確かに太刀川も達したはずなのに。
そんなことを思いながら太刀川を見上げると、まだ、あの目。ぎらぎらと飢えた獣の目。
別にそう驚くことでもなかった。まあよくあることだ、今日は相当溜まってたみたいだし足りなかったんだろう。徐々に硬度を取り戻す性器を内側で感じながら出水はぼんやりと思う。

「出水、さっきどれくらい痛覚切ってた?」
「っふ、は…、ん、えっと八割、くらい」
「二割くらいにしてみて」
「…えー」

この体は既に太刀川のものだ。気の済むまでやればいいと思う、いいとは思うが、太刀川の注文は出水を困惑させた。
先程は痛覚をほぼ切っていたから多少荒々しくても気持ちよくなれた。しかし今度はその機能をほぼオフにしろという。
痛覚のある状態であの律動を受け止めるとなると…、少し背筋が冷えるような感じがした。

「俺出水の痛がる顔見るの、気持ちよさそうな顔と同じくらい好きだから」

しかし太刀川はそんな出水を宥めるように囁きながら、ゆるゆると腰を動かし始める。
本当にずるい、と出水は思う。この人はどうすれば出水が断れないかというのを嫌というくらい知っている。

「ね、出水」

そして自分は馬鹿だ、とも出水は思う。
優しい声と、耳に落とされるキス。それだけでほだされて、結局太刀川の要求に頷くことになってしまったのだから。
はあ、と息を吐いて来るであろう痛みに備える。出来るだけ力を抜いて、トリオン体の感覚をいじり始める。
調整にはそんなに時間はかからない。数秒かからず殆どオフにしていた痛みの感覚を生身と同じくらいまで引き上げる。と、瞬間出水の下半身を鈍い痛みが襲った。

「っ!うあ、あ、あ、っぐ、」

先ほどの抽挿のおかげで多少拡がってはいるものの、やはり殆ど慣らされていなかったそこは依然きつくて。
お腹の内側から感じる息が詰まりそうなほどの圧迫感、入り口を無理やり押し拡げられ擦られる感覚。出水はがくがくと体を震わせて、痛みの波に耐えるようにぎゅっと目を閉じた。
下半身を裂かれるような痛み、初めて太刀川のものを受け入れた時のことを思い出す(いや、あの時は散々ほぐされたあとだったからまだマシだったかもしれない)。
痛い、痛くて呼吸がし辛い、のに太刀川は動くのをやめてくれない。それどころか、

「はは、その顔、好き」

なんて酷く満足気に笑って、更に腰を突き動かしはじめた。

「あ、あ、やだ、いた、っ」

どれだけ激しく動かれても快感に変わっていた先ほどとは違う。抉られる度に体が悲鳴を上げる。
精液とローションでどろどろになっているおかげで抽挿自体は先程よりスムーズなのだけれど、その分容赦なく何度も腰を打ち付けられるから息が詰まりそうになる。
痛みに喘ぎながら震える手でシーツをぎゅうと握り締めると、その手を取られて太刀川の背中に回された。

「こっち、しがみついていいからもうちょっと我慢して」
「は、はあっ、う」

普段なら躊躇するところだが今はそんな余裕などない。から、容赦なくその背中に爪を立てる。
それで痛みが和らぐわけではないけれど、力を逃す場所があるだけマシだった。奥をぐん、と突かれる度に出水の指に力が入って、太刀川の背中に痕を残した。

「ひ、ああ、あっ、ん」

しかしまあ、その引き裂かれるような痛みもそう延々とは続かず、やっと中が太刀川のかたちに順応したころ、出水の喉から甘い声が漏れはじめる。
まだ内壁はじんじんする。でもやっと奥を抉られるのが気持ちいいと感じられるくらいの余裕は戻ってきて、今度は快感に身を震わせた。

「お、ちょっとよくなってきた?」
「ん、んっ、さっきより、は」

痛そうな顔が見たい、と言っていた割にはなんだか安心したような顔。結局この人は何がしたかったんだ。
抗議の声を上げようにも喘ぎ声にかき消されて言葉になんてならない。悔しいからもう一度肩に爪を立ててやる。

「よしよし、ちゃんと気持ちよくしてやるから」

そんな出水を宥めるように撫でてくる手はやっぱり優しいから、本当にこの人はずるい、と思った。もう勝手にすればいい。





「はー…すっきりした」
「はあ、それはよかったことで」

太刀川は深い深い溜め息を吐くと、満足気にごろりとベッドに転がった。
せめて下着くらい穿けばいいのに、と思う。太刀川に憧れている人間がこんなだらしない姿を見たらどう思うんだろうな、なんて思ったりした。
でもなんとなくその、気の抜けた無防備な顔を見ていると、なんだか胸が酷く疼く感じがしてどうしようもなく太刀川に触れたくなって(理由なんて分からない)、そっと手を伸ばす。けれど、触れずにその手を下ろした。
まだじくじくと痛む体を無理やり起こして、トリオン体を解除する。と、精液やら何やらと一緒に鈍い痛みは嘘のように消えていった。
戦闘でどこかしら傷ついたわけではないけど、さっきまでのトリオン体は破棄するしかないだろう。
あんな精液でどろどろになった体に換装できるわけもない。我ながら(というか太刀川のせいだけれど)勿体ない使い方をしたと思う。
それに、だ。出水は忌々しげにポケットの中のトリガーをぎゅっと握る。
先ほど散々絶頂したせいで快楽の余韻は残っているのに、肝心の自分の生身は一度も精液を出していない。そのせいかやたら下半身が熱くて、体はその熱の解放を求めている。
この後一人でそれを処理しなければならないであろうことを考えたらなんだか酷く虚しくなった。

「あ、出水、俺これから風呂入るけどお前も入る?」
「…別に、おれトリオン体だったし」

やっとのそのそと太刀川が体を起こして、その辺に脱ぎ散らかしていた衣服から下着を拾う。
まあ太刀川は汗やら何やらでどろどろだろうけど、別に出水はそんな必要もない。
そもそも生身の体は来た時と何も変わらないままなのだから、帰ろうと思えば今すぐにでも帰れる。
太刀川は冷蔵庫から二本分ミネラルウォーターを取ってひとつ出水に渡してくれるけれど、喉だって全く乾いていないから飲む気にもならなかった(あんなに喘いだのにおかしな話だ)。

「まあとりあえず風呂洗ってくるから、ちょっとゆっくりしてろ」

言って風呂場に消える背中を何も言わずに見送って、出水はすとんとそこに座り込んだ。
急に呼び出されて、太刀川の家に来て、セックスして。時には本部でも太刀川の好きなように抱かれて。
もう今まで何度もあったことだ。何度もあったことなのに、今でもぼんやりと思うのだ。
ほんと、おれはこの人の何なんだろう。おれは何がしたいんだろう。
もう何度思ったかも分からない、答えなんて出そうにない問いを投げかけても、答えてくれる人なんて誰もいなかった。









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