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緑赤は王道の反対が面白いと思います。
ナチュラルに同棲。



緑間は真面目で退屈な人間だと思われがちだけれど、つまらない人間ではないと思う。
いやむしろつまらないとは真逆の方向にある男だと赤司は思う。訳の分からないラッキーアイテムとかいうガラクタを集めるのが好きだったり、ちょっとちょっかいを出すだけで過剰に反応したり、弄って遊ぶ分には非常に面白い。
さて今日は何で暇を潰そうか、と適当な夕飯を作りつつぼんやりと考える。
調味料を取ろうとして、ふと、一つの小瓶が目に入った。錠剤の入った小さな小瓶。
ああ、そういえば。赤司はその瓶を手にとってしばらく見つめた後、何かを思いついたようににやりと(緑間曰く)邪悪な笑みを浮かべた。
今日の遊びはこれにしよう。そうとなれば色々と準備をしなければ。
赤司はそれを台所の隅に置くと、浮かれ気分で料理を再開した。早く帰って来いと緑間に念を飛ばしながら。



「ただいま帰ったのだよ」
「ん、お帰り。早かったな」

その念が通じたのか、緑間は普段よりも早く帰宅した。
教授の急用で最後の講義が潰れたらしい。念で緑間の行動をいじれるのならもっと普段から念を送ってみようかなんてひっそり思ったりした。

「夕飯はできてるよ。風呂も溜まってるけどどっちがいい」
「赤司はもう入ったのか?」
「うん、オレは夕飯待ち」
「なら夕飯から一緒に食べるのだよ」

食事か風呂かと聞かれて、お前、と答える人間だったらもっと面白かったのになあと思いつつ赤司はさっさと二人分の夕飯の準備をする。
味噌汁を温めている間にご飯をよそって、そうしている間に几帳面に手洗いうがいを済ませて部屋着に着替えた緑間が戻ってくる。

「手伝うのだよ」
「いいよ、もう終わるから座っててくれ」
「む」

緑間は所謂亭主関白的なものを嫌うから何かと手伝いをしたがるのだが、赤司はあれでいて世話を焼きたがる方で。
台所に立ちたがる緑間をテーブルに追いやると、緑間は少ししゅんとした様子で席についた。こういう反応もいちいち見ていて面白いと思う。
ご飯と味噌汁、今日は魚が食べたかったから鮭のムニエル、あとは足りない野菜やら何やらを補った副菜を食卓に運んで、じっと待つ緑間の向かい側に座る。
テレビもつけず携帯もいじらずただじっと待っている緑間の姿は、お預けを食らっている犬みたいでなんだか可愛いなあと思いつつ、手を合わせた。

「いただきます」
「頂きます。赤司、明日はオレが作るのだよ」
「ん、今度は炭を作るなよ」

緑間の料理の腕は壊滅的とは言わないものの、下手の域に分類される程のもので。
レシピはきちんと読む方なのだが、むしろ熟読するのが悪いのか煮詰めすぎたり焦がしたりということが多々ある。
まあそれでも愛というものは不思議なもので。緑間が作ったものなら食べられないものはない、とまでは言わないがそれでも美味しいと思ってしまうから愛という調味料は偉大だと思う。

「分かっているのだよ、次こそはちゃんと」
「はいはい」

途中で話を切ってやれば、不機嫌そうな顔。それがまた面白くて赤司は小さく笑う。
緑間は器用な方だから、何度かすればそのうちそこそこの料理くらい作れるようになるんだろうなあと赤司は思う。
けれど、それでも緑間に料理の担当は譲りたくないなあ、なんて思ったりする。
自分の作ったものを美味しそうに食べる緑間を眺めるのも、赤司の楽しみのひとつなのだから。



「洗い物はオレがするのだよ」
「別に気を使わなくても、風呂に入ってくればいいだろう」
「いや、手伝う」

狭い台所に二人も男が並ぶのは正直邪魔なのだが、手伝うと言って聞かないのだから仕方なく狭い台所で二人して手を動かす。
二人分の食器くらい一人でもすぐ片付くのに、こういう頭の固いところはちょっと面倒だと思う。
まあだからこそというか、からかった時の反応は面白いのだけれど。
ちらり、と先ほどの小瓶を目の端に捉えながら、赤司は小さく笑みを噛み殺した。

「よし、オレは風呂に入ってくるのだよ」

几帳面に皿を拭き終わったあと、緑間はようやく風呂の準備に取り掛かる。
が、もう素直に風呂に行かせる気は無くなってしまっていた。さっき風呂に入れと言った時に行かなかった緑間が悪い。
赤司の悪戯心はそう長く我慢が効くものではないのだ。仕方がない。

「ちょっと待った」

緑間が背を向けた隙に、小瓶をそっと手に取る。
水は…まあ無くても大丈夫だろう。赤司はひとつだけ錠剤を取り出して口に含んだ。

「みどりまー」
「なんだ、」

振り向いたその顔を両手で包んで、ぐ、と背伸びする。
瞳を閉じて顔を近づけてやれば、緑間の方から察してくれて唇が触れてくる。
ちゅ、と重なるだけの優しいキス。でも今欲しいのはそれじゃない。
赤司の方から舌を差し出して唇をちろりと舐めてやれば、求めていた熱い舌が赤司の咥内にねじ込まれる。
いつもならそのまま欲望に任せて粘膜の触れあう快感に酔うだけなのだけれど、今回は目的があるのだ。
緑間の舌が離れようとしたその隙に、今度は自分から緑間の唇に舌をねじ込んだ。先ほど口に含んだ錠剤ごと。

「っ!?」

その押し込まれた異物に驚いて緑間は顔を引こうとするけれど、逃すわけがない。顔は両手でがっちりと掴んで、押し返されないように唇と舌で蓋をする。
ついでに鼻も塞いでやりたかったところだけれど、生憎腕は二本しかないので諦めた(もし塞げたとしてもそれはそれで酷くシュールだったと思う)。
しばらく色気のない舌の攻防が続いて。やっとのことでごくん、と緑間の喉が鳴ったところで赤司は唇を離した。

「っは、あかし、何を、」
「今飲んだの何か分かるか?」

にやりと笑みを浮かべながら赤司は酷く愉快そうに問う。
ああその顔は知っている。また何か企んでいる顔だ。
緑間ははあと大きく溜め息を吐いた。

「…お前のことだからまた碌でもないものだろう」
「まあ正解だな。精力剤だよ、媚薬的なものだとでも思ってくれ」
「びや…!おま、お前馬鹿だろう!」

赤司の口から出た媚薬という言葉、そして今自分が飲み下したもの。
緑間の顔が真っ青になって、その後真っ赤になる。
吐き出そうと思ってももう喉を通り過ぎたあとだ。無理に等しい。

「そう焦るなよ、毒でもないのに」
「だからと言って…!」
「それに、別に困ることでもないだろう?」

一瞬だけ例の目を使って、緑間の肩に手をかけ、とん、と軽く押す。
すると緑間の体は力を抜かれたように崩れて、すぐ横のソファへと押し倒される形になった。

「っぐ、卑怯だぞ」
「まあすぐに効き目が出るわけでもないだろうし…ちょっとサービスしてやろうか」

言って、体を起こした緑間の足の間に体を収めて、緑間の股間をそおっと撫でる。
そして挑発的に見上げてやれば、緑間ははあとため息を吐いて、

「勝手にするのだよ…」

と半ば諦めたように漏らすのだった。

「じゃあお言葉に甘えて」

勝手にしていいと言われたのだから、勝手にするまでだ。
緑間のズボンを下着ごとずらして、まだ柔らかな性器を取り出す。
それをしばらく手遊ぶように撫で回して、それからちろりと舌を這わせた。

「は…」

小さく漏れた緑間の吐息にぞくりと本能が騒ぐ。
早くこれでぐちゃぐちゃにされたい、壊されたい。そんな欲が疼きだすけれど、まだ我慢。あくまでゆっくりと焦らすように緑間の性器を愛撫する。赤司が舌や手で触れれば触れるほど熱を持ち硬くなるそれが愛しくて頬を擦り寄せれば、ごくりと唾を嚥下する音。
そのまま上目遣いで見上げてみれば、熱に酔い始めた緑間の目と目が合った。

「なんだお前こういうのが好きなのか」

すり、と頬を擦り付けながら聞くと、手の中の性器がいっそう固くなる。体は正直というやつだ。

「好き、というか…扇情的すぎて、目の毒なのだよ」

なるほど視覚効果というものか。どうやら緑間には自分の性器に頬ずりする赤司、というものが非常に卑猥に見えて仕方ないらしい。
求められればもっとすごいことだってやってやるのに、全く安い男だと思う。

「それより、なあ緑間、薬は効いてきたか?」
「っ、分からない、のだよ…」

言いながらも赤司を見つめるその目は欲望でぎらつき始めている。ああたまらない、その目が好きだ。でももっと。
赤司は緑間の上に跨って、着ていた衣服を脱ぎ捨てる。
それから緑間の上着に手をかけると、自分で脱ぐ、と制止されたので大人しく待つことにした。

「もう溶けたとは思うんだけどな…」
「あ、かし」

あらわになった緑間の腹のあたりを手でゆっくりとなぞってやれば、掠れた声で赤司を呼ぶ声。
構わず胸の筋肉やら太ももやらを撫でさすっていれば、頬を掴まれて上を向かされる。それから噛み付かれるようなキス。
熱い舌がねじ込まれて、呼吸ごと奪われるんじゃないかっていうくらい激しいキス。歯列をなぞられて舌を吸われて、飲みきれなかった唾液がつうと口の端を伝った。

「、ふは、あ…みど、りま」
「はあ…お前の責任、なのだよ」
「ん、」

ゆっくりと唇が離れていって、ふわふわした思考のまま緑間の首に抱きつくと、お尻のあたりに固いものが擦り付けられる。
責任とは何のことかと思ったがなるほどこれのことか。既に臨戦態勢と言わんばかりに自己を主張しながら赤司の尻をなぞってくる。

「ふふ、そろそろ効いてきたのか」
「っ、そんなこと、分からないのだよ」
「でも入れたいだろ?オレに」

言って少し腰を浮かせて、緑間の性器を自分の後孔に宛がう。
ソファの下に用意しておいたローションを取り出して自分の下腹部にどろりと垂らせば、緑間はそれを掬って赤司の後孔へ指を滑らせ塗りつける。
そのまま指を挿入しようとしたところで、赤司は緑間の手を止めた。

「っ、オレのことは気にしなくていいよ、風呂で準備は全部済ませてきたから。いきなり突っ込まれても平気なように慣らしてきた」
「お前、最初からそのつもりで…」
「当たり前だろう?」

用意を怠るわけがない。せっかく緑間に火がついてきたような感じなのに、いちいちそこで冷ませたくなどない。
そっと耳に唇を寄せ、入れて、と一言。
するとぐ、と腰を掴まれて、ずぷりとその先端が赤司の中に潜り込んでくる感触。

「今日は、優しくできる保障はないのだよ」
「っ、あ、構わないよ、っう、ん、は…」

元より手加減なんて望んでない。
内壁を擦りながら一気に緑間のものが根元まで埋め込まれる感覚に、赤司は身を震わせた。
程なくして緑間は腰を動かし始める。いつもならもっとゆっくりとし始めるはずなのだけれど、先ほどの言葉通り、今日はなんだか余裕無さげに性急な動きで。
慣らしたとはいっても緑間のものと自分の指では相当違うのだから、内壁がむりやりこじ開けられていく感触がする。でもそれがたまらなく気持ちいい。

「はあっ、あ、みど、りまっ」
どうしても緑間の顔が見たくて、痛みと快感に喘ぎながら必死に顔を上げれば、頬は赤くなり目はただのけものみたいにぎらぎらとした緑間の顔が眼に映る。
そうだ、その顔が見たかった。
それが酷く満足で、ふ、と小さく笑えば抽挿は更に激しくなった。

「お前は、まだ余裕そうだな」
「あっ、あ、んっ、そうでも、ない、っ」

だって緑間のその余裕の無さそうな顔だけでもうこっちは体が熱くなって仕方ないのに、緑間の性器でその焦れた体を貫かれてるのだからもうたまらない。
逃げるつもりなんて毛頭無いのにがっしり掴まれた腰も、緑間の律動に合わせて揺すられて、もう全部緑間の為すがままだ。自分から腰を動かすことすらままならない。
支配されているような感覚、おもちゃにされているような錯覚、それだけでもうトんでしまいそうだ。

「あっ、なか、当たって、あっ、」
「っそろそろ…」

絶頂が近いのか、抽挿はいよいよ激しさを増して。結合部がぐちゅぐちゅといやらしい音を立てる。
抱きつく指が震える。目の前がちかちかして仕方ないから目を閉じる。
抱きついた体も、自分の吐息も、擦れあう内壁と緑間の性器も全部熱くて、それが全部どろりと溶けてしまいそうだと思って、

「っ、も、だめ、あ、あ…っ」
「赤司、っ…」

一気にその熱を吐き出した。
ふるりと体を震わせて緑間の体にぎゅうとしがみつくと、数瞬後に緑間の性器がびくんと震えて、中がじわりと熱くなる。ああ、イったのか、とぼんやり思う。
熱を吐き出したものがゆっくりと出ていって、その喪失感に軽く息を吐く。と、赤司の体はごろんとソファに転がされた。
見上げればまだ、熱を失っていないけものの瞳。獲物を狙うみたいにぎらぎらして、赤司のことを見つめている。
ああ本当にその顔が好きだ。今さっき熱を吐き出したばかりなのに、またじりじりと体が奥のほうから熱くなる。

「…っは、まだ足りないんだろ?いいよ、好きなだけ」

言って自ら足を開いてやれば、先ほど出された精液がごぽりと中から溢れ出す。
その、自分の精液が赤司の尻を伝う様子を見て、緑間はごくんと唾を飲んで、

「…どうなっても知らないのだよ」

誘う赤司に応えるように、否、自らの欲を抑えられなくなり、赤司の足に手をかけた。





「あー、あー…、」

ああやっぱり掠れてしまった。
喉を押さえて何度か確かめるように発声してみながらぼんやりと赤司は思った。
久しぶりに声が枯れるまで喘いだ気がする。近隣に聞こえなかっただろうかと、酷く今更な心配をしてみる。

「…その、済まなかった、大丈夫か」

そんな赤司を気遣うように冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、緑間は気まずそうに呟く。
枯れた喉に冷たい水が心地よい。さながら砂漠でオアシスにめぐり合うような感じと言ったところか。

「ん、平気だこれくらい。しかし今日はすごかったな」

あの後も散々貫かれて突き上げられて、それこそ最後のほうは意識があったかも危ういくらいだった気がする。
理性なんてものはとっくの昔になくなって、それこそただの動物の交尾みたいになってたんじゃなかろうかと赤司は思った。

「しかしその、今日はお前も悪いのだよ、あんなものを飲ませるから」
「あんなもの?」
「そ、その、精力剤だったか」

ああそういえば最初に何か飲ませたっけ。
行為に夢中で途中からそれの存在をすっかり忘れてしまっていた。
ただの悪戯と思って飲ませてみたが、効果は絶大だったようだ。
まあ、しかし、本当に絶大だったのは薬の効果などではなく。

「あーあれか、あれはただのビタミン剤だよ、これ」

ふらつく体で先ほどの小瓶を取って、緑間の前でからんからんと振ってみせる。
なるほどラベルには確かに、ビタミン配合なんとかとかいう文字が並んでいる。

「前に本で読んだ暗示のかけ方みたいなのを思い出して。なんとなく試してみたらお前があんまりにも簡単にかかるものだからびっくりしたよ」
「な…」
「それとも普段が我慢しているだけか?それなら済まなかったな。別にこれからは我慢なんてしなくてもいいぞ」

くく、と笑って瓶を渡せば、もう一度瓶のラベルをよくよく眺めた後、緑間は頬をかっと赤らめた。
なんてことはない、薬が効いていたのではなく、赤司の暗示が効いていただけだったという話だ。
つまり薬自体にそういう効用なんてなく、緑間自身が己の性欲に突き動かされていただけだと知って、緑間は片手で顔を覆った。顔を隠しても耳まで赤いのが丸見えだ。

「本当に…お前という奴は…どうしようもないのだよ…」
「そうか?オレは満足だけどな」

悪戯が上手くいったこともそうだが、あんなに激しく求めてくる緑間は初めてだったから。
優しく甘いのもいいけれど、けものみたいに乱暴に求められるのも悪くない。
自分しか知らない緑間の顔。

「また気が向いたらやりたいな」
「もう同じ手にはかからないのだよ」
「分かってるよ、だから」

ぐい、と緑間の首に抱きついて耳元で囁く。

「暗示なんか無くても、時々は今日くらい激しくしてくれよ?」

もっとなりふり構わず自分を求める緑間が見たいのだから。
その、真面目そうな顔が崩れてけものみたいになるのが好きなのだから。
尽力するのだよ、という照れたような小さな答えが返ってきて、赤司は満足そうに微笑んだ。









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