女装注意
果たして自分に妹などいただろうか、いや、いなかったはずだ。
「おかえりなさいませ、ノボリ!」
ドアを開けて出迎えたのは可愛い弟、のはずだ。しかし目の前に立っているのはふわふわでひらひらのメイド服に身を包んだ、弟と呼んでいいのか妹と呼んでいいのかよく分からない人物で。ノボリは思わず口角をひくつかせる。
「…なんですかそれ」
「トレインのメイドの子から貰った!可愛いでしょ」
言ってクダリはくるっと一回転してみせる。短いスカートとフリルがその拍子にふわりと揺れて、筋張った太ももが覗いた(こうやって見てみると色気もくそもない)。
「…はあ、それで、どうしてそんなものを」
「え、そんなのごほーしするために決まってる」
メイドといえばご奉仕でしょ、とエロ本の中だけでの常識を振りかざして、クダリは誇らしげに胸を張る。
全くこの弟ときたらすぐに影響されるのだから困りものだ。一体どこの誰が吹き込んだのかは知らないが。
もしかしてこの服をくれたメイドが自分たちの関係まで見透かした上で吹き込んで渡したのだろうか、だとしたら恐ろしい。
「じゃ、ノボリも着替えてね」
「は?」
「ノボリの分も貰ってきた」
「…は?」
どうやら、その恐ろしい予感が当たっていそうな気がして、ノボリの背中をひんやりとした汗が流れていくのを感じた。
「なんで、そんなものをわたくしが、」
「着て、くれないの?」
「…」
玄関から先を塞がれてノボリ用らしいメイド服をずいと差し出されて甘えた目で見つめられて。
さっさと押しのけて入ってしまえばいいものなのかもしれないが、しかしこの愛しい弟にノボリがそんなことをできるかと問えば、まあ答えは言わずもがなである。
「ノボリ、かわいい!」
いい加減弟の我儘やらおねだりやらを上手く流す方法を考えたいものだ。
思えばいつもいつも流されているような気がする。クダリよりは若干長めのスカートの裾を握りしめながらノボリは長く重いため息を吐いた。
クダリのものがなんだか酷く可愛らしいデザインであるのに対して、自分のものはシックなものであったのが救いである(いや、冷静に考えたら何の救いにもなっていないけれど)。
「じゃ、ノボリ座って」
「はあ」なんだか色々なことに突っ込むのが面倒になって、とりあえずノボリは言われた通り腰を下ろす。
するとクダリは嬉しそうにやらしい笑みを浮かべて、ノボリの足元にぺたんと座り込んだ。
「ごかいちょー」
「こら」
ノボリのスカートの中に手を突っ込んで、ごわごわとした生地を捲りながら、クダリはノボリの足を開かせる。
ふざけた物言いに軽く頭をはたきながらも、自分の足の間から顔を出し、熱に濡れた目で見上げてくるのは嫌いではなくて。
それに、いわゆるそういう趣味があるわけではないけれど見慣れぬ格好の違和感というものにはやはり妙な興奮を覚えるものである。
「へへへ、なんだかんだ言ってノボリおっきくなってる」
下着の上からすりすりとノボリの性器を擦って、その感触を堪能するように焦らすようにクダリは微笑む(ああ小悪魔のようだな、なんて思ったりする)。
「ご奉仕してくれるのではなかったのですか?」
「はいはい、ノボリのそーろー」
「一言多いですよ」
今度ははたく代わりにクダリの顔を自らの股間へそっと近づけてやれば、促されるままにクダリはノボリの下着を下ろして、軽く勃起した性器を露出させる。
黒のスカートに、いつもと変わらぬ男ものの下着が酷くミスマッチでなんだか萎えそうな気分にもなったが、しかしそれ以上にクダリの姿が扇情的で(特に、尻を突き出す体勢になったせいかぎりぎりのスカートのラインが非常に卑猥に映るのだ)。
「ご主人さまのここ、綺麗にするね」
使い古されたそんな陳腐な言葉にさえ、ノボリはじわりとした興奮を覚えてしまう。
今更躊躇することなんてなにもなくて(焦らしたい気持ちはまだあったけれど)、クダリはノボリの性器をそっと咥え込んだ。
「ん、んむ、う」
もう何度も繰り返した行為。どこをどう擦れば、舐めれば、舌を絡めればいいのか、なんて嫌というくらい知っている。
じゅる、という生々しい唾液の音をたてて、何度もそれを繰り返していればノボリの性器はあっという間に硬度を増してきて。口の中にじわりとノボリの味が広がってきて、満足そうにクダリは目を細めた。
「っは…くだ、り」
「んっ、ふ、う、きもち、い?」
「ええ…、そろそろ、もう」
ここでストップ、とノボリはクダリの頭を押して離れるように促す。多少不満そうな顔をしながらもクダリはノボリの性器から唇を離した。唾液と先走りでねっとりと糸が伝う。
「ん、まだノボリ、イってない」
「ええ、こちらでもご奉仕してくださるのでしょう?」
クダリの体を自分の上に跨がらせるように抱き寄せて、スカートの下のひらひらの布をかき分けて。ノボリはそっとクダリの下着に手を差し入れ、興奮にひくつくその後孔に指を滑らせる。
クダリはひくんと体を震わせたあと、自らさっさと下着を脱ぎ捨てて再びノボリの上に跨った。
「あ、慣らさなくてもへいき。ノボリ待ってる間に一人でしてた」
…全くもってどうしようもない弟だ。こんな淫乱な弟に誰がしてしまったのか。間違いなく自分だが。
まあしかし今はそれに感謝することにする。とにかくノボリの方だって興奮を貪りたくて中を弄りたくて仕方がないのだ。
「じゃあ、もう挿れてしまいますね」
「ん、いいよ」
力を抜いてもたれかかってきたクダリの腰をそっと掴んで、勃起した自分の性器を挿入しようとする、が如何せんそのひらひらが邪魔で見えづらい。
「クダリ、ちょっとスカートの橋を持っててくださいまし」
「わ、なんかやらし」
上気した頬でくすくすと笑いながら、言われた通りクダリはふわふわのスカートの端を持ち上げる。
そこから覗く勃起した男性器がまたミスマッチなのに、今度はどうしてだか酷く劣情を煽って、どうしようもなく卑猥で。
「クダリ…」
「あっ、あ、のぼ、り…」
じわ、とノボリの熱がクダリの中をこじ開けていく侵入していく感触。粘膜と粘膜の触れる感覚。あつい、あつくて、溶けそうで。
ほんの少しの間その熱に酔っていれば、クダリの方から焦れたようにゆるゆると腰を揺らすものだから、それに応えるようにぐい、と奥へ突き上げてやる。
「っは、あ、っ!」
「あなたいつもよりも興奮してませんか?」
「っ、ノボリ、こそ」
その言葉に否定はできなくて。肯定する代わりに唇を塞いでやって。そして先程よりも激しく奥を抉ってやって。
もう既に裾を持ち上げる気力なんて無くなってしまったのか、ふるふると震える腕をノボリの首に回して、甘い声を漏らす。
「のぼ、ぁ、ひあっ、あ、ね、のぼり」
「なんですか」
「っん、、ご…、しゅじんさま、もっとっ」
まだその設定を忘れていなかったのか、掠れた声でクダリはノボリの耳元で囁いて。その、声に、言葉に。
「っ、クダリ…」
「あ、っ!あ、おっき、あつ、や、あっ」
使い古された陳腐な表現。しかしこんな場面で使われるとこんなにも劣情を煽られるものなのか。ぞくりと自分の中の欲望が膨れ上がるのを感じて、ノボリはクダリの奥を一段と激しく突き上げ、そのまま、クダリの奥へと自らの欲望を吐き出した。
その熱にどろりとした熱と衝動に促されるように、クダリも絶頂を迎えてびくびくと背中を反らしながらその快楽に酔いしれた。
「…っふう、やっぱり、ノボリ早漏」
ノボリの上に跨ったまま、からかうようにクダリは零す。まだ整わない息のまま。そんなクダリの背中を撫でながら、むっとした表情でノボリは返す(確かにいつもより早かったことは否めないけれど)。
「…あなたもイったじゃないですか」
「まあそうだけど。でも、ぼくまだ足りないから、ね」
クダリは再び自らのスカートをたくしあげて、自らの性器を見せつけながら言葉を続ける。
先ほど熱を吐き出したばかりのそこは、性器でどろりと濡れながらもまた固さを取り戻しはじめていて。
「もっとぼく、ご奉仕してあげるからね。ご主人さま?」
「…はいはい」
こんな風に求められるのも悪くはない。たまになら。
何がどうであれ結局愛しい弟には変わりないのだから。
こうして結局今夜も弟の我儘に付き合うはめになってしまったわけだけれど、まあいいか、なんて既にどうでもよく思いながら、ノボリは未だ火照ったクダリの体を抱きしめてやった。
メイドメイドした無配でした。
もう一個書いてたのが長すぎてはみ出たので
2時間くらいで新しくこれを書いた思い出。
没ったやつも近々上げます。
もう一個書いてたのが長すぎてはみ出たので
2時間くらいで新しくこれを書いた思い出。
没ったやつも近々上げます。