melted






8月ももう終わりだというのにじりじりと焦がすような日差しは今日も緩まることはなく。
体育館はその日差しは当たらないとはいえ、じわじわと蒸すように暑い。茹でダコになってしまいそうだ。
練習を終えた頃には全身汗でびっしょりで。汗でぺとりと髪がはりついたアツシのうなじのあたりを見ながら、汗疹には気をつけさせないとなあなんて思ったりした。
シャワーを浴びてすっきりして部屋に帰ってきてみれば、部屋の中もまた暑い。
せっかくシャワーを浴びたのにこれでは意味が無い。何をするよりも先にクーラーのスイッチに手を伸ばす。
早く冷えるように設定温度をいつもより下げてボタンを押せば、古臭い音を立てて涼しい風が吹き込んできた。ああやっと生き返った感じがする。

「え、えええー…まじ、もう、ありえないし」

と、そのさわやかな空気をぶち壊すようなうめき声が後ろの方から聞こえてきた。アツシだ。
振り返ってみれば、冷凍庫を開けたまま項垂れているアツシの姿。
大きな体を小さく丸めて、まるで怒られた子犬みたいにしょんぼりとしている。

「どうしたんだ?アツシ」
「れいぞーこ…こわれた…」

泣きそうな顔で俺を見上げるアツシの手には、カップ型のアイスがひとつ。
蓋を開けてみればなるほど確かに、バニラのアイスクリームはすっかりと溶けてしまっていて、カップの中にはとろんとした液体のみが残っていた。

「ほんとだ、寮母さんに言いに行こうか…って思ったけど今日は休みか」
「アイス…」
「明日の朝部活前にでも…アツシ?」
「アイス…オレの…」

よっぽどショックだったのか、うわ言のようにアイス…アイス…とアツシは繰り返す。
いつもいつも気づけば何かを口にしているアツシだが、部活後のアイスクリームは特別に好きらしい。
まあ気持ちは分かる。誰だって暑い時とか疲れてる時には甘くて冷たいものが欲しくなるのだし。甘いものが好きなアツシならそれはなおさらだろう。
まだ乾ききっていない髪の毛をわしわしと撫でてやる。

「ほら、元気出しなよアツシ」

くったりと力の抜けてしまったアツシの手からカップをそっと奪う。
溶けてしまったとはいえまだ未練はあるのか、それ食べるの?というような瞳でこちらを見上げてくる。可愛らしい。
そんな視線に応えるように、俺は人差し指と中指でとろりとした液体を掬ってアツシの前に差し出した。
ひんやりとした感触が指から手へと伝っていく。

「これまだ冷たいぞ、食べるか?」
アツシは一瞬だけ目を丸くして、でも迷うことなく俺の指をぱくりと咥える。
じゅ、と音を立てて吸って、それから残った残渣を味わうようにれろれろと熱い舌を這わせて。まるで愛撫するみたいな動きに背中のあたりがぞくぞくと痺れるように疼く。
薄く目を開けて舐めるのは癖なんだろうか、いつも思う。なんだかすごく色気のある瞳に心臓の音がじわりじわりと早くなっていく。
でもすぐに味がなくなってしまったのか、アツシはちゅぽんと指を引きぬいて、

「もっとー」

と子どもみたいにおねだりをする。
その顔は純粋な甘いもの欲しさ半分、そして爛れた欲望みたいなの半分で。

「うーん、いいけど、でも」

中身を零さないようにふやけたカップをそっとフローリングに置く。
待てをされた犬みたいにじいっと俺のことを見つめてくるアツシの唇にそっと人差し指を寄せて、微笑んだ。

「服汚しちゃいそうだし、とりあえず脱ごっか」

もちろん服のことはただの建前なのだけれど。
だってアツシと違って今の俺の行動は100パーセント、爛れた欲望が支配していたのだから。





暑い体育館でだらだら汗を流すのが一番好きだったけれど、最近はクーラーの効いた部屋でじんわりと汗を流すのも好きだ。
火照った肌に冷たい空気が気持ちいい。そしてひんやりした空気の中で温かい肌が寄せられるのはもっと気持ちいい。

「ん、アツシ…」

服を全部脱ぎ捨ててしまって同じように裸になったアツシの膝に跨ると、はやく、と強請るようなキスが瞼あたりに落とされる。
お返しに俺はアツシの唇を軽く食んでやって、それからさっきよりもちょっと多めにアイスを掬った。
零れた雫がポタポタと太ももに落ちていくけれど、服も脱いでしまっているしそれより今からもっとどろどろになってしまうのだから問題なんてない。

「ほら、あーん」
「んー」

俺の手首をきゅ、と握って、今度は咥えるのではなくそのまま舌を這わせてきた。
指の先端をちろちろと舐めて、それから指全体にキスするように唇を寄せてちゅうと吸う。
先程よりも性の色が増したその仕草に、欲望と期待は膨らむばかりだ。

「ね、オレにも食べさせてよ」

言ってもう片方の手でだいぶぬるくなったそれを掬って、アツシの唇の端あたりにぬるりとそれを塗りつける。
そしてそのまま、そこに自分の唇を寄せてかぶりつくようにれろりと一口で舐めとった。
甘い。ただでさえ甘いのに、溶けてしまうと余計に甘くて甘ったるくて仕方ない。アツシはよくこんなの舐めていられるなあと思う。

「うわー…室ちんえっろー」

唇を離して見上げてみれば、頬をほんのりと赤くして驚きと興奮の混じった瞳をしたアツシと目が合った。
はあ、と溜まった熱を排気するような吐息に下半身のあたりがじわりと疼く。もどかしい。
別に今更我慢する必要なんて無いのだし、熱くなってきた性器をアツシの太ももあたりにすりすりと擦り寄せてもう一度、今度は唇にキスをする。最初から唇を開けて舌を伸ばしながら。
そうするとアツシもそれに応えてねっとりと舌を絡めてくる。アイスの冷たさでいつもよりもぬるくなった舌。
なんだか妙にえろい感じがして、アツシの舌が俺の歯茎とか舌の先とかに触れるたび脳みそがとろけるような感じがした。

「ふ、はぁ」
「室ちん盛りすぎー」
「んっ、仕方ない、だろ」

唇を離すとからかうようにアツシが言って、俺の性器をゆるゆると戯れのように扱く。
アツシの大きな手が包み込む感覚。首のあたりから足先までびりびりと痺れるような快感が走る。
でも今欲しいのはそんな刺激じゃなくて。もっと奥まで激しく抉るような揺さぶるような。

「アツシ、オレこっちがいい」

アツシの手の上に自分のそれを重ねて、するりと奥のほうまで滑らせる。
俺のそこは自分で分かるくらいひくひくと疼いていて、直に触れているアツシの指にも伝わってるんだろうなあと思うとまた興奮に体が震えた。

「えー…まだこれ残ってるのになあ」

ちら、とアイスのカップを見て迷うようにアツシが呟く。
焦らすつもりはないのかもしれないが、指で軽く周辺を撫でられながら言われるとそういうプレイなのかと一瞬思ってしまう。アツシのことだから単に食い意地が張ってるだけなんだろうけど。

「んっ、あとで、新しいの買ってあげるってば」
「ほんとにー?室ちんだいすきー」

もどかしさに腰を揺らしながらそう言うと、アツシはほわほわと笑って抱きついてきた。
こんなことで大好きと言われてもあんまり嬉しくないけれど、まあアツシだから良しとする。
すぐ傍にあるベッドに登るのもめんどくさくて、アツシに抱きしめられたまま床に倒れこむと、気を利かせたアツシがそのへんに放ってあったクッションを引き寄せて俺の下に敷いた。

「ふふ、優しいなアツシは」
「当たり前でしょー」

髪の毛をがしがしと撫でて褒めてやれば嬉しそうな顔。
ぼんやりしているように見えて実はちゃんと気の遣える奴で、きゅんとくる。こういうのをギャップ萌えとでもいうのだろうか。
アツシの体が俺の足に割り入るようにのしかかってきて、片手がするりと太ももに触れ優しく足を押し開く。

「指いれるねー」
「ん、…」

後孔のあたりをなぞっていた指がつぷ、と肉の輪をくぐり抜けて中に入り込んでくる。
とろとろと伝ってきていた先走りのおかげでそんなにきつくはなかったけれど、アツシの体は指もアソコも規格外だからやっぱりそれだけでは心もとない。
と、視界の端にちらりとアイスのカップが映る。

「アツシ、これ」
「なに?食べるの?」
「ん、や…、ローション代わりになるかなって」

言って指差すとちょっと悩むような顔をしたけれど、アツシは言うとおりそれを手にとった。
そしてカップを傾けて、とろりと俺の下半身のあたりに垂らしていく。
ぬるくなった液体が敏感な箇所を伝っていく感覚に身を震わせた。
確実に床にも垂れてしまっただろうけど、まあいい。フローリングだから拭けば済む。

「んー…やっぱもったいないから食べていい?」
「っ、え?わっ!」

バニラの匂いに酔いながらぼんやりとしていると、アツシの声とともにまた溶けたアイスが体に垂らされた。今度は胸のあたり。
まるでデコレーションするみたいに小さく弧を書きながら残り全てを垂らしきって、アツシは満足そうに笑う。
この時点でなんとなく予想はついていたけれど、その予想を裏切ることなくアツシは胸に顔を寄せてきて。

「いただきます」
「あっ、や、ぁ、アツシっ、」

べろり、と熱くて厚い舌を俺の胸のあたりに這わせ始めた。
体温ですっかりぬるくなった液体を、丹念に舌を這わせて舐めとっていく。
粘膜のぬるーっとした感覚が胸の間を往復するたびに、足とか手の指の先がちりちりと痺れるような快感が走った。
時々、触られてもいないのに立ち上がってしまった乳首のあたりを掠めていって、そのたびに体ががくんと跳ねる。
ちゅぷ、という唾液の音とか、はあ、と時折漏れるアツシの吐息とかが耳までも犯していくようだ。後ろに突っ込まれた指はゆるゆると軽く動かされ、何も考えられなくなっていく。
零したアイスクリームを綺麗に舐めとってしまう頃にはもう体からはすっかり力が抜けてしまっていて。
ただ下半身がじんじん疼くように熱い。ちらりとアツシの股間を見やると下着の上からでも分かるくらい大きくなっていてごくりと息を飲んだ。早くあれで思いっきり抉られて激しく揺さぶられたい。
なのにアツシは俺の胸から顔を上げようとはせずに、今度は胸の先端にぬるりと舌を絡めてきた。

「んんっ!ぁ、あ…!」

気持ちのいいようなくすぐったくて逃げたいような快感に思わず大きな声が漏れる。
唾液をたっぷり絡ませた大きな舌が動くたびに何度も何度もその感覚が体を襲って、頭がくらくらした。
舌の先でつんつんと突かれると、それに合わせて恥ずかしいぐらい腰が跳ねる。
逃れ切れないもどかしいような快感に、アツシの肩をぎゅっと掴んで耐えるけれど、それでもどうしようもない。おかしくなりそうだ。

「室ちんここ好きだもんね」
「ふ、ぁ、あつし…」

喋るたびに当たる吐息にすら下半身が熱くなる。
いつのまにかじんわりと滲んできていた涙で視界がぼやけた。

「ぁ、や、も…う…」
「イきそ?」

言ってアツシの指がもう一本俺の中に入ってきて、ぐりぐりと内壁を擦る。
アツシが指を動かすと、先ほど垂らしたアイスと、とろとろと溢れ続けていた俺の先走りでぐちゅぐちゅといやらしい音を立てた。
ただでさえもう体が熱くて快感で頭がぼんやりしていたところにそんなことされてしまったらもう、すぐに達してしまうに決まっていて。

「や、あ、あぁ、っ、…!」

堪えられるわけもなく、俺は思い切り体を跳ねさせて精液を吐き出した。
燻っていた熱が爆発するようにどっと快感の波が押し寄せて、じわりじわりと引いていく。
今までの体の熱さが全部排出されるかのように、どろりと熱い精液が溢れアツシと俺の下半身を汚していった。ぬるぬるして気持ち悪い。
全て吐き出しきって脱力すると、ずるりとアツシの指が引きぬかれた。

「あらら、またアイス零したみたいになってるー」
「アツシの、せいだろ…」

はあはあ、とまだ落ち着かない呼吸を繰り返しながら応じるとえー?とアツシは首を傾げた。
アツシはごろりとフローリングに転がって俺を抱き寄せると、甘えるように俺の肩辺りに頭を擦り寄せてきた。
促すように頭を撫でてやれば口を開く。

「入れてもいーい?」

俺が先にイってしまったからか、様子を伺うような声。
遠慮がちに太ももに押し付けられたアツシの性器は、さっきよりももっと大きくなっているように感じる。
こんなに大きくしてしまってるくせに、早く自分だって快感を貪りたいくせに、わざわざお伺いを立てるのだから全く可愛いやつだと思う。
そんなの断るわけないのに。というか、俺だって早くアツシのその大きいのでかき回されたくて仕方ないのに
まだびくびくと力の入らない手でアツシの頬を包む。

「当たり前、だろ」

そのままちゅ、と柔らかく口づけてやれば、アツシは安心したようにふにゃんと笑って、俺の腰を抱き寄せてキスを返した。




結局次の日は二人して寝坊してしまって、アツシの部屋の冷蔵庫は丸二日壊れたままになってしまったけれど。




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