冬にアイスクリームを食べる、っていうのはまあ別に変なことでもないと思う。
部屋から一歩出れば凍えるほど寒いけれど、温められた部屋でこたつに入りながら冷たいものを食べる、というのはなかなか贅沢な感じがするではないか。
けど、こんな雪のちらつくようなこんな寒い日に、日の暮れた公園で冷たい風に吹かれながらアイスにかぶりつくこいつは間違いなくあほだと思う。

「はああ、さむか、さむかねえ」

ぶるぶると肩を震わせながらも千歳はアイスを手離さない。
安っぽいソフトクリームのアイスにはむ、とかぶりついて、冷たそうに目をぎゅっと瞑ったあと嬉しそうに笑った。まるで小さい子供みたいだ。

「そらあそんなもん食ってたら寒いわ…」

見てるこっちまで寒くなってくるようで、俺はため息を吐く。
寒さとこのアイスのせいか千歳の鼻は真っ赤になっていて、クリスマスなどとうに過ぎ去ったけれど、赤鼻のトナカイみたいだと思った。

「つーか、こんなんでよかったん?」

俺はさっき千歳のアイスと一緒に買った肉まんを頬張りながら千歳に尋ねる。
蒸したてなのか中までほこほこで、口の中がじんと痺れるように温まっていく。やっぱり寒いところで食べる温かいものは格別だ。
それなのに千歳って奴は今更ながらほんと変だ。
千歳の誕生日は大晦日。千歳は実家に帰り、俺も家族と過ごすことになっていて、当日に祝うことなんて中学生の身分じゃできやしない。
だから年が明けてひとつ日をおいて今日、盛大に祝うことはできないけどせめてケーキでも買って帰ろうかと言えば、ケーキはいらないからアイスが食べたいと言い、じゃあ千歳の家で温まりながら食べようかと言えば外で食べて帰りたいと言う。全くもって理解できない。

「よか、よか」

寒いし冷たいのだから食べるスピードも遅くなりそうなものなのだけれど、気づくと千歳は俺が食べ終わる前にぺろりと食べきってしまっていた。
俺も早く食べなきゃ、と口を開けたところで手を掴まれる。当たり前のように引き寄せられて、細められた瞳が近づいてきて、はむ、と唇を食まれた。
いつもとは違うひんやりとした感覚。それから舌と一緒に溶けたアイスの甘ったるい味が染みてきて、脳みそがびり、と痺れるような感じがした。思わずぎゅっと目を瞑る。
肉まんでほこほこに温まっていたはずの俺の口の中は、千歳のせいですっかりぬるくなってしまった。
満足したのか千歳はゆっくりと唇を離して、舌とは対照的に温かい手のひらを俺の頬に添えてふにゃ、と微笑んだ。

「ふふ、くらの口ぬくかぁ」
「…ここ外なんやけど」
「誰も見ちょらんよ」

言って今度は瞼に口付ける。全くもう。
食べかけの肉まんを千歳に押し付けて立ち上がると、千歳はそれを一口でたいらげてしまって俺の手をそっと握った。
熱い指が俺の指と指の間に絡んできて、何か欲望を示すみたいにすりすりと擦りつけられる。何か、なんてぼかさなくても分かるけれど。
応えるように千歳を見下ろすと、千歳はふ、と小さく笑って立ち上がった。

「帰ろか」
「ん」

そっと腕を引かれて、そのまま千歳の肩に顔を埋める。既に日は落ちてしまったからきっと誰にも見えない。自分に言い訳をして千歳の手を握り返す。

「誕生日プレゼント、遅れた分まで含めてたっぷり貰わんとね」

 千歳が俺の耳にやらしく囁く。

「…明後日から部活やから、お手柔らかに」

せっかくさっき温かいものを食べたのに体がすーすーと寒いのは千歳のせいだ。
対して千歳は酷く温かそうで。なんだかちょっと腹が立つ。
だから、ただその分の体温を返してもらおうと思って、もう少しだけ体を寄せた。






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インテで配った千歳誕の文章でした。千歳くんおめでとう!
無配だからえろは無しで…と思って書き始めたのですが、えろ無し書くの久々な気がして難しかったです。えろがないとだめだ私は。



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