ジェイドのその一言で、あっさりと決まった。兵士が連れてきたのは、確かに幼い少女であった。5、6歳といったところか。チーグルのぬいぐるみを抱えて、少し怯えながら城内に入ってきた

「あ、あの……ナタリア様は……?」
「わたくしがナタリアですわ。そんなに怖がらなくても大丈夫。どうしましたの?」
「あ、あの。その……えっと、これ……お兄さんがわたしてほしいって。それと、“れじすたんすのアジトが分かった”って」

一同が息を飲んだ。少女が渡してきた手紙には、その場所へ行く方向や、目印が書かれていた。とても嘘を言っているようには思えない

「なぁ、お嬢さん。そのお兄さんとは、どんな人だったかな?髪の色とか、服はどんなのを着ていたか、分かるかい?」

少し離れたところで、ガイはしゃがんで少女と視線を合わせた。触れることは未だに完全に出来るわけではないから、近付くわけにはいかないのだろう。ガイの人が良さそうな顔に、少女はホッと一安心していた。やはり、怖そうな大人達ばかりで怖かったのだろう。もっとも、その怖そうな大人達に自分も当てはまるだろうと、ジェイドはさっきから黙っていた。ここで少女を泣かせるようなことをするべきではないから

「んとね、あたまは、まっくろで。おめめは、キレイなみどりだったよ!すっごくかみが、長かった!それとね、おようふくは、くろだったよ」

少女が語るそれは、先程ジェイドが追っかけた人物の特徴と合致していた。やはり、彼だったか。少女が伝言を預かった時間を考えると、ジェイドに追いかけられて、間もなく見つけたということだろう。もしかしたら、一人で無茶をやっているのかもしれない

「―――どう思う、ジェイド」

少女が帰った後、ガイが口を開いた。他の面々も、半信半疑といったところか。といいつつも、ジェイドもそうだけど

「連中の罠じゃねぇのか。子供を使えば、怪しまれないと踏んで」
「でも、それだと随分と回りくどいやり方じゃないかしら。彼らの今までのやり方とは、随分と違うわ」

不審がるアッシュに、ティアがすかさず言う。そう、レジスタンスのやり方とは到底思えない。彼らなら、もっと強行突入をしてきそうなのだ

「それに……この字、ルークのものだ」

少女から預かった手紙を読んで、ガイは信じられない表情で口にした。アッシュが帰還したことで、ルークが再び帰ってくることは、もうないと思っていただけにすぐに信じることが出来なかった

だが、先程見たのは、確かにルークだった。髪の色が変わっていたが、目の色は変わっていないし顔は同じだ。多少の印象は違って見えたのは、あの朱色の髪ではなくなったことと服装によってだろう

「……私、行きたいです」

アニスがぽつりと呟く。まるで、この場にいる仲間達の代弁をするかのように、自分に言い聞かせるように。アニスに続いて、ティアも口を開いた

「そうね。私も行くわ。もしも本当にルークがこの場所を教えてくれたなら、彼もきっと来る。どうして私達に会いに来なかったのか。どうしてさっき逃げたのか。聞きたいことは色々とあるけれども。まずは、お帰りって言いたいもの」
「そうだな、俺も行く。ルークは、きっと無茶をする。もう二度と、あいつを失いたくはない」

手紙を握り締めて、ガイは俯いた。その表情を見ることは出来ないが、きっと見せたくないのだろう。ジェイドもまた、ずれてもいない眼鏡を上げる。ルークを想っている時は、この表情を見られたくない。きっと、らしくない表情をしているだろうから

「―――なら、すぐにでも行きましょうか。とはいっても、うちの兵はいませんし、キムラスカもあんなことがあったばかりで、兵力を手薄にするわけにはいきません。我々だけで行かなければなりません。……覚悟はありますね?」
「勿論ですわ。わたくしも当然行きます」

アッシュも同感だと言うので、全員の意思は確認した。何だかんだいいつつも、結局はこうなるらしい

「よろしい。では、行きましょう」

いつものように余裕がないジェイドを見て、ティアやアニス、ガイが驚いて凝視していた。が、今はそんなことに構っている暇はないので無視をして歩き始めた。何も言わないジェイドが、さぞ気持ち悪かったのだろう。アニスが本気か縁起かは、面倒なので判断はしないけど震えながら怯えている

「しょ、少将がいつになく本気ですぅ!アニスちゃん、鳥肌が立っちゃったんですけどぉ〜!?」
「あぁ、いつになく本気で怖いな。何か、呪われそうだ」
「そうね、槍が飛んでこなければいいのだけど」
「まぁ。戦闘じゃないのに飛んでくるなら、注意しなければなりませんわね」

アニス、ガイ、ティアの本気なのかそうじゃないのかの言葉に、ナタリアが真剣に答える。さすがは天然だ。アニスが脱力しているのが見えた

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